サブカルチャー

アメリカ炎上通信 言霊USA XXL 町山智浩

『週刊文春』に連載されている「言霊USA」(2018年3月〜2019年7月)の69本のコラムを収録。
コアなUSAウォッチャーの著者は、トランプが大統領になって話題が尽きないので、書くことに困らないという。トランプは、平気で嘘をつくが本音を言い、自らの行いは過剰に褒め、敵は徹底的に腐す。利用価値があると思えば、危険な人物であろうと近ずいていく。よく言えば、わかりやすくて邪気がない。悪く言えば子どもで、自己愛性人格障害ともいわれている。
一部のエキセントリックな白人だけがトランプを支持しているわけではない。そもそも白人はアメリカは自分たちの国だと思っている。自分たちは選ばれた人間だと信じている。これ以上有色人種が増えると白人優位のアメリカを維持できなくなるという焦燥感が、トランプ支持する。なにも手を打たなければ、共和党は選挙に勝てなくなる。そこで、顔写真付きの身分証明書なしには投票できない、有権者ID法を取り入れる州がでてきている。黒人をはじめとする有色人種は、免許証を持っている割合が圧倒的に低い。
トランプはもちろんだが、今の共和党には賢さが皆無だ。
ピックアップした「Qanon」「Uninged」「Very Close To Complete Victory.」「Busing」について抄記する。

Image_20200910143501 アメリカ炎上通信 言霊USA XXL

町山智浩
文藝春秋 2019年

QAnon(Qアノン=トランプ支持者が信じる匿名ネット投稿者 2018年9月6日)
Qという匿名(Qアノニマス=匿名者Q)のネット投稿からはじまった陰謀論で、アメリカはディープ・ステートという闇の組織に支配されているという。ヒラリー・クリントンや政府高官が絡んでいて、政財界には小児性愛者ののネットワークがあり、ワシントンのピザ屋で、子どもを売買しているという。2016年にはQAnon信者がそのピザ屋を銃で襲う事件が発生した。
トランプ支持者にはQAnon信者が多い。QAnon信者はそれと戦う正義の味方がトランプだと信じている。

Uninged(タガが外れて 2018年10月4日)
トランプの閣僚で唯一の黒人女性だったオマローサ・マニゴールドが解雇され、オマローサは回顧録『UNHINGED(アンヒンジド)』を出版した。
トランプと著者は、出演していた人気テレビ番組『アプレンティス』以来のつき合いがある。オマローサは大統領制出馬以来、広報を担当してきた。
トランプは極度の健忘症で、前日に言ったことすら覚えていない。「精神的に問題がある」と強調している。 
また、大統領選の遊説で黒人教会に行ったとき、トランプが「ニガー、ニガー」と差別用語を多発し、「(黒人に何をされるかわからないから)俺をひとりにしないでくれ」と懇願したなど、黒人への差別意識を丸出しにする姿も暴露されている。
一方、トランプは「彼女を雇ったのは涙目で哀願してきたからだ」と言っている。まるで小学生だ。

Very Close To Complete Victory.(ほとんど完璧な勝利 2018年11月29日)
アンドリュー・ジャクソン(第7代大統領)は、テネシー州や南部に住んでいた先住民をオクラホマに強制移住させて彼らの土地を白人入植者に与え、絶大な人気を誇った。トランプはジャクソンを尊敬しているという。
テネシー州はバイブルベルトの一部で、キリスト教福音派が全米で最も多い。彼らにとっては、1973年に人工中絶が違憲だとした最高裁判決を覆すことが悲願。トランプによって最高裁判事9人のうち5人が保守派判事が占めることとなった。中絶の再禁止が実現し、同性婚も風前の灯だ。

