ハードボイルド

『マルタの鷹』ダシール・ハメット

『マルタの鷹』は、アメリカの大衆向け雑誌『ブラック・マスク』に1929年9月号から1930年1月号に連載され、同年に単行本として発刊された、ハードボイルド探偵小説の嚆矢である。アウトロー探偵サム・スペードが、美女の頼みごとを引き受けたばかりに厄介に巻き込まれる。登場人物のキャラクターが見事に描き分けられていて、早いテンポで話が進んでいく。3度(1931年、36年、41年)にわたって映画化されている。
ただただ傑作と言わざるをえない。

マルタの鷹〔改訳決定版〕 (ハヤカワ・ミステリ文庫)
マルタの鷹
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ダシール ハメット/小鷹信光
ハヤカワ・ミステリ文庫(改訳改訂版)
2012年

女はサンフランシスコの私立探偵サム・スペードに妹の捜索を依頼する。妹と駆け落ちしたというサーズビーと、サーズビーを尾行したスペードの同僚アーチャーは銃で撃たれて殺される。アーチャーの妻と不倫関係にあったスペードは警察に殺人の容疑をかけられてしまう。

妹の失踪は作り話で、しかもその女ブリジッド・オショーネシーは偽名を使っていた。オショーネシーはスペードに近づいた本当の理由を明かさない。
そのあと、スペードにカイロという男が接触してきたのは、スペードがオショーネシーから何かを聞き出しているとみたからだ。カイロはスペードに黒い鳥の装飾品を見つけ出したら5000ドル払うという。

さらに脂肪肥りのガットマンが手下にスペードを尾行させる。
このあたりでスペードの前に現れた人物たちの目的は、マルタ騎士団が所有していたという宝石を散りばめた莫大な価値がある装飾品を手に入れることだとわかる。

ガットマンはロシアの将軍が装飾品を所持していることを掴み、カイロ、サーズビー、オショーネシーを代理人として装飾品を手に入れようとしたが、3人はそれを自分のものにしようと策を弄したという。装飾品の表面には宝石を隠すため黒いエナメルが塗られていてる。
それぞれが自分が掴んでいる情報を明かさず、装飾品をめぐって探り合いを繰り広げている。

やがて、スペードのオフィスに胸に銃弾を受け血を流している男が飛び込んできて、スペードに包みを渡したあと事切れた。その包みから装飾品が出てきた。
3人も殺された事件を警察が黙っているはずがない。
スペードは、ガットマンとその手下、カイロとオショーネシーを前に、3人の殺人事件の犯人を警察に提供して、この事件に幕を降ろすことを提案する。装飾品のことが警察の知るところとなれば、事の収拾がつかなくなるというのが理由だった。
ここから、スペードと悪党たちとの駆け引き、警察の執拗な操作が佳境に入っていく。→人気ブログランキング

『上海』

太平洋戦争開戦直前1941年、上海では日米英独が入り乱れて勢力争いにしのぎを削っていた。
米国諜報員ポール・ソームズ(ジョン・キューザック)は、カジノで会う約束をしていた同僚のコナーが殺されたこを知る。コナーは上海の有力マフィアのボス、アンソニー・ランティン(チョウ・ユンファ)の捜査をしていた。
ソームズはドイツ大使館で開かれたパティーで、日本軍諜報部のトップのタナカ大佐(渡辺謙)と、ランティンの妻アンナ(コン・リー)に会う。アンナの父親は南京事件を批判して、日本軍に殺された政治家だった。アンナは日本軍から身を隠すかのように、ランティンと結婚した。
ソームズとアンナは情報を共有することで、信頼関係が生まれていく。
そんななか、反日レジスタンス活動が始まる。
アンナは夫に隠れてレジスタンス活動に加わっていたのだった。アンナたちはタナカが擁護するジャンキーのスミコ(菊池凛子)を手中にいれて、拘束されている仲間との交換を迫ろうとするが、ソームズは無駄だという。必要がなくなられば殺してしまう連中である。
ついに、日本が真珠湾攻撃をしかけ太平洋戦争が勃発する。上海ではレジスタンスと日本軍の銃撃戦が起こり、タナカは腕を負傷する。
上海が徐々に日本軍に支配されていくなか、欧米人を優先的に出国させることになり、ソームズとアンナは港の検問所に向かう。そこには、負傷したタナカ大佐が待っていた。
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ネオンが妖しく輝く混沌と退廃の魔都上海で繰り広げられる、陰謀と策略と欲望が交錯する、戦争アクションサスペンスミステリ。
見応えあり。→公式サイト

『マシンガン・パニック』

マシンガン・パニック/笑う警官 [DVD]
20世紀フォックス・ホーム・エンターテイメント・ジャパン (2010-04-23)
原題:The Laughing Policeman
監督:スチュアート・ローゼンバーグ
脚本:トーマス・リックマン
音楽:チャールズ・フォックス
製作:アメリカ  1976年

ある夜、サンフランシスコの下町を走るバスの中で、小型マシンガン乱射事件が起こり8名が犠牲になる。犯人はそのまま立ち去った。
サンフランシスコ警察殺人課の刑事ジェーク・マーティン(ウォルター・マッソー)、レオ・ラーセン(ブルース・ダーン)たちが駆けつけ、殺された乗客の中に同僚のエバンスが含まれていることに気づく。
亡くなったエバンスはマーティンと組んで捜査に当たっていた。
事件はどんどん悲惨になる、世の中が悪くなっていくとラーセンが嘆く。
エバンスは迷宮入りになったテレサ殺人事件を非番のときに一人で捜査していた。
テレサ事件は2年前にマーティンとエバンスが手掛けたが、迷宮入りとなった事件だった。

