ミステリ

『ピラミッド』ヘニング・マンケル

北欧警察小説の金字塔・クルト・ヴァランダー警部シリーズのスピンオフ版。ヴァランダーが警察官になったばかりからベテラン警部になるまで、つまりシリーズ第1作の『殺人者の顔』の手前までが描かれている。読者からの「若い頃のヴァランダーを描いてほしい」という要望に著者が応えたという。

スウェーデン南部の中核都市にあるマルメ署で警察官なりたての血気盛んな頃を描いた「ナイフの一突き」、マルメ署から小さな町のイースタ署に移る30歳頃を描いた「裂け目」。その後の3編「海辺の男」「写真家の死」「ピラミッド」と進むにつれ、中堅どころからベテラン警部として署での重要な立場を占めるようになっていく。

ピラミッド (創元推理文庫)
ピラミッド
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ヘニング・マンケル/柳沢由実子
創元社推理文庫社
2018年4月 売り上げランキング: 20,331

最初の「ナイフの一突き」は、ヴァランダーが警察官になったばかりの頃の話である。
ヴァランダーは同じ若者として後ろめたさを感じながら、ベトナム戦争反対のデモ隊の警備にあたる。
アパートの隣人が自殺する前にダイアモンドの原石を飲み込んでいた。隣人が自殺した後に何者かが原石を探しに忍び込み、そのあとアパートに火をつけたのだ。
ヴァランダーは自分の推理が当たっているかを確かめるために単独で行動した。上司から秘密裏の捜査は許されないと叱責され、捜査のイロハを教えられる。

恋人のモナと結婚しリンダが生まれる。リンダはふたりを繋ぎとめる絆となるが、それはリンダが幼い頃までのこと。警察官という職業柄、夫婦はすれ違いが宿命だった。ついには別居し、リンダは高校を中退してモナについて行き、ヴァランダーはひとりになってしまう。ヴァランダー家の変遷を書くことで、時間の経過を表す手法をとっている。

本書のタイトルにもなっている最後の「ピラミッド」では、父親がエジプトに一人旅に出て事件を起こし警察に捕まる。身元を引き取りにヴァランダーはエジプトに行く羽目になる。
本作では、シリーズに引き継がれる、ヴァランダーの元妻への未練、若い女性新任検察官への片思い、父親との確執などが描かれている。→人気ブログランキング

→『ピラミッド
→『霜の降りる前に
→『北京からきた男
→『ファイアーウォール
→『リガの犬たち
→『背後の足音
ヘニング・マンケルを追悼する/2016年4月

『オリジン 上下』 ダン・ブラウン

ラングドン・シリーズの第5弾。本書のテーマは「宗教の終焉」。
本書の冒頭には、〈この小説に登場する芸術作品、建築物、場所、科学、宗教団体は、すべて現実のものである。〉と記されていて、舞台となるグッゲンハイム美術館、サグラダ・ファミリア教会の詳細な描写は、本書の魅力のひとつである。

スペインの北、ビルバオにあるグッゲンハイム美術館にVIPを集め、天才的な頭脳をもち世界をリードしてきた未来学者のエドモンド・カーシュが、「人類の来し方と行く末」についての新説を発表しようとしている。カーシュは無神論者として有名である。

オリジン 上 (角川書店単行本)
オリジン 上
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ダン・ブラウン/越前敏弥
2018年2月
✳︎✳︎✳︎✳︎✳︎
オリジン 下 (角川書店単行本)
オリジン 下
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KADOKAWA / 角川書店
売り上げランキング: 1,907

カーシュから前もって新説を聞かされた、ユダヤ教のラビ、イスラム教の博士、カソリック教会のバルデスピーノ司教は、宗教界ひいては世界を混乱に陥れることを恐れている。発表は1か月後と聞かされていたが、それが早められたのだ。ラビは自殺し、博士も死んでしまう。

