サブカルチャー

『職業としての地下アイドル』姫乃たま

地下アイドルとは、TVや雑誌等のメジャーなメディアには登場せず、小規模なライブを中心に活動しているアイドルのこと。 別名、インディーズアイドル、ライブアイドル、リアル系アイドルと呼ばれる。 ライブ、CDやTシャツなどのグッズ販売、ファンとのツーショット写真撮影(チェキ撮影)などにより収入を得ている。
著者は地下アイドル歴8年。

職業としての地下アイドル (朝日新書)
姫乃たま
朝日新書 2017年9月
売り上げランキング: 78,764

AKB48のブレイク(2005年12月)と、スマートフォンとSNSが普及したことよって、素人でも簡単に見られる立場に立つことができることようになった。これが膨大な数の地下アイドルが生まれた理由である。
地下アイドルとファンの関係は、人気者になりたい認められたいという地下アイドルの「承認欲求」に対し、ファンは地下アイドルから顔と名前を覚えてもらう「認知」という構図で成り立っている。
当然のことながらファンは地下アイドルに対して恋愛感情を抱くようになる。

著者が行った地下アイドルとファンに対するアンケートによれば、地下アイドルの年齢は平均21.6歳(15〜35歳)、平均月収は12万7千円(3000円から60万円)。ファンの平均年齢35.4歳(18歳〜58歳)。
地下アイドルの世界には、枕営業の見返りになるほどの権力者がいないので、枕営業は成り立たないという。

地下アイドルに共通する点は、両親に可愛がられて育てられ、スクールカーストでは上位に属さず、いじめられた経験がある。
地下アイドルは両親に愛されてきたからこそ人に愛される喜びを誰よりも知っていて、学校で受けたいじめ体験によって、その喜びを喪失してしまった女の子たちであるというのが著者の見解。

地下アイドルは、大体3年で引退する。1年目は右も左も分からないまま無我夢中で活動する。2年目は腰を据えて努力するが、3年目に見切りをつけて業界を去っていく。
年齢的に学業と両立している子が多いので、大抵は進級や進学、就職にあわせて引退しなければならなくなる。

著者は地上アイドルと地下アイドルをひとつのスペクトラムとして捉えている。つまり、「地上アイドル」としてAKB48の中のトップアイドルから、その下層にいてTVやマスコミへの露出が少ないAKBのメンバー、次にある程度の知名度がある地下アイドルがいて、その下に多数の無名の地下アイドルがいるという構図である。→人気ブログランキング

『言葉尻とらえ隊』能町みね子

『週刊文春』(2011/10~2014/5)に掲載された同名のコラムの文庫化。
新聞をとっていないし、本もロクに読まない、テレビも見ない、もっぱら有名人のツイッターやブログなどのネットから、ネタをもってきているとのこと。
ちなみに、著者はコラム執筆のほかにイラストを描き、オールナイトニッポンのパーソナリティをこなした。最近はテレビにも出演していて、サブカルチャーの分野で活躍している。

言葉尻とらえ隊 (文春文庫)
能町みね子 (Noumachi Mineko)
2014年12月 ★★★★★

マスコミで使われるフレーズ、女子高生の気になる言い回し、有名人の舌禍フレーズ、芸人のギャグ、流行語大賞のノミネートワードなどを、俎上に上げて料理する辛口コラム。批判精神が旺盛なところがいい。曖昧表現に逃げる現代日本のやわな風潮に苦言を呈している。

「ナンシー関ならどう書くか」という常套句にもなった感のある言い方に、もういい加減聞き飽きた自分で答えろと書いているが、イラストの腕がありナンシー関を彷彿とさせるキレが見られ、著者の大いなる飛躍が期待されます。→ブログランキングへ

『ヤンキー進化論―不良文化はなぜ強い』難波功士

著者は膨大な多岐にわたる資料をもとに、ヤンキーのルーツから最新動向までを、おもにファッションの視点から解き明かしている。

著者はナンシー関のヤンキーに関するいくつかのコラムの行間から、「ヤンキーの美意識はバッドテイストである」とまとめている。このバッドテイスト(悪趣味)は、ヤンキーを語るときに必ず挙げられるキーワードとなっている。

ヤンキー進化論 (光文社新書)
ヤンキー進化論
posted with amazlet at 14.04.18
難波功士(Nanba Kouji)
光文社新書
2009年4月 ★★★★★