Busing(公立学校地域格差是正のためのバス通学 2019年7月18日)
民主党の大統領候補レースが始まった。今回は24名が出馬している。
トップはジョー・バイデン、2番がバーニー・サンダース、3番手がエリザベス・ウォーレン、以上4人は70歳以上の年齢。トップ3が70歳代だとは、なんという人材不足。
4番手はカーマラ・ハリスで54歳。6月27日マイアミで行われたディベートの勝者は、カーマラ・ハリスだ。父はアフリカ系のジャマイカ人。母はタミル系のインド人。父は経済学、母は医学、それぞれが博士号を取るためにカリフォルニア大学バークレー校に学んでいる間に出会って結婚した。そして生まれたのがカーマラ。そのご夫婦は離婚、カーマラは母の手で育てられた。
バシングとは、学童が通う学校をシャッフルすることで、貧困地域の子を富裕層の多い地区の学校に通わせ、その逆も行い、格差をなくすこと。
ハリスが小学生だった1973年、バイデンは上院議員として、議会でバシングに反対票を投じたのだ。それを、ハリスは追求した。→人気ブログランキング

キャプテン・アメリカはなぜ死んだか/町山智浩/文春文庫/2011年
USAカニバケツ: 超大国の三面記事的真実 /町山智浩/ちくま文庫/2011年
底抜け合衆国: アメリカが最もバカだった4年間/町山智浩/ちくま文庫/2012年
アメリカ人もキラキラ★ネームがお好き USA語録2/町山智浩 /文春文庫 2016年
トランプがローリングストーンズでやってきた USA語録4/町山智浩/文春文庫/2018年
アメリカ炎上通信 言霊USA XXL/町山智浩/文藝春秋/2019年

アメリカ人もキラキラ★ネームがお好き USA語録2 町山智浩

2012年の8月から2016年3月まで、『週刊文春』の「言霊USA」に掲載された 74本のコラムを掲載している。おりしも、オバマ大統領の2期目の年から、2016年の初めトランプがいまだ泡沫候補であった頃まである。
アメリカでは、人種差別は永遠のテーマであり、相変わらず銃乱射事件は頻発するし、レイプの件数は驚くべき数字である。女性差別も貧富の差も一向によい方向に向かっていない。著者はそれをローアングルからとらえている。。
巻末の解説は、東京大学とハーバード大に合格したことをウリにしているモーリー・ロバートソン。自分はあまたいる日本の外人タレントの中で本物であり、町山のアメリカ情報も本物であると婉曲にいう。
トランプの白人至上主義について冷静な見解を述べている。つまり、2040年頃には白人が少数派に転じる。いずれ大統領は非白人に寄り添った政治しか許されなくなる。いまアメリカは最後の悪あがきをしているというもの。これは定説ともいえる見解だ。

Photo_20200903124201 アメリカ人もキラキラ★ネームがお好き USA語録2
町山智浩
文春文庫 2016年 ✳10

Three Cups of Deceit(偽りのスリーカップス)
いやーショックだ。400万部以上を売り上げ、2006年の全米ベストセラーとなった『スリーカップス・オブ・ティ』が作り話で、著者が詐欺をはたらいていたとは。日本では2010年3月に出版され、早速読んで大いに感激した。
ヒマラヤ山脈のK2峰登頂にを途中で断念したモーテンソンが道に迷って遭難し、パキスタンのコンフェという村の人々に助けられる。モーテンソンは看護師で、後産で死の淵を彷徨う村の女性を救い村人の信頼を得る。村に学校を作ると言ってアメリカに戻り、寄付を集めてコンフェに戻って学校を建てた。9.11で分断されたアラブと西側の架け橋になろうと、その後の学校を建てようとする感動ものだった。
著者が主催する団体に全米の慈善事業家、教育機関、市民団体から巨額の寄付が集まった。しかし膨大の額の使途不明金が指摘されたが、著者は沈黙しているという。

Kids Vote(子供投票)
大統領選の予想のあれこれ。
もっとも当たっている予想は、1940年から続いている「Kids Vote」。過去2回しか外していないという。絵本や教科書を出版するスコラスティック社が主催し、18歳以下の25万人が参加する。親の投票行動が反映するからだろうと言われている。