カーシュの恩師であるハーヴァード大学教授で宗教象徴学者のロバート・ラングドンや、美術館の館長でありスペイン王子の婚約者であるアンブラ・ビダル、そして多くの聴衆が見守るなか、カーシュは講演をはじめる。これから本題に入ろうとしたその時、カーシュは銃撃され殺される。
近くにいたグランドンとビダルが犯人と疑われ、警察に追われる身となった。ふたりの逃亡を助けるのは、カーシュが開発したAIのウィンストンである。
パルマール教会の宰輔からカーシュの殺害を命じられたのは、スペインの退役海軍提督アビラだった。

講演の内容が世界に流れることを阻止しようとする勢力によって、カーシュは殺害されたのだ。グランドンは、講演のDVDにアクセスするパスワードがサグラダ・ファミリアの地下室にある書物に書かれている47文字と突き止めた。
スペイン警察や暗殺者アビラの追跡を終結させるには、カーシュのビデオを公開すればいいのだ。
この後、二重三重のどんでん返しが仕掛けられている。

新説とは一体どういうものなのか。
抽象的には、宗教の時代は終わりを向かえつつあり科学の時代が幕を開けようとしている、というもの。言い方を変えれば、神ではなく物理で生命が誕生し、将来人間はポストヒューマンとなる。つまり、進化論とレイモンド・カーツワイルの言うシンギュラリティを受け入れることである。→人気ブログランキング

『13・67』陳 浩基

現在2013年から1967年にさかのぼる逆年代記(リバース・クロノジー)で構成された6編の連作中篇集。政治に翻弄され続ける香港社会を舞台に、ひねりの効いた設定で詳細かつ濃厚に描かれたハイクオリティな本格警察小説。

まずは香港の簡単な歴史から。香港はイギリスとのアヘン戦争(1839〜1842年)後、イギリスの植民地となった。第2次世界大戦(1941〜1945年)の間は、日本に占領されたものの、戦後は中国に返還されず、イギリスの統治が1997年まで続いた。そして中国に返還され現在に至る。香港の住民は中国での戦争や共産主義体制から逃れてきた人々が多いという。

13・67
13・67
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陳 浩基/天野健太郎訳
文藝春秋
2017年9月 ✳︎✳︎✳︎✳︎✳︎
売り上げランキング: 12,825

最初の章「黒と白のあいだの真実」は、本書の終章に相当する内容である。
1997年の香港の祖国復帰以降、警察のイメージは失墜した。警察は政府の犬と墜ち、偏った法の執行者として官憲の悪事を見逃す、政府のためのサービス業に成り果てたと、人びとは警察を批判した。
そんな逆風のなか権力におもねらず、ただひたむきに事件を解決する「やり手デカ」ロー警部が活躍する。
がんに侵されたクワンが臨終の床にいながら捜査に加わるという、奇想の設定である。
大富豪の殺人事件が起こった。館にいた5人いずれも犯人の可能性がある。5人が事情徴収で集められたのは病院の病室。
ロー警部は、がんの全身転移によって意識が朦朧としている「天眼」と呼ばれたクワン警視の力を借りたいという。クワン警視の頭にはカチューシャのような輪っかがつけられた。
ディスプレイの上半分が白地にYESの文字、下半分が黒字にNOの文字となっている。クワン警視がYES・NOで答えてくれるだけで、ロー警部たちの捜査の大きな手助けになるという。
そして、ロー警部は5名を前に事件の経過を話しはじめる。

終章「借りた時間に」は、返還される30年前の1967年の話。クワンが警察官として働き始めた年だ。
香港近代史では、労働者と資本家の間の軋轢は、中国とイギリスの国家間の軋轢に投影される。この時代はイギリスが民衆の非難の矢面に立つ。返還後は事情がまったく異なる。民衆は中国政府の締め付けに苦しむことになるのだ。

そのほか「任侠のジレンマ」「クワンの一番長い日」「テミスの天秤」「借りた場所に」のいずれ劣らぬ傑作からなる。→人気ブログランキング

『ファインダー・キーパーズ 上下』スティーヴン・キング

上巻の後半から私立探偵のホッジスが登場し、タイトルのファインダーズ・キーパーズはホッジスが開いた探偵事務所の名称であることが明らかになる。ホッジスは前作の『ミスター・メルセデス』で、事件を解決にもっていった探偵だ。
ホッジス3部作の第2作目。