著者がヤンキーの条件として挙げているのは、以下の3点である。(1)階層的には下(と見なされがち)、(2)旧来型の男女性役割〈ジェンダー・ロール〉(男の側は女性に対して、セクシャルでありかつ家庭的であることを求める。概して早熟・早婚)、(3)ドメスティック(自国的)やネイバーフッド(地元)を志向。

階層については、ヤンキーの多くは現場仕事に従事する労働者、ないしは小規模な自営業者およびその後継者である。これらの仕事の志気の高さこそが、社会の安全と活力の基盤であることは間違いないとする。
労働者階級の矜持を論じることに、ヤンキー文化とは何かを考えることに今日的な意義があるとしている。

60年代までの不良・非行の意匠は、制服姿の「番長」「スケ番」、街にたむろする「愚連隊・チンピラ」「ズベ公」「太陽族・みゆき族」「フーテン」、戦後のアロハシャツからヒッピーまがいのサイケ、等で認識されていた。これらのうちには、ヤンキーは影も形もないとする。
著者がヤンキーのルーツと捉えているのは、60年代から70年代半ばまで横浜や東京を中心に流行したスカマンである。スカマンとは、ヨコスカマンボ族の略称。米軍の基地がある横須賀に関連がある以上、ヤンキー(Yankee)の言葉通りに、アメリカの影響を受けた不良文化がルーツであろうとしている。一説にある、ヤンキーの関西起源説に否定的である。

ナンシー関は日本人の5割はヤンキーとし、芸能界を支配する美意識の大部分がヤンキー的なものであることを指摘した。そして著者は、〈コアなヤンキーは減少したかもしれないが、・・・ヤンキー的な人・モノ・コト広がってしまった〉と憂慮をほのめかしている。

本書では、ナンシー関のバッドテイスト、ヤンキーの条件、ヤンキーのルーツ、ヤンキーの社会的意義、人を含めたヤンキー的なコトの広がりについて述べているが、著者が導き出した以上の仮説や論点はいずれもヤンキーを語るうえで、基調となっているのである。→ブログランキングへ

世界が土曜の夜の夢なら ヤンキーと精神分析/斎藤環/角川書店/2013年
ヤンキー進化論―不良文化はなぜ強い/難波功士/光文社新書/2009年

『世界が土曜の夜の夢なら ヤンキーと精神分析』斎藤 環

著者は、不良文化にルーツを持つヤンキー美学が、どのようにして世間に広く浸透したかを、多岐にわたる資料をもとに分析を試みている。本書は第11回角川財団学芸賞を受賞した。

ナンシー関のヤンキーについてのコラムから、『ヤンキー進化論』の著者・難波攻ニは、「ヤンキーの美学はバッドテイストなもの」とまとめた。このバッドテイストは、ヤンキーを語るときに欠かせないキーワードとなった。本書では、『ヤンキー進化論』を部分的に追試し、そこに著者の専門である精神分析の手法が加味され、質の高いヤンキー文化論が展開されているといえる。須佐之男命を日本初のヤンキーと位置づける発想は、博覧強記の著者ならではであり、もはや縦横無尽である。

世界が土曜の夜の夢なら  ヤンキーと精神分析
斎藤 環(Saitoh Tamaki
角川書店  2013年6月  ★★★★★

著者が繰り返し強調しているのが、ヤンキーの「気合」でありギャルの「アゲ」である。つまり、このふたつの言葉の意味するところは、内なるエネルギーで物事にぶつかれば何とかなるというヤンキーの体当たり至上主義を表している。
ギャルの美学の中心はアゲであり、アゲとは気分が高揚する、テンションが上がる、イケイケになることである。彼らはギャル・ファッションで武装することでアゲアゲになる、その一瞬こそが、「土曜の夜を煌めかせる」のだと書いている。本書のタイトルはここからつけられた。

著者がヤンキーを特徴づけるタームとして挙げているのは、バッドテイスト、気合、アゲのほかに、いびつな和洋折衷、地元ラブ、女性性、母親リスペクト、コミュニケーション力、ファンシー、反知性主義、保守志向、現実的などである。これらのうち、ヤンキーの本質が「女性性」であるという革新的なアイデアを提示のは作家の赤坂真理であると紹介している。

ヤンキーたちは関係性を大切にする。上下関係のみならず、異性との関係や、とりわけ家族を大切にする傾向がある。こうした関係性への配慮が、彼らを女性的に見せているのだという。