Taste worth dying for(死ぬ価値のある味)
アメリカでは年間12万人が肥満で死ぬという。
2011年、ラスヴェガスにオープンしたレストラン「ハートアタック・グリル」の店の入り口には、「この店は健康に有害です」と警告文が出ている。ウェートレスは看護婦のコスプレ、客は手術の時に患者が着る服を着せられ、車椅子で店内に案内される。
全部で9900キロカロリーのハンバーガーがメインで、付け合わせはラードで揚げたフライ。ドリンクはメキシコから取り寄せた砂糖たっぷりのコーラ、またはバターたっぷりのミルクセーキ。156キロ以上の人はいくら食べても無料だという。常連客が心臓麻痺で救急車で運ばれたが死んだ。
この店の客が死ぬのは初めてではない。ラスヴェガスの前は店がアリゾナにあったが、29歳の常連客が店の中で心停止した。
「オーナーは言う。たとえ死のうが、好きなものを食べる自由がある!」いかにも、自由を重んじるアメリカだ。→人気ブログランキング

キャプテン・アメリカはなぜ死んだか/町山智浩/文春文庫/2011年
USAカニバケツ: 超大国の三面記事的真実 /町山智浩/ちくま文庫/2011年
底抜け合衆国: アメリカが最もバカだった4年間/町山智浩/ちくま文庫/2012年
アメリカ人もキラキラ★ネームがお好き USA語録2/町山智浩 /文春文庫 2016年
トランプがローリングストーンズでやってきた USA語録4/町山智浩/文春文庫/2018年
アメリカ炎上通信 言霊USA XXL/町山智浩/文藝春秋/2019年

トランプがローリングストーンズでやってきた USA語録4 町山智浩

2016年、共和党の大統領候補指名選は、最終的にトランプとフロリダの上院議員テッド・クルーズの戦いになった。お互い「お前の母ちゃん出べそ」的な中学生レベルのネガティブキャンペーンを行った。が、相手の弱点をつくことにおいては、トランプに一日の長があった。その悪口の発信を追求されると、PAD(政治活動委員会)という団体が勝手にやったことだと、それぞれの陣営が責任逃れをした。PADは政治家を勝手に応援する後援会で、個人や企業からの献金で潤っている。潤沢な資金で下品なCMが多量に流されることになった。とういうのが前置き。
本書に収録されているのは、『週間文春』の「言霊USA」に、2015年3月19日号〜2016年間3月17日号の間に掲載されたコラム。
本書のタイトルは、トランプ陣営が支持者集会でローリング・ストーンズの『悪魔を憐れむ歌』を流したところからきている。歌詞の中でサタンはこう繰り返す。「私がやっているこのゲームの正体がわからなくて、あなた方は困惑しているでしょう?」これは、支持者集会に流す曲じゃない、そんなことはどうでもいいという精神構造が、ヤバイ。
Image_20200829162401 トランプがローリングストーンズでやってきた USA語録4
町山智浩
文春文庫 2018年 ✳︎10

Opioid(オピオイド=アヘン類似物質)
2015年7月、日本でトヨタのアメリカ人元常務役員ジェリー・ハンプが麻薬の密輸で逮捕された。彼女が持ち込んだオキシドコンという鎮痛剤は、アメリカでは処方箋があれば手に入る。日本でも同じ方法で手に入るが、処方の条件が厳格である。日本で多く処方されているのは「非麻薬性」オピオイドと呼ばれるヤワなやつだ。
オキシドコンは、オピオイドと呼ばれる強力な鎮痛剤で抑うつ効果がある。ハッピーな気分になる。「-oid」は「〜に見える」「それっぽい」という意味だ。麻薬類似物質の常用者は940万人、総売上2億ドル以上の一大産業なのだ。オピオイド中毒は深刻な問題である。いずれ、ヘロインに手を出すことになる。

Black people can't swim?(黒人は泳げない?)
アメリカでは水泳は義務教育の必修科目ではない。貧乏だったり、共稼ぎや片親の忙しい家庭の子は泳ぐ機会がない。
『アメリカのプールの社会史』は、モンタナ大学のジェフ・ウィルツ准教授がプールにおける人種差別を研究したものだ。奴隷制度の時代、白人たちは黒人が川に入ることを固く禁じた。逃げられてしまうからだ。1920年代、全米各地にプールが作られたが、黒人は入ることができなかった。
現在、市民プールにおける差別は「いちおう」なくなったが、「水泳格差」は存在する。実際、USA水泳連盟とメンフィス大学が2010年に発表したデータによると、黒人の7割は泳げない。白人の少年に比べて溺死事故は3倍も多い。