ファインダーズ・キーパーズ 上
スティーヴン・キング
文藝春秋
2017年9月
ファインダーズ・キーパーズ 下
スティーヴン・キング
文藝春秋

モリスは独り暮らしの超人気老作家・ロススティーンの寝込みを襲って殺害し、150冊のノートと現金を奪った。それらを鞄に詰めて木の根元に埋めた。ところがモリスは不覚にも強姦罪で終身刑となってしまい、35年後にやっと仮釈放される。保護観察下にあるモリスは小説が書かれているノートを手にしようと行動を開始する。
長い間回り道してきたが、もうすぐ人生の本流に戻れると思っている。

前作で、メルセデス・キラーが引き起こした事件(市民センターで催される就職フェアの開場を待っていた行列にメルセデスが突っ込んだ)によって、ピートの父親は脚を骨折し脚を引きずるようになり、ソウバーズ家は経済的に困窮していた。
ピートは、何者かが木の根元に埋めたカバンを偶然に見つけ、ノート150冊と封筒に入った現金を手に入れた。
ピートは毎月匿名で自分の家に送金することを思いついた。その送金のおかげで、ソウバーズ家はまともな家庭になっていった。封筒の現金が底をつき仕送りを停止せざるを得なくなったとき、ピートは妹ティナが志望する学校に転校するために、ノートを売って現金に替えようと模索する。
ティナはピートの様子がおかしいと感じていた。

ティナがピートのことをホッジスに相談したことで、『ミスター・メルセデス』の登場人物たちと、本作の主人公たちに接点が生まれ、緊迫の場面が続く後半に進んでいく。
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ファインダー・キーパーズ
ミスター・メルセデス
ジョイランド
11/22/63
ダークタワー IV1/2 鍵穴を吹き抜ける風
ダークタワー IV 魔道師と水晶球 下
ダークタワー IV 魔道師と水晶球 上
ダークタワー III 荒地 下
ダークタワー III 荒地 上
ダークタワー Ⅱ 運命の3人 下
ダークタワー Ⅱ 運命の3人 上
ダークタワーⅠガンスリンガー
書くことについて
ミザリー
キャリー   キャリーDVD
幸運の25セント硬貨
ビッグ・ドライバー
1922
第四解剖室
神々のワード・プロセッサ
夕暮れを過ぎて
いかしたバンドのいる街で
スタンド・バイ・ミー(DVD)
ジェラルドのゲーム
ドランのキャデラック

『ルビンの壺が割れた』宿野かほる

書簡体小説のフェイスブック版。
フェイスブックでのやりとりだけで構成されているミステリ。はじめは遠慮しがちでぎこちないやりとりだが、次第にスピード感が増していく。

水谷は、結城未帆子という名前をフェイスブックで見つけメッセージを送る。
最初、未帆子は無視する。
28年前、水谷と未帆子は結婚することになっていたが、結婚式に未帆子は現れなかった。それ以来、ふたりは会っていない。
ふたりだけしか知らない出来事について水谷が書いたことで、未帆子は返信することにする。

ルビンの壺が割れた
ルビンの壺が割れた
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宿野 かほる
新潮社 2017年8月
売り上げランキング: 5,148

水谷と未帆子が結婚の約束をした経緯が語られる。
大学の演劇部の部長だった水谷に、下級生の女子は誰もが憧れを抱いていた。田舎娘と思われ。
ていた未帆子も例外ではなかった。
水谷が書いた戯曲「ルビンの壺が割れた」の稽古で、ヒロイン役が休んだときに、未帆子が代役を買って出て、ヒロイン役を完璧にこなした。
水谷は未帆子の役者としてのセンスに驚嘆し、未帆子を主役に抜擢した。
公演は大成功に終わり、プロの脚本家からも賞賛された。
ふたりは付き合い始める。
水谷には優子という許嫁がいたが、そのことを承知で、未保子は水谷と結婚することにした。

