ヒューマン

『幸せをつかむ歌』

サンフランシスコの小さなライブハウスで、ロックバンド「リッキー&ザ・フラッシュ」のボーカル兼ギター担当のリッキー(メリル・ストリープ)は、かつて夫と3人の幼い子どもを捨てて、ミュージシャンの道を選んだ。
離婚の後、夫のピートはアフリカ系アメリカ人の女性と結婚し、3人の子どもを育てた。
子どもたちはリッキーを恨んでいる。
リッキーは経済的にどん底の状態で破産を申請している最中。

メリル・ストリープは才能が豊かな役者だと、改めて感じさせる作品である。
ギターの扱い(コードが主だが)が堂にいっていて、歌も上手い。本映画に備えて、ラリー・サルツマンやニール・ヤングらのもとでギターのレッスンを受けたという。
メリルは何をやっても様になるプロ中のプロだ。

幸せをつかむ歌 [DVD]
幸せをつかむ歌
posted with amazlet at 17.04.20
監督:ジョナサン・デミ
脚本:ディアブロ・ゴディ
原題:Ricki and the Flash
アメリカ 2015年 101分
★★★★

インディアナポリスで暮らすピートからリッキーに電話がかかってくる。
娘のジュリー(メイミー・ガマー、メリル・ストリープの実娘)の夫が家を出て行ってしまい、ジュリーが心身ともに参っているので力になって欲しいとのこと。ピートの妻はアルツハイマー病の父親の介護で留守にしている。

なけなしの金をはたいて、リッキーはインディアナポリスに向かった。
豪華な邸宅が立ち並ぶゲート・コミュニティの入り口で、リッキーは身分証明書の提示を求められる。貧乏ロッカーが訪れるようなところではないというわけだ。

ジュリーは、風呂に入らず着替えもせず、食事もまともに摂らないほど落ち込んでいた。
最初は反抗的な態度をとるジュリーだったが、陽気に優しく接するリッキーに次第に心を開いていく。

サンフランシスコに帰ると、相も変わらぬ貧乏暮らしが待っていた。ある日、リッキーは、バンドのギタリスト・グレッグから求婚され、戸惑いながらも承諾した。
そんな折、リッキーのもとに息子の結婚披露パーティーの招待状が届いた。
お金がないリッキーは欠席しようとするが、グレッグが愛用のギターを質に入れて、お金を工面してくれた。

いよいよリッキーがスピーチに立った。リッキーからの新郎新婦へのプレゼントは歌うこと。ステージには「リッキー&ザ・フラッシュ」のメンバーがスタンバイしていた。→人気ブログランキング

『ドライビング Miss デイジー』

ドライビングMissデイジー [DVD]
Driving Miss Daisy
監督:ブルース・ベレスフォード
脚本:アルフレッド・ウーリー
原作:アルフレッド・ウーリー
音楽:ハンス・ジマー
アメリカ  1989年  99分 ★★★★★

高齢の未亡人であるユダヤ系の元教師とアフリカ系運転手のふれあいの25年間を描いたヒューマンドラマ。
舞台で上演され徐々に人気が出ていって映画化された作品であるが、舞台にかけられた頃は「ユダヤ人のバアさんと黒人の話なんか誰も見ないだろう」と陰口を叩かれたという。舞台で運転手を演じたモーガン・フリーマンが、映画でも運転手役を志願した。
本作品は、第62回アカデミー賞の作品賞、主演男優賞、主演女優賞、助演男優賞、脚色賞、美術賞、編集賞でノミネートされ、作品賞、主演女優賞、脚色賞を獲得した。味のある作品。

1948年、ジョージア州アトランタ。
何回も車の事故を起こしたデイジー(ジェシカ・タンディー)は、保険の掛金が高くなりすぎて、息子(ダン・エイクロイド)から運転を禁止される。その代わりに息子はホーク(モーガン・フリーマン)をデイジーの運転手に雇った。

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デイジーの身の回りの世話をする家政婦のアデルは、「神様の命令でもあなたになりたくない」とホークに言う。なにしろ頑固一徹のデイジーは、ホークを受け入れようとしない。
シャンデリアを拭けば余計なことするなと言い、壁に飾られた家族写真を見ていると家庭のことを探るなと言い、花壇を手入れをすれば私の花壇に触れるなと言い、ホークのやることなすことにケチをつける。