Don't get ahead of the news,It will run you over.(ニュースの先を走ってはならない。後ろから轢かれることになる。by FOXニュースのキャスター)
全米警官組合はタランティーノの映画を「反警官的」としている、新作西部劇『ヘイトフル・エイト』のプレミアム試写会の、警備や交通整理を一切行わないよう呼びかけた。
デビュー作の『レザボア・ドッグス』(92年)ではギャング同士の次のような会話がある。「人を殺したことがあるか?ポリ公じゃなくて、本物の人間を」。タランティーノは警官が嫌いだってことは明らかだ。

メディア王ルパート・マードック傘下のFOXニュースは、黒人射殺が続く昨今は警察官の味方についている。横領がばれそうになり殉職したように見せかけ自殺した警官を、FOXニュースは英雄と祭り上げてしまった。タイトルはFOXニュースのキャスターが、戒めに言った言葉。

Snitch (密告者、チクリ屋)
麻薬王エル・チャポのアジトに海兵隊が踏み込み、一味はほとんど射殺され、エル・チャポは拘束された。エル・チャポは麻薬密売組織シナロア・カルテルのボス。資産10億ドルといわれアメリカ経済誌『フォーブス』の富豪ランキングに入る。エル・チャポは今まで何回も逮捕と脱獄を繰り返していた。
そのエル・チャポに、素人記者としてたびたび記事を書いてきたショーン・ペンがインタビューした。ペンの記事は当たり障りのない内容で、なんのツッコミも入っていない。
ところがこのダメ記事が役に立った。インタビューの交渉に会話を暗号化する携帯電話を使ったが、アメリカ政府の監視システムに引っかかった。密告者になってしまったショーン・ペンは、命がヤバイんじゃないか?→人気ブログランキング

キャプテン・アメリカはなぜ死んだか/町山智浩/文春文庫/2011年
USAカニバケツ: 超大国の三面記事的真実 /町山智浩/ちくま文庫/2011年
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トランプがローリングストーンズでやってきた USA語録4/町山智浩/文春文庫/2018年

キャプテン・アメリカはなぜ死んだか 町山智浩

著者は「リアル・アメリカの伝道師」と呼ばれ、アメリカに関する圧倒的な量の情報を日本に発信し続けている。本書は『週刊現代』の連載コラム『アメリカで味噌汁』を中心に、『サイゾー』『TVプロレス』『クロスビート』などのコラム102編を集めたものである。
文庫版あとがきで、著者は、「アメリカに住むということは、サーカスの見世物を最前列で見るようなもんだ」という、コメディアンのジョージ・カーリンの言葉を紹介している。サンフランシスコの湾を渡った向かいのバークレーに在住。
Photo_20200821142501キャプテン・アメリカはなぜ死んだか

町山智浩
文春文庫
2011年 10✳

アメリカは、ハチャメチャなことが日常的に起こっている国だ。両極端の考えの人がそれぞれ派手な動きをする。白人至上主義が引き起こす人種がらみの事件は尽きないし、宗教は暴走するし、何でもかんでも訴訟を起こす。精神の変調をきたしているやからが銃をぶっ放す。クスリやセックス絡みで暴力事件が起こる。アメリカにはカルト集団がうようよいて、それらが信じられない事件を引き起こす。本書では、そんなサーカスの出し物が次から次へと繰り出される。
本書の特徴は、事の発端となった背景や歴史など、一つのコラムにテンコ盛の情報が詰め込まれていることだ。さらに著者の一見軽いが痛烈な皮肉が込められる。

