短篇

『彼女がエスパーだったころ』宮内悠介

擬似科学を容易に受け入れてしまう人間社会の危うさがテーマ。事件を追いかけるジャーナリストの「わたし」が俯瞰的視点で語る。
著者の多岐にわたる豊富な知識、奔放な発想力、そして卓絶な表現力に脱帽である。

彼女がエスパーだったころ
宮内悠介
講談社
2016年4月

「百匹目の火神」The Biakiston Line
火を使うことを人から教えられたニホンザルの能力が、猿たちの間に広がっていき、猿による放火事件が起きた。空き巣のあと、火をつけたのだ。
猿たちは日本各地で集団放火事件を起こす。共時性の願いが伝播した現象と説明された。
人々は猿を殺傷したが、ニホンザルは天然記念物である。法律が障害となり対策は後手に回った。ある日、雨が止むように猿の放火が終焉する。
「彼女がエスパーだったころ」The Discoveries of Witchcraft
スプーン曲げで有名になった千晴は、大学の物理学教授と結婚した。
ところが、千晴の不在時に夫が非常階段で足を滑らして転落死した。超能力者とされた千晴に疑いがかかり、魔女狩りの事態にまで発展する。
「ムイシュキンの脳髄」The Seat of Violence
バンドのリードボーカルの網岡はなにかにつけ逆上した。
同棲相手で、同じバンドのベース担当のかなえは、網岡に対するオーギトミーに反対した。手術後、天使のように変わってしまった網岡に、かなえは違和感を感じた。
そして、網岡はかなえと別れ郷里に引退した。
オーギトミーの普及に努める医師を批判するフリージャーナリストが殺害される。
「水神計画」Solaris of Words
放射能汚染水に「ありがとう」と声をかければ浄化される話。
「薄ければ薄いほど」Remedy for the Remedy
ごくごく薄めてしまえば毒も薬になるというホメオパシーの疑似科学性が暴露される。
「沸点」The Budding Point
世の中を変えるには、一部の人たちが変わればいい。ある人数の人々が変われば、それが転換点(ティッピング・ポイント)となって、世の中は変わるという。

彼女がエスパーだったころ/講談社/2016年4月
アメリカ最後の実験/新潮社/2016年1月

『嵐のピクニック』本谷有希子

ブラックで可愛らしく、予想をはるかに超える展開の11の短編集、大江健三郎賞受賞作(第7回、2013年)。賞には賞金はなく、ご褒美は英語や独語への翻訳出版だそうだ。それにしても、著者の文体をまねた大江健三郎の解説文はどうしたんだろう、浮いちゃっている。

『アウトサイド』 いくつかのピアノ教室へ通ったものの、バイエルすら終わっていない私に、新しいピアノ教師は優しく教えてくれた。その甲斐あってめきめき上達したが、ピアノ教師の狂気によって一変する。

嵐のピクニック (講談社文庫)
嵐のピクニック
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本谷 有希子
講談社文庫
2015年5月 ✴︎✴︎✴︎✴︎✴︎

『私は名前で呼んでいる』会議中にカーテンの膨らみが気になり出しから始末が悪い、会議そっちのけで目がカーテンにいく。部下のプレゼンアド耳に入らない。
『パプリカ次郎』市場で野菜を売っているパプリカ次郎の屋台を吹き飛ばし、銃声が響かせて何人かの人がいく。そのあと市場の人々が後片づけをすることの繰り返し。 『人間袋とじ』足の指をしもやけを利用してくっつける話。
『哀しみのウェイトトレイニー』オーガニックストアでレジ打ちをしている妻が、夫が見ていたテレビに映るボクサーの肉体を見て、一念発起、筋トレジムに通うようになり、 筋肉ムキムキになっていく。
『マゴッチギャオの夜、いつも通り』サル山に入れられたチンパンジーがサルたちの洗礼を受ける。見守る若いサル・マゴッチギャオとの交流を描く。
『亡霊病』入賞したコンクールの授賞式でスピーチの順番が回ってくると、亡霊病の発作が迫ってる。
『タイフーン』 バス停で母と僕と汚い服を着たおじさんは、嵐の中傘をさして交差点で信号待ちしている男の人を見ている。人々は次々に傘で空に舞い上がっていった。
『Q&A』 創刊からの連載Q&Aのコーナーが終わることになり、最後の13の質問に答える。
『彼女たち』 恋人と決闘することになり彼女に連れられて河原にやってくると、同じ事情の男女が続々現れた。
『How to burden the girl』 高い塀に囲まれた家に住んでいた女は5人の弟と親父さんを悪の手下に殺されたが。。
『ダウンズ&アップス』 売れっ子デザイナーは対等の口をきく若者が気に入って雇った。やがて、デザイナーは気持ちのいいお世辞を聞いていないことに気がついた。対等な話をする若者にイラつくようになった。
『いかにして私がピクニックシートを見るたびに、くすりとしてしまうようになったか』 試着室に入った客が店の服をすべて試着しても試着室から出てこない。翌日に持ち越し試着室ごと建物の外に出たのだが。。