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しかしホークも食い下がる。
歩いてマーケットに出かけたデイジーに車で並走し、彼は車に乗るように声をかける。近所の目が気にするデイジーは、渋々車に乗るのだった。

こうしてデイジーとホークは距離を保ちながら信頼関係を築いていく。
デイジーの夫の墓を参ったときに、ホークは文盲であることを告白する。ここでデイジーは読み方を教える。このことをきっかけにふたりには信頼が深まり、ホークは一層献身的にデイジーに仕えるようになる。

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ある朝ホークが家に着くと、デイジーは採点した子供達の宿題がなくなったと、家中を探し回っていた。認知症になったのだ。
やがて、老人施設に送られたデイジーは、ホークのことを認識できる日もできない日もある。それでもときどきホークはデイジーを訪ねるのだった。そんなある日、息子とホークが一緒にホームを訪れると、デイジーが話をしたいのは息子ではなくてホーク。ホークがデイジーにパンプキンパイを食べさせているところで物語は終わる。

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高慢で怒ってばかりいるデイジーを愛らしく思えるのは、ジェシカ・タンディーの人柄の賜物だろうと思う。
シナゴーグが爆破される事件やマーチン・ルーサー・キング主催の朝食会など、実際に起こったことが差し込まれている。ブログランキングへ

『モンテニュー通りのカフェ』

モンテーニュ通りのカフェ [DVD]
Fauteuils d'orchestre
監督:ダニエル・トンプソン
脚本:ダニエル・トンプソン/クリストファー・トンプソン
音楽:ニコラ・ピオヴァーニ
製作国:フランス 2006年 106分

電話がかかってくると、「クソッ誰だ」と思う人と「誰かしら」と心ときめく人がいる。セシル・ド・フランス演じる主人公のジェシカは陽気で前向き、「誰かしら」と思うタイプだ。

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モンテニュー通りはパリで一番輝いている場所。
そこにあるカフェには、シャンゼリゼ劇場のピアノ演奏会、ホテルで行われるオークション、コメディ・デ・シャンゼリゼで行われる芝居、などの関係者が集う。コーヒーを飲み食事をしたり、出前注文がカフェに寄せられる。
そのカフェに雇ってもらおうとジェシカは掛け合い、女は雇わないと断られるものの、押しの一手でなんとか潜り込む。

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第一線を退くかどうかで悩んでいる世界的に有名なピアニスト、チャンスをつかもうと躍起になっている女優、かつて買い集めた美術品をすべて競売にかけようとする妻を亡くした老紳士とその息子、歌手になれなかった劇場の女性管理人。

そうした人たちがくりひろげる悲喜こもごもの人間模様に、ジェシカが絡んでいく。そしてジェシカに関わった者はなにかのかたちで癒されていくのだ。

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シュザンヌ・フロンの遺作となった本作で、主人公ジェシカを愛情たっぷりで育てた祖母役を演じた。彼女も明るく陽気な役柄である。

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【セシル・ド・フランス出演作品】
少年と自転車』(12年)
ヒアアフター』(10年)
シスタースマイル ドミニクの歌』(09年)
ある秘密 ~愛に焦がれて~』(07年)
モンテーニュー通りのカフェ』(06年)
スパニッシュアパートメント』(02年)

『手紙』

手紙 [Blu-ray]
手紙 [Blu-ray]
posted with amazlet at 13.03.12
監督:生野慈朗
脚本:安倍照雄/清水友佳子
原作:東野圭吾 『手紙』
製作国:2006年  日本  121分 ★★★*

身内に犯罪者がいる者に対する世間の冷たさと、這い上がろうとする若者の苦悩の日々を描いた、東野圭吾の同名小説の映画化。
原作は第129回直木賞候補作になった150万部の大ベストセラー小説。

両親を亡くした兄弟は助け合って生きてきた。
弟の大学進学の学資を稼ぎ出そうと兄は必死に働いたが、腰を痛め思い通りに働けなくなってしまう。
どうしょうもなくなった兄は空き巣を企て、人家に忍び込む。帰宅した老婦人に見つかってしまい、誤って殺してしまう。