キャプテン・アメリカは日本人に馴染みが薄いが、コラム「キャプテン・アメリカはなぜ死んだか」で、著者はなにを語っているのか。
アメリカン・コミックのスーパーヒーローであるキャプテン・アメリカの死は、『USAトゥデイ』紙など全米各紙で事件として報じられた。その理由は、キャプテン・アメリカが政治的な存在だからだという。
1941年、真珠湾攻撃が始まると主人公のスティーヴン・ロジャースは軍に志願するが、ひ弱な体で不適格とされる。そこで、超兵士を作る人体実験のモルモットとなる。超兵士となったスティーヴは星条旗を身につけ、キャプテン・アメリカとして、ナチスや日本軍と戦う。大戦後、共産主義と戦うが、すぐにシリーズは休刊する。
1964年、20年間北極の氷の中に閉じ込められていたという設定で現代に蘇る。しかし1974年ニクソンが辞任すると、キャプテン・アメリカもコスチュームを脱いだ。そればかりかヒッピーのように髪を伸ばしノマド(祖国なき者)と名乗ってアメリカを放浪し始める。
結局、再びコスチュームを着たが、アメリカを愛するため政府と対決する。新米のスーパーヒーローと悪漢たちの戦いに一般人が巻き込まれて大惨事が起こり、連邦議会は「超人登録法」を可決した。2007年、スーパーヒーローをすべて政府の管理下に置く法律である。「超人登録法」は、ブッシュ政権のテロ取り締まりのため盗聴や拘束を合法化した「愛国法」のメタファーだ。体制側についたアイアンマンたちに敗れたキャプテンは反政府活動家として逮捕された上に、裁判所の階段で何者かに狙撃され死んでしまう。(07年9月)

真珠湾攻撃がキャプテンが生まれるきっかけだから、日本には受けが悪いわけだ。→人気ブログランキング

キャプテン・アメリカはなぜ死んだか/町山智浩/文春文庫/2011年
USAカニバケツ: 超大国の三面記事的真実 /町山智浩/ちくま文庫/2011年
底抜け合衆国: アメリカが最もバカだった4年間/町山智浩/ちくま文庫/2012年
トランプがローリングストーンズでやってきた USA語録4/町山智浩/文春文庫/2018年

『AV女優、のち』安田理央

AV女優になるきっかけは、身を持ち崩してとか、騙されてとか、借金を返すためとか、を想像するが、信じがたいことだが、最近はAV女優に憧れて自ら志願するケースが多いという。つまり大金を稼ぐやタレントの足がかりとかが、志願の理由となる。

最初は露出が少ない精神的にストレスの少ないものから始め、やがて擬似本番に進み、徐々にエスカレートし、ついには本番にいきつくという。まずはレンタルメーカーでデビューし、その後露出の多いセルメーカーに移籍する。レンタルとセルはAVビデオの販売形式をいう。
著者が7人のAV女優にインタヴューしている。著者名から女性が書いていると思ったが、男だった。

AV女優、のち (角川新書)
AV女優、のち
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安田 理央
角川新書 2018年 ✳︎7
売り上げランキング: 251,666

登場する元AV女優は、1名を除きプロフィール写真を公開している。
7名の現在の状況は、①結婚して、女優としてテレビドラマ・映画・舞台で活躍、②介護職、③タレント・歌手、④バー経営、⑤ソープ嬢・ライター・小説も手がける、⑥AV女優現役・ヘアメイク、⑦AV監督、である。
元AV女優たちは、表向きは後悔することなく暮らしていると答えている。

ところで、本書には「恵比寿マスカッツ」という固有名詞が、ひっきりなしに出てくる。
「恵比寿マスカッツ」は、AV女優やグラビアアイドル・モデルなどの多業種のタレントで構成された女性アイドルグループで、2008年、テレビ東京の深夜番組『おねがい!マスカッツ』で結成され、2013年に活動を停止している。
以前から、AV女優たちがテレビで活躍する場があったわけで、今後は、現であろうと元であろうとAV女優が活躍する場が、もっと拡大するということだ。AV女優に対する偏見は、タトゥーに対する偏見と同じだと主張しているのが、印象に残った。

AV女優、のち/安田理央/角川新書/2018年
職業としての地下アイドル/姫乃たま/朝日新書/2017年

 

『職業としての地下アイドル』姫乃たま

地下アイドルとは、TVや雑誌等のメジャーなメディアには登場せず、小規模なライブを中心に活動しているアイドルのこと。 別名、インディーズアイドル、ライブアイドル、リアル系アイドルと呼ばれる。 ライブ、CDやTシャツなどのグッズ販売、ファンとのツーショット写真撮影(チェキ撮影)などにより収入を得ている。
著者は地下アイドル歴8年。