結婚式に未帆子は現れなかった理由を書く。そして、それぞれが秘密にしていた過去が語られ、ストーリーは思いもよらない結末に向かう。→人気ブログランキング

『冬のフロスト』R.D.ウィングフィールド

フロスト警部シリーズはストーリーの大枠がパターン化されている。
順序が逆のこともあるが、女性(今回は売春婦)の連続殺人事件が起き、次に少女の誘拐事件が起きる。
フロストが狙いをつけた容疑者(今回は夜ごと娼婦を漁る歯科医)が連行され尋問をうけるが、フロストの説はことごとく覆される。
シリーズごとに、デントン署内に個性豊かな警官(今回は強烈な上昇志向の持ち主の女性リズ・モード警部代行)が配置され、フロストとの間に何かと軋轢を生じる。一方、見栄っ張りでいけ好かないマレット署長は、フロストをデントン署から追放しようとあらを探している。フロストの手柄を横取りしようと、何かと口出しもする。超過勤務手当をなんとか安く押さえようと躍起となっている。
そんな、なか別の殺人事件(今回は古い人骨)が起こり、フロストたちは多忙の極地に追い込まれる。
なにかの拍子に、それはページでいうと大体3/4のところで、五里霧中だった事件がひとつ解決する(今回は人骨事件)。そのあと芋づる式に解決するかと思いきや、足踏み状態となり紆余曲折を経て、フロストはなんとか事件を解決に持っていくというのが、シリーズのパターンである。

チェーンスモーカーでズボラで不潔だが愛すべきフロストが、ヨレヨレになりながらも、見込み違いの捜査をしてくじけそうになるが、アイディアを絞り出して、あるいは神からの啓示のようなひらめきに助けられ、なんとか事件を解決に導くというのがパターンである。そんなストーリー展開にもかかわらず、どの作品も引き込まれてしまうのだ。

冬のフロスト 上 (創元推理文庫)
冬のフロスト 上
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R.D.ウィングフィールド
/芹澤恵訳
創元推理文庫
2013年6月 ✳︎✳︎✳︎✳︎✳︎
冬のフロスト 下  (創元推理文庫)
冬のフロスト 下
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R.D.ウィングフィールド
創元推理文庫

『冬のフロスト』なので、架空の街デントンの冬がどの程度に厳しく描かれるのか大いに興味があったが、気候に関する描写が少なく、少しばかり残念である。→人気ブログランキング

フロスト始末
クリスマスのフロスト
フロスト日和
夜のフロスト
冬のフロスト
フロスト気質
夜明けのフロスト

『院長選挙』久坂部 羊

大学病院長の急死を機に繰り広げられる、4人の副院長の選挙戦と殺人犯探しがテーマ。
天都大学病院の院長が急死して、新しい院長を選ぶ院長選が行われる。そんなおりフリーライターの吉沢アスカは「医療崩壊」をテーマにしたノンフィクションを書こうと取材のため、天都大学病院循環器内科の徳富教授の部屋を訪ねた。
4人いる副院長のなかでもっとも院長に近い人物と目される徳富教授は、「臓器ヒエラルキー」による循環器内科至上主義を口にしてはばからない。心臓を扱う内科が一番えらいに決まっているというのが口癖である。かつてヨーロッパでは外科は床屋を兼ねていたし、看護師は売春婦を兼ねていたと言ってはばからない。

院長選挙
院長選挙
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久坂部 羊
幻冬舎
2017年8月 ☆☆☆☆☆

アスカはもうひとりの副院長・消化器外科の大小路教授にインタビューする。大小路教授は、おのれの手術技量に自らがアートと惚れこむほど自信を持っているうぬぼれ屋だ。
大小路教授も、たかが◯◯科という上から目線の「医療科ヒエラルキー」に凝り固まっている。聴診器をあてて薬を出しているだけの内科より、消化器外科が上だとうそぶ。