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そして獄中の兄剛志(玉山鉄二)から弟直貴(山田孝之)のもとに、手紙が月に一通ずつ届くようになる。
直貴は大学進学を諦め働き始め、中学時代からの友人と漫才コンビを組んで、ライブに出たりしている。

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そんな直貴に白石由実子(沢尻エリカ)が思いを寄せるのだが、直貴は心を開くことができない。
ある日、兄が殺人囚であることが会社中に知れ渡り、直貴は会社を辞めざるをえなくなってしまう。彼は、今までに兄のことで仕事を3回辞め、アパートを3回追い出された。
直貴たちの漫才コンビは実力が認められテレビに出るようになるが、ネットの書き込みで兄のことが知れてしまい、番組を降ろされてしまう。

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腐る直貴は、「ケーズデンキ」に就職が決まる。
なぜまた、ケーズデンキなのか。きっとケーズデンキはこの映画の大口スポンサーなのだろう
直貴の働きぶりから将来有望と評価されるが、ここでも兄のことが知れ渡り、人に会わない倉庫係に回されてしまう。

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そんな時、直貴は合コンで知りあった朝美(吹石一恵)と意気投合し、デートする仲となる。しかし、朝美の父親(風間杜夫)は直貴を徹底的に調べ、兄のことを知ってしまう。直貴は娘に近づかないように言い渡されるのだった。

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気落ちした直貴を支えてくれたのは由実子だった。
やがて、彼は由実子の愛を受け入れ、ふたりは結婚し、子供が生まれる。
子供が公園デビューすると、ここでも兄のことで、母子たちは由実子親子を避け公園から姿を消していく。
身内に犯罪者がいることで、すでに何度も惨めな目に遭わされてきた直貴は、ついに兄に離別の手紙を書くのだった。

しかし、由実子は直貴を装い獄中の義兄に手紙を書き続けた。パソコンで書くから字体からバレることはない。
彼女はケーズデンキの会長(杉浦直樹)にも、手紙にしたためていた。それを読んだ会長は直貴に直接会い、彼を励ますのだった。
やがて、公園で由実子親子は、母子の仲間に入れてもらえるようになる。

兄と弟は手紙でつながり、弟は妻の手紙で苦境から這い上がる。タイトルの手紙が、ストーリーの鍵。
大口スポンサーのケーズデンキのイメージがアップするシーンが、ちゃんと用意されていた。→映画(全般) ブログランキングへ

『最高の人生のはじめ方』

最高の人生のはじめ方 [DVD]
The Magic of Belle Isle
監督:ロブ・ライナー
脚本:ガイ・トーマス
音楽:マーク・シェイマン
アメリカ   2012年  108分  ✳︎✳︎✳︎✳︎   日本劇場未公開

妻を亡くした老作家と、3人の娘を持つ離婚したばかりの女性とのあいだに芽生える愛の物語。老作家と、命令に従わないダメ犬、多感な9歳半の娘、挙動不審児とのやり取りが、ストーリに厚みをもたらしている。
ところで、モーガン・フリーマンは『最高の人生/Levty』『最高の人生の見つけ方/The Bucket List』という、邦題に「最高」とつくタイトルの作品に出演している。原題はまったく違う意味なのに、なぜか「最高」になっている。本作も原題は、『The Magic of Belle Isle 』で、「最高」という言葉とはかけ離れている。Belle Isle は、子供たちが筏でたどり着く湖に浮かぶ小島のこと。

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ウエスタン小説で人気を博した老作家モンテ(モーガン・フリーマン)は、6年前に愛する妻に先立たれてから、すっかり創作意欲を失っていた。
そんなモンテを立ち直らせようとする甥の計らいで、夏の間、彼は避暑地で過ごすことになった。彼は、ツアーで家を空けるロックシンガーの愛犬、レトリバー犬のリンゴの世話をすることになっている。モンテは交通事故で、下半身が麻痺し左手が使えず、電動車椅子に乗って移動する。
モンテが五体満足であると、話はかなり違ったものになるだろう。