職業としての地下アイドル (朝日新書)
姫乃たま
朝日新書 2017年

AKB48のブレイク(2005年12月)と、スマートフォンとSNSが普及したことよって、素人でも簡単に見られる立場に立つことができることようになった。これが膨大な数の地下アイドルが生まれた理由である。
地下アイドルとファンの関係は、人気者になりたい認められたいという地下アイドルの「承認欲求」に対し、ファンは地下アイドルから顔と名前を覚えてもらう「認知」という構図で成り立っている。
当然のことながらファンは地下アイドルに対して恋愛感情を抱くようになる。

著者が行った地下アイドルとファンに対するアンケートによれば、地下アイドルの年齢は平均21.6歳(15〜35歳)、平均月収は12万7千円(3000円から60万円)。ファンの平均年齢35.4歳(18歳〜58歳)。
地下アイドルの世界には、枕営業の見返りになるほどの権力者がいないので、枕営業は成り立たないという。

地下アイドルに共通する点は、両親に可愛がられて育てられ、スクールカーストでは上位に属さず、いじめられた経験がある。
地下アイドルは両親に愛されてきたからこそ人に愛される喜びを誰よりも知っていて、学校で受けたいじめ体験によって、その喜びを喪失してしまった女の子たちであるというのが著者の見解。

地下アイドルは、大体3年で引退する。1年目は右も左も分からないまま無我夢中で活動する。2年目は腰を据えて努力するが、3年目に見切りをつけて業界を去っていく。
年齢的に学業と両立している子が多いので、大抵は進級や進学、就職にあわせて引退しなければならなくなる。

 

著者は地上アイドルと地下アイドルをひとつのスペクトラムとして捉えている。つまり、「地上アイドル」としてAKB48の中のトップアイドルから、その下層にいてTVやマスコミへの露出が少ないAKBのメンバー、次にある程度の知名度がある地下アイドルがいて、その下に多数の無名の地下アイドルがいるという構図である。

AV女優、のち/安田理央/角川新書/2018年
職業としての地下アイドル/姫乃たま/朝日新書/2017年

『言葉尻とらえ隊』能町みね子

『週刊文春』(2011/10~2014/5)に掲載された同名のコラムの文庫化。
新聞をとっていないし、本もロクに読まない、テレビも見ない、もっぱら有名人のツイッターやブログなどのネットから、ネタをもってきているとのこと。
ちなみに、著者はコラム執筆のほかにイラストを描き、オールナイトニッポンのパーソナリティをこなした。最近はテレビにも出演していて、サブカルチャーの分野で活躍している。性転換手術で女になった。

言葉尻とらえ隊 (文春文庫)

言葉尻とらえ隊 (文春文庫)

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能町みね子 (Noumachi Mineko)
2014年12月 ★★★★★

マスコミで使われるフレーズ、女子高生の気になる言い回し、有名人の舌禍フレーズ、芸人のギャグ、流行語大賞のノミネートワードなどを、俎上に上げて料理する辛口コラム。批判精神が旺盛なところがいい。曖昧表現に逃げる現代日本のやわな風潮に苦言を呈している。

「ナンシー関ならどう書くか」という常套句にもなった感のある言い方に、もういい加減聞き飽きた自分で答えろと書いているが、イラストの腕がありナンシー関を彷彿とさせるキレが見られ、著者の大いなる飛躍が期待されます。

『ヤンキー進化論―不良文化はなぜ強い』難波功士

著者は多岐にわたる資料をもとに、ヤンキーのルーツから最新動向までを、おもにファッションの視点から解き明かしている。

著者はナンシー関のヤンキーに関するいくつかのコラムの行間から、「ヤンキーの美意識はバッドテイストである」と一言でまとめている。このバッドテイスト(悪趣味)は、ヤンキーを語るときに必ず挙げられるキーワードである。

ヤンキー進化論 (光文社新書)
ヤンキー進化論
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難波功士(Nanba Kouji)
光文社新書
2009年4月 ★★★★★