次は、若手の改革派、副院長の整形外科の鴨下教授は「天都大の狂犬」と呼ばれる激しい性格の持ち主である。大学病院の研究と診療を分けることと、内科と外科の整形外科蔑視に怒りをまくしたてた。

最後は、「銀髪の守銭奴」と呼ばれる眼科の百目鬼教授は、最年長の副院長で白内障を手術しまくる病院の稼ぎ頭であるが、周りから大顰蹙を買うドケチである。

前院長が夜中に突然死したとき夫人は救急車を呼ばす、まず准教授を呼んだ。そして准教授は4人の副院長を呼び、循環器内科の徳富教授が心房細動発作による死と断定した。前院長は病院経営に悩んでいたから自殺説もあるが、病院改革達成のため続投の意思表示をしていたから他殺説もある。

看護部長は4人の副院長をボロクソにこき下ろした。
それとは対照的に、低姿勢な事務部長は4人への歯が浮くような賛辞を並べ立てる。
大学病院という閉鎖社会において、診療科や職種のそれぞれの思惑を大いに誇張させながらストーリを展開させる。読者をさもありなんと納得させる著者の医師ならでは視点が冴えている。→人気ブログランキング

『フロスト日和』 R.D.ウィングフィールド

スマートな捜査手法のアレン警部と、行き当たりばったりの危なっかしい捜査をするフロスト警部のせめぎ合いがテーマ。
前の勤務先で上司を殴って左遷され警部から刑事に降格された髭面ウェブスター刑事が、フロスト警部の下につく。ウェブスターはもちろん不貞腐れている。
ウェブスターは、アレン警部は文句なしの一流の警察官であり、一晩排水溝で過ごしたとしか思えないような風体のフロスト警部と比べること自体が、間違っていると思っている。

フロスト日和 (創元推理文庫)
フロスト日和
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R・D・ウィングフィールド/芹沢恵 訳
創元推理文庫
1997年10月

公衆トイレに男の死体が発見され、つづいて覆面の連続婦女暴行魔が6人目の女を襲った。老人がひき逃げされ病院に収容された。車はナンバープレートを現場に落としていった。金持ちの15歳の娘が友達のと一緒に映画を見に行ったあと、帰宅後行方不明となっていた。
そんなおり、娯楽センターで5000ポンドが強奪される事件が起きる。

重要な事件はたとえフロストが手がけていても花形警部のアレンに担当が変更なり、どうでもいい事件や、捜査がうまくいかなければ出世に不利となりそうな事件はフロストに回ってくるのだ。
捜査から外されようと、マレット署長やアレン警部が嫌みを言おうと、ウェブスターが制止しようと、真夜中過ぎであろうと、フロストは思いついたら行動をおこす。そんなわけで、ストレスフルなフロストは、所かまわずタバコに火をつける。フロストは超過勤務の連続で、睡眠不足で疲労困憊の状況にある。それが読者にも伝染し読者は疲労困憊してしまう。

フロストの捜査手法は、クラッシュ・アンド・ビルド。つまり立てた仮説が次々に外れていく。それでも結局はフロストが事件を解決するのだ。→人気ブログランキング

フロスト始末
クリスマスのフロスト
フロスト日和
夜のフロスト
冬のフロスト
フロスト気質
夜明けのフロスト

『フロスト始末 上下 』R.D.ウィングフィールド

今回はフロスト警部の左遷がテーマ。マレット署長と新任のスキナー主任警部はフロストの署からの追い出しを画策する。
ガソリン代のちょろまかしがばれ、フロストの悪運もここまでかと思わせる展開になる。数字を書き変えた給油領収書の束が州警察本部に提出されれば、フロストは退職処分になるかもしれない。
スキナーに転勤依願書のサインを迫られるフロストの運命やいかに?

