台北プライベートアイ 紀 蔚然
プライベートアイとは私立探偵のこと。
台北市に登場した新探偵を拍手をもって迎えたい。
司馬遼太郎の小説の一節や宮崎駿の『トトロ』の話が出てきたり、日本風のカフェが出てきたり、横溝正史や江戸川乱歩が引用されたりして、いたって親日的なのだ。
この小説のクライマックスは主人公と連続殺人犯とが闘うハードボイルドなシーンである。著者は先進国におけるシリアルキラー論に言及し、それと対比して台湾人論を展開している。本書は台湾の社会文化論の内容を含んでいる。
台北プライベートアイ 紀 蔚然(き・うつぜん)/船山むつみ 文藝春秋 2021年 383 頁 |
50歳がらみの劇作家で大学教授の呉誠(ウー・チェン)は、妻に愛想をつかされ離婚し、大学を辞め演劇界とも縁を切り、マンションを売ってうらぶれた臥龍街に引っ越した。呉誠が退路を絶って私立探偵としてやっていこう決めた、そのきっかけとなったのが亀山島(グイシャンダオ)事件である。演劇関係者との宴会で、呉誠は酔いも手伝って仲間や後輩たちを次々に罵倒したのだ。呉誠の言葉は核心をついていたが、それは凄まじいものだった。その荒れた宴会を境に、呉誠は周りとの関係がギクシャクしだした。
呉誠は、大学に入った冬に眠れなくなり医師に薬を処方してもらい、それ以来パニック障害と戦っている
初めての依頼は林夫人からのものだった。3〜4週前からひとり娘が夫を無視しだしたという。まるで仇を見るような目で夫を見るという。その真相を明らかにするのが依頼の内容で、依頼料は3万円プラスタクシー代だ。夫の林氏は中央健康局台北支局総合サービスセンターで働いている会計監査課副課長、誇り高き公務員である。
第一の事件は尾行という探偵の初歩テクニックを駆使してなんとか片付けた。
実は呉誠が第一の依頼を捜査する間に、呉誠の家から20分の所で一人の男が死体となって発見されていた。その男を含む比較的年配の被害者3人が後頭部を鈍器で殴られ殺された。
呉誠がその連続殺人の容疑者として逮捕された。逮捕の理由は公園の防犯カメラに被害者たちと一緒に写っている画像があったからだ。
呉誠はテレビで活躍するやる気満々の弁護士、涂耀明(トォー・ヤオミン)を雇った。情報をリークした警察や、名誉を毀損する報道を行なったマスコミと真正面から闘う姿勢をとったのだ。→人気ブログランキング
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