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彼は隣に越してきたばかりの魅力的なシャーロット(ヴァージニア・マドセン)と三人の娘たちに声をかける。
シャーロットは夫と離婚調停中、娘たちは父親に会いたがっている。長女のヘンリーは、離婚しようとしている母親に反抗的である。
次女のウィローは、夏休みの間にモンテから小説の書き方を教えてもらおうと、全財産の34ドルを払った。
モンテはウィローに自分で考え想像力を身につけることが大事だと教えるのだった。

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有名人のモンテは、地区の住人の葬式に呼ばれ、弔辞を読まされることになる。彼は、挙動不審児の母親から子供に電話をかけてくれるように頼まれ、期待に応える。彼はこういう子供の扱いが上手い。こうして彼は地域に溶け込んでいく。

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末娘フィンの誕生パーティーに、父親は姿を見せなかった。このことで、3人の娘は父親が自分たちから去って行ったことを悟るのだった。
モンテが送った誕生日のプレゼントは、フィンの大好きな象の話。
それを知って、自分だけのモンテと思っていたウィローは、臍を曲げてしまう。

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その物語は、シャーロットがフィンに読んで聞かせることを計算に入れて、モンテのシャーロットに対する思いが書かれたラブレターでもあった。
シャーロットは、自分の思いをピアノで弾いた。

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やがて夏が終わり、惜しまれながらモンテは避暑地をあとにする。
新しい学期が始まり、子供たちは学校に通いだす。
そんなある日、ウエスタン小説の映画化により契約金を手にしたモンテは、シャーロットたちのところに戻ってきた。→人気ブログランキング
心温まる作品。

『ストレイト・ストーリー』

ストレイト・ストーリー リストア版  [DVD]
The Straight Story
監督:デヴィッド・リンチ
脚本:ジョン・ローチ/メアリー・スウィーニー
音楽:アンジェロ・バダラメンティ
アメリカ合衆国  フランス  1999年  111分  ★★★★☆

老人が、小型のトラクターで500キロを旅するロードムービー。日中はトウモロコシ畠に挟まれた道を移動し、夜は満天の星の下で眠る。
現代人の心の闇を難解な作風で描くことで知られるデヴィッド・リンチ監督が、古き良きアメリカへのノスタルジーを描いた作品。
新聞に掲載された実話をもとに作られたという。

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アイオワ州に住むアルヴィン(リチャード・ファーンズワース)は、娘のローズ(シシー・スペイセク)とふたりで暮らす73歳の老人。ある日、ウィスコンシンに住む兄が脳卒中で倒れたと電話で知らされる。兄とはちょっとしたことで仲違いして以来、長い間音信不通になっていた。
ローズは「糖尿病で目が悪く車の運転ができない、ウィスコンシンまでは500kmもある、腰が悪くて倒れたらひとりで起き上がれない、おまけに73歳」と、アルヴィンにウィスコンシン行きを思いとどまらせようとするが、彼は時速8キロのトラクターに荷台をつないで無謀な旅に出発した。

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明るいうちはトラクターを走らせて、夜は野宿をするという旅。
若い頃、フランスでナチスと戦い塹壕で夜を明かしたアルヴィンにとって、トウモロコシ畠での野宿はどうということはない。
アルヴィンは出会う人に、含蓄のある話をして旅をつづける。

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若い娘が、家族に嫌われていると悩みを打ち明ける。アルヴィンは、一本の枯れ木は弱いが三本なら簡単には折れないと、どこかで聞いたような話をして、家族の大切さを説く。

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自転車レースに参加している若者から、「年を取ると最悪なことは?」と訊かれると、「若い頃を思い出すことだ」と皮肉たっぷりに答える。

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道路を横切る鹿に車をぶつけた女性は、ここ7週間の間に13頭の鹿を轢いたと怒り狂う。アルヴィンはその鹿の肉を頂戴して夕食に食べ、角を荷台に飾って旅を続ける。

長い下り坂でブレーキが効かなくなり、あわや転倒しそうになる。トラクターは故障し、周辺の住人の世話になる。
目的地まであと100キロ、旅を始めて1カ月が経っていた。男性が車で送ると申し出るが、アルヴィンは自分でやり遂げたいと断る。

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やがて、ミシシッピー川にかかる橋を超えて、ついにウィスコンシン州に入る。その夜、野宿した墓地に神父が現れ、兄についての近況を知らされる。よく日、これまで禁酒してきたアルヴィンはバーでビールを一杯飲む。