フロスト始末〈上〉 (創元推理文庫)
フロスト始末〈上〉
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R・D・ウィングフィールド
芹沢恵 訳
創元社推理文庫
2017年6月 ✳︎✳︎✳︎✳︎✳︎
フロスト始末〈下〉 (創元推理文庫)
フロスト始末〈下〉
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R・D・ウィングフィールド
芹沢恵 訳
創元社推理文庫

犬がくわえていた足首がデントン署に持ち込まれ、金持ちの少女が行方不明となり、別の少女もいなくなる。赤ん坊が誘拐され、食品に毒物を混入されたスーパーマーケットは恐喝犯の餌食になり、さらに若い女性の腐乱死体が発見される。
いくつもの事件が持ち上がるなか、スキナーはフロストの手柄をかっさらおうとし、根性のねじくれたマレットは責任をフロストに押し付けようと小細工する。

いつものことだが、何も解決していないというのに、てんてこ舞いのフロストのもとに、容赦なく次々と事件が舞い込でくるのだ。
ところが、意地の悪いスキナーはフロストを捜査から外したり、さんざん嫌がらせをした挙句、肝心なところでやり残した仕事があると古巣に舞い戻ってしまう。

卑猥な冗談がお得意のフロストは、超がつく愛煙家でそこらじゅうに煙草の灰を撒き散らし、吸い殻のポイ捨ての常習犯である。仕事に関しては己の能力の限界まで働くというスタンスだ。というより、次々に持ち上がる事件に対し、身を粉にしてふらふらになるまで働かないと追いつかない。フロストの事件を扱うプライオリティは、上司が強要するものとは異なる。あくまでフロスト流の順番で動くのだ。

不潔な風体でインモラルなフロストだが、
〈いやしくも人の上に立つものは、気が進まない仕事を気が進まないという理由で、下位の者に押しつけてはならない。それが上の人間の仁義というものである。〉という部下たちの信頼を得るに十分な、心意気がフロストにはある。
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『ファング一家の奇想天外な秘密』

アニー(ニコール・キッドマン)とバクスター(ジェイソン・ベイトマン)の姉弟は、前衛芸術家の両親に育てられた。一家は、銀行強盗を仕掛け銀行に居合わせた人々の反応をビデオに収めたり、写真スタジオで一家の写真を撮るさいに4人が口から血を流してみたり、他人を巻き込んでのパフォーマンスを行ってきた。人騒がせな一家だ。
姉弟が中学生のときに『ロメオとジュリエット』を学校で演ずることになり、父親が裏で手を回して、観客の前で姉弟がキスする場面を仕組んだこともあった。
両親はそうしたことが芸術であるとの信念を持っているが、姉弟は理解できなかった。
前衛芸術の世界ではファング一家はそれなりに有名であった。

ファング一家の奇想天外な秘密 [DVD]
監督:ジェイソン・ベイトマン
原題:The Family Fang
原作:ケヴィン・ウィルソン
制作年:2015年
制作国:アメリカ  107分  ✳︎✳︎✳︎

姉弟は大人になって両親と決別し、アニーは三流の女優として、バクスターは小説家として暮らしていた。
そんなとき、ゲガでバクスターが入院し、アニーが病院に呼び出された。病院からの連絡で両親も病院にかけつけ、久しぶりに一家4人がそろった。

アニーは子供時代を振り返り「普通の家族の生活」を送りたかったと打ち明けた。父親はそれなりに楽しかったはずだと言い返した。
父親は再び4人でパフォーマンスをやろうと提案するが、アニーとバクスターは拒否する。パフォーマンスは思い通りにいかず失敗に終わるが、父親がわざと失敗するように仕組んだのかもしれない。

旅行に出かけた両親が行方不明となり、父親の車には血痕が残されていたと警察から連絡が入った。警察は誘拐事件と断定したが、アニーは狂言に違いないと警察の判断を信じない。姉弟は両親の居場所を突き止めようとする。→人気ブログランキング

原作は、全米でベストセラーになった『The Family Fang』(ケヴィン・ウィルソン)だが、日本語には翻訳されていない。
ドッグヴィル』(2003年)、『記憶の棘』(2004年)、『マーゴット・ウェディング』(2007年)『ラビット・ホール』(2010年)など、ニコール・キッドマンはヒットしそうにない一風変わったストーリーの作品に出演することがあるが、本作もその手の作品だ。日本では公開されていない。

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