さらにヤンキー文化の根底には母性が存在するとしている。ヤンキーを女性性や母性との関連で見ると、これまでヤンキー文化に観察されてきた奇妙な現象について納得のいく説明をができるという。なぜヤンキーは女物のサンダルを履きたがるのか。なぜヤン車の中には様々なファンシーグッズが詰め込まれているのか。なぜヤンキーファッションにはかわいいキャラクターグッズが違和感なくなじむのか。なぜヤンキーはディズニーが好きなのか。といった疑問についての回答がえられるのである。

著者は、「ヤンキー文化=女性原理のもとで追及される男性性」、それに対として、「オタク文化=男性原理のもとで追及される女性性」と仮定してる。ヤンキー文化とは、男性原理の価値規範を、女性原理の方法論で伝達、拡散することによって、成り立ってきたのではないかと指摘する。この点は精神科医としての著者ならではの見解である。

著者は、ヤンキー文化の果たしている役割について、次のような達見を述べている。
〈わが国においては思春期に芽生えた反社会性のほとんどは、ヤンキー文化に吸収される。不良が徒党を組むさいに求心力を持つのは、ガチで気合の入った、ハンパなく筋を通す、喧嘩上等といった価値規範なのだ。
青少年の反社会性は、芽生えた瞬間にヤンキー文化に回収され、一定の様式化を経て、絆と仲間と伝統を大切にする、保守として成熟していくのである。われわれは全く無自覚なうちにかくも巧妙な治安システムを手にしていたのである。〉
ヤンキー文化が、青少年の反社会的な行動にブレーキをかける装置として機能しているという、著者のヤンキーに対する肯定的な見解は斬新であり、今後ヤンキーを語る上での重要な視点になるだろう。→ブログランキングへ

世界が土曜の夜の夢なら ヤンキーと精神分析/斎藤環/角川書店/2013年
ヤンキー進化論―不良文化はなぜ強い/難波功士/光文社新書/2009年

『モテキ』

モテキ DVD通常版
モテキ DVD
posted with amazlet at 13.01.14
監督:大根仁
脚本:大根仁
原作:久保ミツロウ
音楽:岩崎太整/主題歌:フジファブリック 『夜明けのBEAT』/女王蜂 『デスコ』
製作国:日本  2011年  118分  ★★★★☆

藤本幸世31歳は、ニュースサイト「ナタリー」の新入社員。自意識過剰なくせに、人の目を見て話せない。第2童貞期からどうやったら脱出できるかが、幸世にとっての最大のテーマ。
会社では、ポカミスを犯しボロクソ言われる毎日。とくに先輩の唐木素子(真木よう子)からは、怒鳴られっぱなしである。
そんな草食系ダメ男を、森山未來が演じる。

4

ある日、ツイッターで知り合った雑誌編集の仕事をする人物と会うことになり、待ち合わせの場所に現れたのは、美人でスタイル抜群の松尾みゆき(長澤まさみ)。みゆきのアバターがヒゲの男だったから、男と思い込んでいた。

1

みゆきはいきなり飲みに行こうと切り出し、前からの友達のようにフランクに接する。我が人生に「モテキ」が訪れたと、幸世は有頂天になる。
ここで、ダンサーでもある森山未來がウェストサイドストーリー張りのキレのある見事な踊りを披露する。

3

みゆきには同棲している相手がいて、幸世の思い通りにことは進まなかった。
そんなおり、みゆきの友人である枡元ルミ子(麻生久美子)に告白をされて一夜をともにする。しかし、みゆきへの思いを断つことができない幸世は、「重すぎる」ルミ子を振ってしまう。

2_2

その後、取材でみゆきの同棲相手のミュージシャンに会い、結婚をしていることを知る。
音楽フェスティバルの当日、ミュージシャンは離婚したことをみゆきに伝えるが、みゆきはなぜか動揺する。取材に来ていた幸世はみゆきに迫り、みゆきは逃げ出してしまう。

本作は、原作の久保ミツロウ(女性)が映画のために描き下ろしたもの。
サブカルチャー好きにはたまらない作品である。
マンガやテレビドラマ同様、本作も大ヒットとなった。


映画(全般) ブログランキングへ

『清水ミチコ物語』 (CD)

清水ミチコ物語
清水ミチコ物語
posted with amazlet at 12.04.09
清水ミチコ
ソニー・ミュージックダイレクト (2012-03-28)
売り上げランキング: 364