そして、ついに兄の暮らすあばら家にたどり着く。
兄はトラクターを見て「あれに乗って俺に会いにきたのか」と言った。このひとことに、物語のすべてが集約されている。→映画(全般) ブログランキングへ

【ロードムービー】サイト内リンク
星の旅人たち』The Way/10年
リトル・ミス・サンシャイン』Little Miss Sunshine /06年
ヴァイブレータ』Vibrator/03年
モンスター』Monster/03年
ストレイト・ストーリー』The Straight Story/99年
テルマ&ルイーズ』Thelma and Louise/91年
スタンド・バイ・ミー』Stand by Me/86年

『少年と自転車』

少年と自転車 [DVD]
少年と自転車 [DVD]
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Le gamin au vélo
監督:ジャン=ピエール・ダルデンヌ/リュック・ダルデンヌ
脚本:ジャン=ピエール・ダルデンヌ/リュック・ダルデンヌ
製作総指揮:デルフィーヌ・トムソン
製作国:ベルギー フランス イタリア  2011年  87分  ★★★★☆

ベルギーのダルデンヌ兄弟が、日本で開催された少年犯罪のシンポジウムからヒントを得て作ったといわれる作品。
主人公の少年役は、オーディションで100人の中から選ばれたというトマ・ドレ。少年の里親役サマンサは『ヒア アフター』(2010年)のセシル・ドゥ・フランス、少年の父親は『約束の葡萄畑 あるワイン醸造家の物語』 (2009年)のジェレミー・レニエが演じている。
本作品は、カンヌ国際映画祭 審査委員特別グランプリ受賞を受賞している。

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父親がシリルを児童養護施設に預けて行方不明になった。
シリルは父親が自分を捨てるはずがないと信じて、父親を必死に探す。
シリルが学校から抜け出して父親を探しているときに、追ってきた教師に捕まりそうになり女性の後に身を隠した。彼をかばってくれた女性は美容師のサマンサだった。
シリルは、自転車を取り戻してくれたサマンサに、週末だけの里親になってくれるよう願い出る。
こうしてシリルとサマンサの生活が始まる。

少年が唐突に里親になって欲しいと女性に申し出るところは、フランスらしい。週末だけの里親は、フランスならではの柔軟な結婚観や親子関係によるのかもしれない。

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週末だけ里親になったサマンサはシリルの父親の職場を突き止め、ふたりで会いに出かける。父親はレストランの厨房で働いていた。
父親は子供がいると雇い主に嫌がられるので、シリルを置き去りにして姿を消したという。週末には電話をするとシリルに答えた父親だが、サマンサにはもうシリルに会わないという。父親は金を作るためにシリルの大事な自転車も売ったのだ。

麻薬の売人の若い男が、シリルのブルドッグのような性格を買って、強盗の話を持ちかける。シリルは売人の台本どおりにバットを振り回し強盗を働き、金を手にする。そして、分け前の金を持って父親のところに行くが、父親は金を受け取らず、もう来るなとシリルを拒絶するのだった。こうしてシリルは父親から完全に見放されたことを知る。

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必死にシリルの面倒をみるサマンサの変わりように恋人は、自分とシリルのどちらを取るのかとサマンサに迫る。彼女はシリルを取るのだった。

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シリルにとって縛られるよりは自由がいい。しかし、自由を選べばサマンサを裏切ることになる。サマンサはシリルが無謀な行動に走っても見放さなかった。愛情を求めるシリルに、サマンサは母性愛で応えた。
そしてシリルはサマンサに週末だけでなく、本当の里親になってほしいと願う。サマンサは承諾するのだった。

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父親に拒絶されたシリルの張り裂けんばかりの切ない気持ちと、それを包み込むサマンサの母性愛が画面から伝わってくる、心が温まる一本。→映画(全般) ブログランキングへ

【セシル・ド・フランス出演作品】
少年と自転車』(12年)
ヒアアフター』(10年)
シスタースマイル ドミニクの歌』(09年)
ある秘密 ~愛に焦がれて~』(07年)
モンテーニュー通りのカフェ』(06年)
スパニッシュアパートメント』(02年)