→『嵐のピクニック』
→『異類婚姻譚』2016.01.26

『大いなる不満』セス・フリード

それぞれが、意表を突く設定だから、つじつまが合わなくなりはしないかと不安を抱かせるが、気づけばずるずると著者ならではの世界に引きづり込まれている。そして最後に宙ぶらりんのままに放り出されたりする。

大いなる不満 (新潮クレスト・ブックス)
大いなる不満
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セス・フリード(藤井 光訳)
新潮社
2014年5月 ★★★★★

「ロウカ発見」発見されたミイラをめぐり、研究室内の人間関係は奇妙に変化する。
「フロスト・マウンテン・ピクニックの虐殺」数多くの死者を出すピクニックが毎年繰り返される。
「ハーレムでの生活」王と多数の美女がいるハーレムに暮らす醜い男の話。
「格子縞の僕たち」火山口に投げ入れられるカプセルにサルを入れるのが仕事。
「征服者の惨めさ」スペインの南米侵略、征服者の悲哀を描く。
「大いなる不満」エデンの園で、猫がオウムをライオンがクジャクや子羊が本能をあらわにできないでいる。
「包囲戦」悲惨さがエスカレートしていく包囲戦を描く。
「フランス人」20年前、中1の劇で演じたフランス人役が新聞に載ったこと。
「諦めて死ぬ」親族が事故で次々死んでいく青年の話。
「筆写僧の嘆き」古英語詩のでたらめ極まりない写本を、くり返す僧たち。
「微生物集」ー若き科学者のための新種生物案内 微生物に見える存在の強引さと情けなさ。→人気ブログランキングへ

『フィッターXの異常な愛情』蛭田亜紗子

タイトルから偏執的な内容を想像しそうだけれど、まったく違う。
起承転結にビシリとはまった連作短編の恋愛コメディである。

広告代理店に勤める32歳の独身OL國枝颯子(さつこ)は会社に向かう交差点の真ん中でノーブラに気づいた。今日会うクライアントは手強い。ブラジャーをしていないことを見破られて、だらしないと烙印を押され破談になるかもしれない。
目に入ったランジェリーショップに入った。

フィッターXの異常な愛情
蛭田 亜紗子(Hiruta Asako)
小学館
2015年4月 ★★★★

応対したのが、まさかの男のフィッター伊佐次耀。
伊佐次は颯子の高校卒業以来の不摂生な生活をズバズバと言い当てた。
そして勧められるブラジャーを着け商談にむかった。
今までなら難敵クライアントに嫌味を言われっぱなしだったが、颯子は自説をまくし立てた。それが功を奏して商談成立。
その後も伊佐次の勧める下着を身につけ、仕事も人生も良い方向にいくかと思われたが。。

『モダン The Modern』原田マハ

MoMA(ニューヨーク現代美術館)に関わる人物を主人公にした5つの短編集。
キュレーターでもある著者のアートに対する造詣の深さが、各作品に滲み出ている。

モダン
モダン
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原田 マハ
文藝春秋
2015年4月 ★★★★☆

『中断された展覧会の記憶』
MoMAの理事会は、東日本大震災の原発事故の後、ふくしま近代美術館に展示されている『クリスチーナの世界』の引き上げを決定する。杏子ハワードは「作品にはなんの損傷はない」と報告が届いているにもかかわらず引き上げるのは、放射能に対する偏見に他ならないと思った。杏子は福島に向かう。