バッタもん歴25年の集大成なんだそうだ。
のび太の夏休み(『ドラえもん』)という設定で、CDは始まる。

『謎の中華三昧』は、単調なルート66の出だしのリズムに乗って、アグネス・チャンと欧陽韮韮とジュディ・オングが、中華料理店でラーメンを頼むというもの、らしくって、爆笑だ。
やけくそに気味に歌う『テネシーワルツ』は大阪のオバちゃん綾戸智恵のマネ。
『イェル・ケ・クク』は、小学生が明日のテストに備えて九九を暗記するというシチュエーションでシャンソンを歌う。九九は、フランス語に似てる。
野球を知らない人間には、ラジオの野球中継って支離滅裂に聞こえるらしい。
「三遊間で打った」「デッドボールのサインだったんではないでしょうか」「本日の試合は有終の美を持ちましてすべて終了いたしました」なんてことになる、それが『野球中継』。
『欲望』は、井上陽水がいかにも作りそうな曲に歌詞をつけて、陽水の声で歌っている。それが見事に陽水らしいのだ。

似てるー、すげえー、なんだこりゃー、たいしたもんだ、などとつい合いの手を入れてしまう。
悔しいのは、誰の真似なんだかわからない数カ所。名前が出てこないのが、なんとももどかしい。
単なるモノマネだけでなく、歌唱力、それとピアノの弾き語りの才があるところが、清水ミチコの強みだ。
本物の「バッタもん」のシュルな世界が広がる。

『USAカニバケツ』超大国の三面記事的真実 町山智浩  

USAカニバケツ: 超大国の三面記事的真実 (ちくま文庫)
町山 智浩
筑摩書房
2011年10月10日
ISBN978-4-480-42872-1
★★★★☆

カニバケツとはバケツに蟹をいれておくとバケツから出ようとする蟹を他の蟹が引きずり落とし、蓋をしなくとも蟹は逃げられないというもの。
日本社会の例えによく使われるというのだが。。
いや、むしろ著者が紹介するアメリカの社会を象徴するのにぴったりの言葉だ。
足の引っ張り合い。アメリカンドリームをつかんだのもつかの間、またもとのバケツの中に舞い戻る。
中庸なんてことには収まらない、極端なことだらけのアメリカが紹介されている。
ドラッグ、セックス、金、暴力、殺人、人種差別、男女差別、成り上がろうと企む男女、本音と建前の違う社会など、三面記事から集めた話題となれば、「いくらんなんでもそりゃーやりすぎだろう」というような限度を超えたことばかりだ。ハチャメチャなエネルギーに満ちたアメリカが伝わってくる。
気の利いたジョークで、不幸も幸福も笑い飛ばしてしまう。
憚れるようなえげつないジョークも飛び出して、三面記事のアメリカはまさにカニバケツだ。
抜群の情報収集力と分析力をもとに、たんたんとした語り口で書かれたコラムは読み応え十分。あとがきで著者は「底の方から見ている」と書いている。つまりバケツの底からだ。
著者の紹介するスラプスティックなアメリカは、なにはともあれ大いに魅力的だ。

『底抜け合衆国』  町山智浩

底抜け合衆国: アメリカが最もバカだった4年間 (ちくま文庫)
町山 智浩
筑摩書房
2012年3月10日
ISBN978-4-480-42912-4

2000年末のブッシュ対ゴアの大統領選挙戦は、僅差でブッシュが勝った。
フロリダ州での票の再集計にもつれ込んだものの、共和党が多数を占める最高裁判所により再集計は差し止められた。
ブッシュの弟のフロリダ州知事ジェブ・ブッシュは、犯罪歴のある選挙人の票を無効にしたといわれている。
そのなかには犯罪を犯したことのない人物も含まれていたという。
ここから、アメリカの狂騒は始まった。
2001年には「9.11同時多発テロ」が起こり、アメリカは愛国者法を制定し全体主義国家のようになっていった。
9.11の黒幕はフセインであると煽り、イラクには大量破壊兵器があるとしてイラクに戦争をしかけた。
2003年3月、ブッシュ批判の急先鋒に立ったマイケル・ムーアが、アカデミー賞授賞式で数日前にイラク攻撃を開始したブッシュに対して、「ブッシュよ恥をしれ」と叫んだ。
そして2004年再び大統領選挙がやってきた。
ムーアはブッシュ再選阻止を叫んで『華氏911』を公開した。
にもかかわらず、なんのことはない、内外からあれほど批判にさらされたブッシュが再選されてしまうのだ。

間違っていようが、目を覆いたくなるような悲惨なことが起きようが、人殺しが起きようが、戦争になろうが、ジョークで笑い飛ばそうとするのがアメリカである。
著者はそんなスラプスティックな大衆国家アメリカを、豊富な知識と的確な視点で伝えてくれる。
だから著者のアメリカ批評は見逃せない。