著者がヤンキーの条件として挙げているのは3点。(1)階層的には下(と見なされがち)、(2)旧来型の男女性役割〈ジェンダー・ロール〉(男の側は女性に対して、セクシャルでありかつ家庭的であることを求める。概して早熟・早婚)、(3)ドメスティック(自国的)やネイバーフッド(地元)を志向。

階層については、ヤンキーの多くは現場仕事に従事する労働者、ないしは小規模な自営業者およびその後継者である。これらの仕事の志気の高さこそが、社会の安全と活力の基盤であることは間違いないとする。
労働者階級の矜持を論じることに、ヤンキー文化とは何かを考えることに今日的な意義があるとしている。

60年代までの不良・非行の意匠は、制服姿の「番長」「スケ番」、街にたむろする「愚連隊・チンピラ」「ズベ公」「太陽族・みゆき族」「フーテン」、戦後のアロハシャツからヒッピーまがいのサイケ、等で認識されていた。これらのうちには、ヤンキーは影も形もないとする。
著者がヤンキーのルーツと捉えているのは、60年代から70年代半ばまで横浜や東京を中心に流行したスカマンである。スカマンとは、ヨコスカマンボ族の略称。米軍の基地がある横須賀に関連がある以上、ヤンキー(Yankee)の言葉通りに、アメリカの影響を受けた不良文化がルーツであろうとしている。一説にある、ヤンキーの関西起源説に否定的である。

ナンシー関は日本人の5割はヤンキーとし、芸能界を支配する美意識の大部分がヤンキー的なものであることを指摘した。そして著者は、〈コアなヤンキーは減少したかもしれないが、・・・ヤンキー的な人・モノ・コト広がってしまった〉と憂慮をほのめかしている。

本書では、ナンシー関のバッドテイスト、ヤンキーの条件、ヤンキーのルーツ、ヤンキーの社会的意義、人を含めたヤンキー的なコトの広がりについて述べているが、著者が導き出した以上の仮説や論点はいずれもヤンキーを語るうえで、基調となっているのである。→ブログランキングへ

世界が土曜の夜の夢なら ヤンキーと精神分析/斎藤環/角川書店/2013年
ヤンキー進化論―不良文化はなぜ強い/難波功士/光文社新書/2009年

『世界が土曜の夜の夢なら ヤンキーと精神分析』斎藤 環

著者は、不良文化にルーツを持つヤンキー美学が、どのようにして世間に広く浸透したかを、多岐にわたる資料をもとに分析を試みている。本書は第11回角川財団学芸賞を受賞した。

ナンシー関のヤンキーについてのコラムから、『ヤンキー進化論』の著者・難波攻ニは、「ヤンキーの美学はバッドテイストなもの」とまとめた。このバッドテイストは、ヤンキーを語るときに欠かせないキーワードとなった。本書では、『ヤンキー進化論』を部分的に追試し、そこに著者の専門である精神分析の手法が加味され、質の高いヤンキー文化論が展開されているといえる。須佐之男命を日本初のヤンキーと位置づける発想は、博覧強記の著者ならではであり、もはや縦横無尽である。

世界が土曜の夜の夢なら  ヤンキーと精神分析
斎藤 環(Saitoh Tamaki
角川書店  2013年6月  ★★★★★

著者が繰り返し強調しているのが、ヤンキーの「気合」でありギャルの「アゲ」である。つまり、このふたつの言葉の意味するところは、内なるエネルギーで物事にぶつかれば何とかなるというヤンキーの体当たり至上主義を表している。
ギャルの美学の中心はアゲであり、アゲとは気分が高揚する、テンションが上がる、イケイケになることである。彼らはギャル・ファッションで武装することでアゲアゲになる、その一瞬こそが、「土曜の夜を煌めかせる」のだと書いている。本書のタイトルはここからつけられた。

著者がヤンキーを特徴づけるタームとして挙げているのは、バッドテイスト、気合、アゲのほかに、いびつな和洋折衷、地元ラブ、女性性、母親リスペクト、コミュニケーション力、ファンシー、反知性主義、保守志向、現実的などである。これらのうち、ヤンキーの本質が「女性性」であるという革新的なアイデアを提示のは作家の赤坂真理であると紹介している。