『ロックフェラー・ギャラリーの幽霊』
監視員のスコットが注意を払っているのは作品ではなく、作品を見ている人(ヴィジター)たちである。作品に悪さをしないかと見張るのが仕事である。そして、若い男のヴィジターから声をかけられる。

『私の好きなマシン』
ジュリアン・トンプソンは8歳のときに、MoMAで開かれたマシンアート展で展示されていたベアリングが大好きになった。人目につかずに役に立っていて美しいものに惹かれるようになり、工業デザイナーの職に就いた。
あるとき、後に世界で爆発的に出回るパーソナルコンピュータのデザインを依頼された。

『新しい出口』
親友でライバルの同僚を、WTC(ワールドトレードセンター)にデリバリーを頼んだばっかりに、死なせてしまった。それからアシスタント・キュレーターのローラはPTSDになった。
ローラは、自らと亡くなった友人が深く関わった「ピカソ・マチス展」を閲覧することで、新しい出口を見つける。

『あえてよかった』
日本からMoMAに1年間の研修にきている森川麻実はつい謝ってしまう。28歳のシングルマザー・パティに、その癖を指摘された。
デザインストアのショーウインドウに飾られた箸が交差してに並べられていることに違和感があるとパティに伝えたが、理解してもらえたかどうか。→ブログランキングへ

→【2013.10.04】『キュレーション 知と感性を揺さぶる力』長谷川祐子(集英社新書)

『満願』米澤穂信

本書は、『2015年度版 このミステリーがすごい!』国内編第1位に輝いた。第27回山本周五郎賞を受賞している。
警察物、フーダニット、ホラー風、因果応報物、藪蛇物、倒叙物というバライティーに富んだ6篇が収録されている珠玉の短編集。
構成もマクガフィンの使い方も実に上手い。

満願
満願
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米澤穂信
新潮社
2014年3月

「夜警」
警官に向かないと思っていた後輩警官が殉死した。警官は妻のノドに刃物を当てた嫉妬深い夫に発砲したが、切りつけられ致命傷を負った。葬式のあと、警官の兄から弟の性格について知らされ、発砲した理由を推察する。
「死人宿」
勤務先のパワハラによって佐和子は退職し姿を消した。2年後、主人公は佐和子に会いに行く。佐和子は自殺者が訪れる死人宿として有名な温泉宿で仲居として働いていた。風呂の脱衣場で遺書を発見した佐和子は主人公の協力を仰ぎ、遺書の主を調べはじめる。
「柘榴」
美しい母と仕事せず家にほとんど寄り付かない駄目な父が離婚することになる。二人の娘の親権をめぐり調停となる。
「万灯」
商社マンの主人公はバングラデシュでの天然ガス採掘の交渉に奥地に向かう。権利を得るためには殺人も辞さない。
「関守」
山道のカーブでいくつもの車転落事故が起こる。主人公は山道に面したさびれたドライブインの老女店主に事故について取材する。そしてどんでん返しが。
「満願」
畳屋は仕事が次第になくなり借金を重ねる。畳屋の妻は夫の借金を盾に関係を迫る金融業者を包丁で刺し殺した。学生として畳屋の2階に下宿していた主人公は弁護士となり妻の弁護を引き受けるが、実刑となってしまう。そして出所をむかえた。→ブログランキングへ

『氷平線』桜木紫乃

オール讀物新人賞(2002年)を受賞した「雪虫」ほか5篇。
道東の厳しい気候のなかで、男女が織りなすねじた関係と、錯綜するまわりを描いている。
この後、著者が取り上げるテーマが本書に網羅されている。

氷平線 (文春文庫)
氷平線 (文春文庫)
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桜木紫乃
2012年4月(単行本2007年)