『星の旅人たち』

星の旅人たち [DVD]
星の旅人たち [DVD]
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The Way
監督:エミリオ・エステヴェス
脚本:エミリオ・エステヴェス
製作国:アメリカ/スペイン  2010年  128分  ★★★★☆

息子をなくした失意の父親が、キリスト教三大聖地のひとつ、スペイン北西部サンティアゴ・デ・コンポステーラへの巡礼の道すがら、知り合った仲間たちと友好を深めていく。
800キロ、徒歩で数ヶ月に及ぶ道のりの巡礼を、主人公たちとともに味うことができるロードムービー。

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カリフォルニアに住むトム(マーティン・シーン)は還暦を超えた眼科医。
音信がなかった息子が、サンジェゴ巡礼の途中でピレーネ山脈で遭難したとの訃報が届く。
トムは遺体を引き取るためにスペインに向かった。
彼は息子の遺灰をバックパックに詰めて、命を落とした息子の気持ちを理解しようと、周囲が止めるのも聞かずにサンジェゴ巡礼の旅に出かける決意をした。

道すがら、痩せるために参加したオランダ人のヨハン(ヨリック・ヴァン・ヴァーヘニンゲン)、禁煙が目的のカナダ人女性のサラ(デボラ・カーラ・アンガー)、スランプに陥っている旅行ライター・アイルランド人のジャック(ジェームズ・ネスビット)と一緒になる。

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なにしろトムは気分が晴れない。
音信のなかった、うまくいっていなかった息子と、このような形で会わねばならないことを、自身のなかで消化できないでいる。彼は巡礼を始めた理由を聞かれると答えを拒否した。
しかし、ヨストはトムが遺灰を所々で撒いていることを知り、ジャックに話すと、それをジャックはサラに話した。
サラはトムに、かつて夫から暴力を受けていたこと、離婚して娘を手放したことなど、自分の過去を打ち明けた。

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しかし、ある日、ランチでワインを飲んだトムは、自身の秘密が広まったことに腹をたて、鬱積していた怒りが爆発して、3人に悪態をついて警察に拘束されてしまう。
その窮地を救ったのは3人だった。保釈金を肩代わりしてくれたジャックに、トムは旅の目的と息子のことを話し始め、旅行誌に自身のことを書いても構わないと言うのだった。こうして4 人は家族のように親密に結ばれていった。

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ところが、トムのバックパックが遺灰ごと少年に盗まれてしまう。トムたちは必死に追いかけるが、盗んだ少年が逃げ込んだのはジプシー居住区。諦めかけていると、父親に伴われて少年がバックパックを返しにきた。
父親は謝罪の意を表すために親戚のパティーにトムたちを誘ってくれた。
バッグパックは2度災難にあっている。1度目は巡礼の旅を始めた頃、トムが橋の欄干に寄りかかって担いでいたバックパックを降ろそうとしたときに、川に落としてしまったのだ。河原に降りて冷たい川に入り、泳いでバックパックを捕まえた。パックの中身は金で買えるが、遺灰が失われてしまえば、旅の目的が失われてしまう。

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そして、観ている者をあたかも巡礼を達成したようなスピリチュアルな気分にさせてくれるラストシーンが待っている。
監督のエミリオ・エステヴェスは、亡くなった息子のダニエルを演じている。主人公役のマーティン・シーンは監督の実父である。


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『トイレット』

トイレット [DVD]
トイレット [DVD]
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toilet
監督:荻上直子
脚本:荻上直子
製作国:日本/カナダ  2010年 109分  ★★★★☆

もたいまさこ以外は、外国人というキャスティングで言葉はすべて英語という設定が、なんともユニークだ。
荻上直子監督が描く独特のゆるゆる作品。癒されること間違いありません。

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企業の研究所に勤めるレイはロボット型プラモデルにとり憑かれているオタク。
母親が亡くなり、アパートが火事になり、住むところがなくなったレイは、日本からやってきたばーちゃんと、引き籠もりのピアニストの兄モーリーと、生意気な大学生の妹リサと暮らすことになった。
ばーちゃんは、毎朝トイレから出ると深いため息をつく。そのことが、レイは気になって仕方がない。
ばーちゃんを喜ばせようと、レイは寿司を買ってくるのだが、ばーちゃんはさっぱり箸をつけない。