やがて、マーティンはテレサ事件とバス乱射事件は関係があると推理し、テレサとつきあっていたカメレロの身辺調査を始める。そしてカメレロの正体が明らかになっていく。
マーティンたちは尾行を続け、それとなくカメレロに精神的な圧力を加えていった。
ある日、マーティンが尾行していると、トランクをかかえたカメレロがバスに乗り込んだ。マーティンも強引にそのバスに乗り込む。
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本作は、ドキュメンタリーのような描き方でとっつきにくい。
原作の『笑う警官 (角川文庫)』は、ペール・ヴァールーとマイ・シューヴァル共著によるスウェーデンの警察小説「マルティン・ベック シリーズ」の第4作である。文庫の解説では、本作品を駄作と断じている。
舞台をストックフォルムからサンフランシスコに移している。

笑う警官 (角川文庫 赤 520-2)
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『目撃』

目撃(Blu-ray Disc)
目撃(Blu-ray Disc)
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ワーナー・ホーム・ビデオ (2010-07-14)
原題:Absolute Power
監督:クリント・イーストウッド
脚本:ウィリアム・ゴールドマン
原作:デイヴィッド・バルダッチ
音楽:レニー・ニーハウス
製作:アメリカ 1997年
★★★★

ルーサー・ホイットニー(クリント・イーストウッド)は腕利きの泥棒である。彼が富豪の留守宅に忍び込み、貴金属や金をバックパックに詰めいざ屋敷から出ようとしたときに、ハイチに出かけたはずの富豪の若い妻と不倫相手の中年の男が、部屋に入ってくる。
彼は逃げ出すことができずに、マジックミラー越しにふたりの情事を見ている。
男はサディスティックになり、それを逃れようとした女がナイフを振りかざしたその時に、女は背後から撃たれて死亡する。
男はアメリカ合衆国大統領(ジーン・ハックマン)、撃ったのはシークレットサービスの男たちだった。
そこに、女性補佐官(ジュディ・デイヴィス)が現れて証拠を隠滅し彼らは立ち去るが、血のついたナイフを置き忘れてしまう。
ナイフを取りに男たちが戻ったときに、ルーサーはナイフを持って逃走していた。

警察の捜査陣は、辻褄が合わない強盗殺人事件にとまどう。一方大統領サイドも独自の手を打つ。
やがて、華麗な盗みの手口からルーサーが容疑者として浮上する。
彼は外国に高飛びするつもりで空港に行くが、テレビに映し出された殺人事件ついての大統領のスピーチに憤りを覚え出国を思い直す。
モラルの欠如した大統領に悪事の報いを受けさせようと画策しはじめる。
ルーサーへの捜査の輪が絞られて行くなか、警察は彼の娘(ローラ・リニー)を囮にして逮捕しようとするが、すんでのところで失敗に終わる。
そして、大統領サイドは娘の口を封ずるために、娘を車ごと崖から突き落とす。
・・・・・・
ルーサーは娘の成長期に、刑務所に入っていて娘と関わることができなかったことに対し、良心の呵責を感じている。
出所したルーサーは娘の前に姿を現すことはほとんどなかったが、折につけ密かに娘をカメラに収め、その写真を自室に飾っていたのだった。
イーストウッドのテーマのひとつである父性性が、本作では明快に描かれている。
結末は痛快。

『ロング・グッドバイ』

ロング・グッドバイ [DVD]
監督:ロバート・アルトマン
原題:The Long Goodbye
製作国:アメリカ 1974年

真夜中に愛猫の餌がなくなり、私立探偵フィリップ・マーロー(エリオット・グールド)がキャットフードを買いに出かけるところから始まる。
資産家の妻を殺した容疑がかけられている友人のテリー(ジム・バウトン)から、空港まで至急送ってくれと頼まれる。
翌朝、テリーの逃亡幇助の容疑で警察に踏み込まれ拘束される。
マーローは警察の尋問をのらりくらりと尋問をかわしていた。
ところが、テリーがメキシコで自殺したとのことで急遽釈放される。

それにしても、マーローは、よくタバコを吸う。
チェーンスモーカーを通り越して、取り憑かれたようにタバコを吸い続ける。

一方、失踪したベストセラー作家ロジャー(スターリング・ヘイドン)を探して連れ戻して欲しいと作家の妻アイリーン(ニーナ・バン・バラント)から依頼される。
病院に監禁されていたロジャーを助け出しアイリーンのもとに届けた。
ロジャーは書くことができず酒浸りになり、医者から借金をしていたのだ。
やがて、マーローはアイリーンがテリーの妻の死について重要な鍵を握っていることを知るのである。
そして、マーローはテリーの自殺の真相を確かめるためメキシコに向う。

レイモンド・チャンドラーのハードボイルド小説の映画化である。
原作では猫は出てこない。
結末は、原作への敬意は微塵もなくズタズタに変えられている。
映画界の反逆児ロバート・アルトマンだからこその成せる技か。

ロング・グッドバイ (Raymond Chandler Collection)
レイモンド・チャンドラー 村上春樹 訳
早川書房
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