「雪虫」
達郎は両親が勧めるフィリピン女性を妻に向かえ酪農を継いだ。達郎は婿をとった高校の同級生の四季子と寄りを戻した。四季ちゃんは、ひとの奥さんなんだからねと母親に釘を刺されても、龍郎は止ようとは思わない。
「霧繭」
真紀は和裁師として土地の呉服問屋の仕事を請け負うようになった。真紀はかつて問屋の専務と深い仲だった。専務と関係があった問屋の女将との微妙な立場となる。
「夏の稜線」
東京育ちの京子は酪農の研修先に嫁いだ。娘が生まれると姑の態度が一変した。姑から嫌味を言われない日はない。優しい夫から息子に変貌した夫には愛情が失せた。よそ者扱いされる京子は妬みと噂と中傷が飛び交う狭い世界で窒息しそうになる。
「海に帰る」
親方から床屋を引き継いだ男と水商売女との愛。
「水の棺」
女性歯科医は上司と別れて僻地の診療所に転職する。数年後、診療所は村人たちの全幅の信頼を得るようになる。一方、上司の評判は地に落ちていた。
「氷平線」
誠一郎は理不尽な父親から逃れるために、猛勉強をして東大に入り、財務省に入省する。税務署長として故郷に錦を飾り、房子と再開し深い関係になるが。

ホテルローヤル/桜木紫乃/集英社/2013年
氷平線/桜木紫乃/文春文庫/2012年
硝子の葦/桜木紫乃/新潮社/2010年

『昨夜のカレー、明日のパン』木皿 泉

出だしの3話までは押さえ気味の展開で、4話の『虎尾』からギヤがワンランク上に入り、「さすが本屋大賞2位」と思わせる。それぞれが一つの話として帰結していて、さらに互いにリンクし合ってひとつの物語になっている。
人生訓のような文章が、ところどころに出てきて、なるほどとうなづかせる。

昨夜のカレー、明日のパン
木皿 泉 (Kizara Izumi
河出書房新社
2013年4月 ★★★★

7年前に夫・一樹を亡くした28歳のテツコと一緒に暮らす天気予報士のギフ(義父)の、ふたりが主人公である。そのふたりの暮らしぶりを描き、隣の引きこもりの女性を描いたのが、第1話の『ムムム』。
引きこもりになってしまったキャビンアテンダントが脱却する話『パワースポット』。テツコがギフに紹介した山ガールとギフが登山にいった話『山ガール』。一樹の3歳年下の従兄弟・虎尾の恋の話『虎尾』。懐が深いんだか抜けているんだか、テツコに求婚した岩田が、詐欺にあった話『魔法のカード』。ギフと妻・夕子の話『夕子』。岩田が同居するギフとテツコの関係を理解する『男子会』。最後の『一樹』は一樹と捨て犬を拾った少女の話で、『昨夜のカレー、明日のパン』がタイトルとなった理由が明かされる。

なぜテツコはギフの家から出ていかないのか、テツコに出ていって欲しくないとギフが考えるのはいいとして、なぜテツコにプロポーズした岩田までもがテツコとギフの関係を崩さない方がいいと考えるのか、そうした人間関係のあやが巧みに描かれている。→ブログランキングへ

『女のいない男たち』村上春樹

まえがきには本書を出版するにいたる経緯が書かれている。
『ドライブ・マイ・カー』は、タバコの吸殻ポイ捨ての箇所に北海道の地元の議員からクレームがついて、マスコミで話題になった作品である。書き直されている。『イエスタデイ』は、関西弁の歌詞についてビートルズの著作権代理人からやはりクレームがきて、著者としては言い分もあるが、書き換えたという。
『イエスタディ』には『フラニーとズーイ』の関西弁訳の話が出てくる。少し脱線するけれど、著者と柴田元幸の対談集『翻訳夜話2 サリンジャー戦記』(文春新書 2003年)で、フラニーとズーイの会話を関西弁訳をしてみたいと著者が語っている。「……それから『フラニーとズーイ』の関西語訳をやってみたいというのは、前々からちらちら考えています(笑)。……」川上未映子のエッセイ集『そら頭はでかいです、世界がすこんと入ります 』にも「フラニーとズーイの喧嘩を大阪弁に置き換えて読んでいくと、……生き生きするよね」という件がある。実際の関西弁訳が一部試みられていて、なんともいい具合に会話が転がっているのだ。
本書の中で唯一の書下ろしである『女のいない男たち』は、アーネスト・ヘミングウェイの同じタイトルの短編集へのオマージュのような、あるいはインスパイヤーされて書いた作品である。
すでに指摘されていることかもしれないが、著者はミソジニーの視点が過剰である。男女の歪んだ関係を書けば、おのずとミソジニーが強く出るのかもしれないが、過剰であると思う。
それにしても、まえおきはところどころ括弧つきの念には念をいれたエクスキューズだ。