ヤンキーたちは関係性を大切にする。上下関係のみならず、異性との関係や、とりわけ家族を大切にする傾向がある。こうした関係性への配慮が、彼らを女性的に見せているのだという。

さらにヤンキー文化の根底には母性が存在するとしている。ヤンキーを女性性や母性との関連で見ると、これまでヤンキー文化に観察されてきた奇妙な現象について納得のいく説明をができるという。なぜヤンキーは女物のサンダルを履きたがるのか。なぜヤン車の中には様々なファンシーグッズが詰め込まれているのか。なぜヤンキーファッションにはかわいいキャラクターグッズが違和感なくなじむのか。なぜヤンキーはディズニーが好きなのか。といった疑問についての回答がえられるのである。

著者は、「ヤンキー文化=女性原理のもとで追及される男性性」、それに対として、「オタク文化=男性原理のもとで追及される女性性」と仮定してる。ヤンキー文化とは、男性原理の価値規範を、女性原理の方法論で伝達、拡散することによって、成り立ってきたのではないかと指摘する。この点は精神科医としての著者ならではの見解である。

著者は、ヤンキー文化の果たしている役割について、次のような達見を述べている。
〈わが国においては思春期に芽生えた反社会性のほとんどは、ヤンキー文化に吸収される。不良が徒党を組むさいに求心力を持つのは、ガチで気合の入った、ハンパなく筋を通す、喧嘩上等といった価値規範なのだ。
青少年の反社会性は、芽生えた瞬間にヤンキー文化に回収され、一定の様式化を経て、絆と仲間と伝統を大切にする、保守として成熟していくのである。われわれは全く無自覚なうちにかくも巧妙な治安システムを手にしていたのである。〉
ヤンキー文化が、青少年の反社会的な行動にブレーキをかける装置として機能しているという、著者のヤンキーに対する肯定的な見解は斬新であり、今後ヤンキーを語る上での重要な視点になるだろう。→ブログランキングへ

世界が土曜の夜の夢なら ヤンキーと精神分析/斎藤環/角川書店/2013年
ヤンキー進化論―不良文化はなぜ強い/難波功士/光文社新書/2009年

『モテキ』

モテキ DVD通常版

モテキ DVD

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監督:大根仁
脚本:大根仁
原作:久保ミツロウ
製作国:日本  2011年  118分  ★★★★☆

藤本幸世31歳は、ニュースサイト「ナタリー」の新入社員。自意識過剰なくせに、人の目を見て話せない。第2童貞期からどうやったら脱出できるかが、幸世にとっての最大のテーマ。
会社では、ポカミスを犯しボロクソ言われる毎日。とくに先輩の唐木素子(真木よう子)からは、怒鳴られっぱなしである。
そんな草食系ダメ男を、森山未來が演じる。

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ある日、ツイッターで知り合った雑誌編集の仕事をする人物と会うことになり、待ち合わせの場所に現れたのは、美人でスタイル抜群の松尾みゆき(長澤まさみ)。みゆきのアバターがヒゲの男だったから、男と思い込んでいた。

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みゆきはいきなり飲みに行こうと切り出し、前からの友達のようにフランクに接する。我が人生に「モテキ」が訪れたと、幸世は有頂天になる。
ここで、ダンサーでもある森山未來がウェストサイドストーリー張りのキレのある見事な踊りを披露する。

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みゆきには同棲している相手がいて、幸世の思い通りにことは進まなかった。
そんなおり、みゆきの友人である枡元ルミ子(麻生久美子)に告白をされて一夜をともにする。しかし、みゆきへの思いを断つことができない幸世は、「重すぎる」ルミ子を振ってしまう。

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その後、取材でみゆきの同棲相手のミュージシャンに会い、結婚をしていることを知る。
音楽フェスティバルの当日、ミュージシャンは離婚したことをみゆきに伝えるが、みゆきはなぜか動揺する。取材に来ていた幸世はみゆきに迫り、みゆきは逃げ出してしまう。

本作は、原作の久保ミツロウ(女性)が映画のために描き下ろしたもの。
サブカルチャー好きにはたまらない作品である。
マンガやテレビドラマ同様、本作も大ヒットとなった。

2020年9月
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