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そんなばーちゃんだが、レイには夜食にビールつきのギョウザライスを作ってくれた。
タバコを吸うばーちゃんに、「タバコは洗練されていない人が吸うものだよ」とレイが言うが、ばーちゃんはお構いなし。何しろ英語がわからない。
モーリーにはミシンの使い方を教えくれた。
リサにはエアギターの世界大会出場のための旅費を、ヘビ皮の財布からポンと出した。

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ある日、レイはばーちゃんは自分たちの本当の祖母なのかと疑い始め、髪の毛をとってDNA鑑定に出した。その結果、全員が他人という結果に愕然とする。
しかし、皆と折り紙を折ったり餃子を作ったりして、言葉は通じなくとも伝わってくるばーちゃんの優しさに、少しずつ家族の絆を深めていくのだった。

レイは、インド人から日本式トイレの素晴らしい教えられる。
その話を聞いて、彼はばーちゃんが望んでいるのはウォシュレットに違いないと閃いた。
ある日、ばーちゃんが入院し、レイはその間にウォシュレットを取り付ける。

ピアノの演奏会、舞台に立ったモーリーは緊張のあまり金縛りにあったようになるが、ばーちゃんが「モーリー」と大声を出して親指を立てると、緊張の糸がほどけたのか見事な演奏を披露した。

そして、ついに、ばーちゃんは亡くなる。
レイはウォシュレットにまたがって、うひょっとなり、その快適さに酔いしれるのだった。

ウォシュレットは、ジャパニーズテクノロジーが世界に誇る偉大なる発明品だ。ばーちゃんは、彼らにとって、痒い所に手が届く日本文化の伝道師だった。
傑作です。

→『世界一のトイレ ウォシュレット開発物語
→『レンタネコ』荻上直子 監督


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『洋菓子店コアンドル』

洋菓子店コアンドル [DVD]
監督:深川栄洋
脚本:いながききよたか/前田こうこ/深川栄洋
製作:ウィルコ
製作総指揮:前田浩子
音楽:平井真美子/主題歌:ももちひろこ「明日、キミと手をつなぐ」
製作国:日本  2011年  115分  ★★★★☆

蒼井優演じる田舎娘の主人公が、無邪気さと強引さで、行き詰まった状況に風穴を開けるというストーリー。
祖母役に佐々木すみ江、謎の老婦人役に加賀まりこ、上司のオーナーシェフに戸田恵子、幻のパテシエに江口洋介、ライバルに江口のりこ、という存在感のある役者を配し、主人公の周りを固めている。

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なつめ(蒼井優)は、人気洋菓子店コアンドールに勤めた幼馴染の恋人に会うため、鹿児島から上京してきたが、恋人はとっくに辞めていた。
行き場所のないなつめは、コアンドールの住み込みのアルバイトとして雇ってくれるように、シェフの依子に懇願する。なつめは、実家がケーキ屋だからケーキ作りは得意だとアピールする。ところが、なつめの作るケーキは、クリスマスに買ってきて家族で食べるような時代遅れのケーキである。

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依子は、鹿児島弁訛りで垢抜けないが、純真でどこか憎めないなつめを雇うことにする。
こうして、なつめのパテシエ修行の日々が始まる。先輩でライバルのまりこ(江口のりこ)とぶつかりながら、なつめは試行錯誤を繰り返し、技術を身につけていく。そんな、なつめのひたむきな生き方に周りの人たちは好感を持つようになっていく。

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依子が、ある名家のディナーのデザートを引き受けたものの、階段から落ちて右腕を骨折をしてしまう。
このままではキャンセルしなければならない。どうにかしようと思い立ったなつめは、ある事件をきっかけにケーキ作りをいっさい止めてしまった幻のパテシエ十村にしつこく食い下がり、デザート作りを承諾させようとするのだった。

こうと思ったらあとに引かない、周りが何とかしてやらなくてはと思わせる健気な性格のなつめ役は、蒼井優がぴったり。朴訥でまっすぐな生き方を貫く田舎娘を演じさせたら、蒼井優がピカイチ。『フラガール』で証明済みだ。


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