女のいない男たち
女のいない男たち
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村上春樹(Murakami Haruki
文藝春秋
2014年4月 ★★★★

『ドライブ・マイ・カー』
舞台俳優の男は運転手として雇った若い女に、亡くなった妻の浮気の話をする。女から浮気相手の男は大した男ではないといわれ、それが自分にも跳ね返ってくることに男はたじろぐ。

『イエスタデイ』
阪神タイガーズファンが嵩じて、東京出身なのに完璧な関西弁をしゃべる友人から、幼馴染みの自分の恋人とデートしてくれるように主人公は頼まれる。「文化交流みたいなかんじで」と、そんな変わった友人に言われて。そして16年が過ぎて、主人公は女と再会し友人の消息を知る。

『独立器官』
中年の独身の美容外科医は複数の女性とほとんどトラブルなくスマートに付き合って人生を謳歌してきた。ところが、どうしとことか男は恋に落ちてしまう。年下の人妻に入れあげ、恋煩いで食欲がなくなり痩せていく。独立器官とは、主人公が考える女性に具わっている器官のこと。

『シェエラザード』
隔離された男のもとに、世話係の女が日用品や食料品を買ってやってくる。女は男と交わったあとに毎回不思議な話をする、千夜一夜物語のシェエラザードのように。女は17歳のときに片思いの同級生の家に空き巣に入った話をする。続きは次の訪問のときといって、女は話を止めた。男は女がもう来なくなるのではないかと不安になる。

『木野』
妻に裏切られた木野は苗字と同じ店名のバーを開く。客がポツポツ来るようになり、ウィスキーを飲み本を読む男が常連になる。そんなある日、常連の男が木野に店を閉じて、店に近づかないようにと言う。木野は事情が飲み込めないまま、抜き差しならぬことが起こったと察し旅に出る。

『女のいない男たち』
真夜中に、男から電話がかかりその男の妻が自殺したと知らされる。女は主人公はかつての恋人だった。男は彼女が死んだと聞かされたことで、人生から付き合っていた頃が根こそぎ消えてしまったような気がしている。→ブログランキングへ

『ランチのアッコちゃん』柚木麻子

ランチのアッコちゃん
柚木麻子(Yuzuki Asako
双葉社
2013年4月 ★★★*

2014年度の本屋大賞ノミネート作品。本屋大賞は軽めの内容の印象だが、その通り。
4話の短編で構成され、2話がアッコ部長にまつわる連作。アッコ部長の明るく前向きな生き方が、苦境にたつ三智子を救う。ほか2篇とともに、独身OLの救済あるいは再生の物語。

『ランチのアッコちゃん』
派遣社員の三智子は、ひょんなことから手作り弁当と引き換えに、1週間、上司のアッコ部長が指示する店でランチを食べることになる。三智子は付き合っていた男に振られたばかりであり、正社員と派遣社員の狭間で悩んでいた。この交換は、三智子に気分転換を促そうとするアッコ部長の思いやりであった。

『夜食のアッコちゃん』
2話は、会社が潰れ、屋台のポトフ屋に転職したアッコ元部長に偶然出会った三智子は、夜のポトフ売りに、またもや1週間挑戦する。アッコ元部長のバイタリティ溢れる生き方に人生を学んでいくという話。

『夜の大捜査先生』
野百合は女子高生時代に不良少女で担任を手こずらせた。30歳になった野百合は、目の前で不良女子高生が逃げまわる場面に遭遇する。追っているのはかつての担任。野百合と元担任は女子高生を追いかける。野百合はその女子高生にかつての自分を重ね合わせるのだった。

『ゆとりのビアガーデン』
明るい体育会系のノリの玲実は間違いが多すぎて「使えない社員」。入社3か月で豊田の経営する会社を辞職した。その玲実が起業し豊田の会社があるビルの屋上でビアガーデンを始めるという。失敗を恐れない前向きな玲実に見習い、豊田は自らの会社のあり方を見直すことにした。

帯で、朝井リョウは本書がいずれ映画かドラマの原作になると踏んでいる。→ブログランキン