ショート・カッツ
ショート・カッツ 映画公開のあとに出版されたペーパーバック(1994年) |
レイモンド・カーヴァーの作品をもとに描いたオムニバス映画 監督:ロバート・アルトマン アメリカ 1993年 187分 |
---|
「隣人」(Neighbors『頼むから静かにしてくれ』より)
夫婦には、隣に住む夫婦が自分たちよりも充実した輝かしい生活を送っているように思えた。隣の夫婦が旅行に出かけるので、家の鍵を渡され猫の世話と芝生の水撒きを頼まれた。他人の家庭生活の現場を目の当たりにすると性的に興奮するのか、夫は妻を求める。夫は隣の家の戸棚を開けたり、ウィスキーを飲んだり、夫の服を着たり、その妻の下着を身につけたりしていた。
妻が猫に餌をやりに家に入り、引き出しの写真をまじまじと見てる。そして、妻は鍵を燐家のなかに置き忘れたまま扉を閉めてしまう。
「そいつらはお前の亭主じゃない /ダイエット騒動」(They're Not Your Husband『頼むから静かにしてくれ』より)
男は、妻がウェートレスとして働いている24時間営業のコーヒーショップに寄ってみた。ふたりの男が妻の後ろ姿を見て太りすぎだと言っている。帰えってきた妻に痩せたらどうかと提案してみた。妻は4キロ減らした。急に痩せたのはどこか悪いのじゃないかと言われたと妻が言う。そいつらはお前の亭主じゃないんだ、余計なことをいうなと男はいう。
ある夜、妻の働くコーヒーショップにより、別のウェートレスにもう一人のウェートレスな感じが変わったと男はいう。隣の男にどう思うと妻のことを尋ねる。そのうちに別のウェートレスが、あの男は変だと言い出す。妻は亭主なのと明かす。
「ビタミン」(Vitamins『大聖堂』より)
同棲している女の仕事上の部下を首尾よくデートに連れ出した。バーでいいムードなところに、ベトナム帰りの酔った黒人が現れて金をちらつかせて執拗に連れの女に言い寄る。
すんでのところで逃れて車に戻ると、仕事がうまくいってない女は「お金が欲しくてたまらなかった」と言って泣く。そうなったら手を握る気にもなれず、相手が心臓麻痺になっても構いやしないという気分になって別れた。帰ると、同棲相手の女が愚痴を並べる。うんざりしながら、なんとかなだめて、やっと眠りにつく。
「頼むから静かにしてくれ」(Will You Please Be Quiet, Please?『頼むから静かにしてくれ』より)
ふたりは大学の同級生でふたりとも教師の職を得、それまでは、順風満帆といっていい暮らしだった。
2年前のパーティーのときだ。妻が男と消えた。
夫はそのことについてそのあと何度も問い詰めた。怒らないから本当に、あの夜何があったのか言ってくれと。
本当のことを話したら、破局がくることを妻は感じている。
「足もとに流れる深い川」(『愛について語るときに我々の語ること』)
夫と友人ふたりは、釣りに出かけた。そこで若い娘の全裸死体を発見したものの、引き返すことなくテントを張り2日間そこで釣りをしたりポーカーをしたりウィスキーを飲んだりして過ごした。
3人は事情聴取を受ける。それ以来夫は不機嫌のままだ。
私は葬式に出る。そこで犯人が捕まったことを知らされる。この町の子どもだという。
家に帰ると夫がウィスキーを飲んでいた。息子はまだ帰ってきていない。ふたりは息子が帰ってくるまでの間に急いでことを済ませることで意見が一致する。
「何か役に立つこと」 (A Small, Good Thing『大聖堂』より)
母親は息子の誕生日の前日に、愛想の悪いパン屋でバースデイケーキを予約した。翌朝登校時に息子は車にはねられ、そのまま一人で帰宅したものの、事故の状況を話しているうちに力が抜け眠ってしまった。救急車で病院に連れてきてそのまま入院した。夫に連絡し、夫が病院に駆けつける。医者はショックで目を覚まさないだけだという。息子は眠り続けたまま、夫が家に帰ると意味不明の電話がかかる。
病院に戻るとスキャンが必要だと医師がいう。こうしているうちに子どもは息を引き取る。
パン屋から電話がかかってきた。
母親にはパン屋が悪党に思えた。予約から3日経って、パン屋に行き事情を説明すると、パン屋は出来立てのシナモンロールを出してくれた。
「ジェリーとモリーとサム /犬を捨てる」(Jerry and Molly and Sam『頼むから静かにしてくれ』より)
勤めている会社がレイオフを発表する前に、月200ドルの家賃の家を借りてしまった。
男は浮気をしていた。彼はすべてこのとについて自分でコントロールする力を失いつつあった。
犬を捨てなければならない。小便は垂れるし、そこら中を噛む。秩序を取り戻すためには、犬をこの家から追い出さなければならない。
「収集」(Collectors『頼むから静かにしてくれ』より)
雨の降る日、前に住んでいた夫人がアンケートに答えて、懸賞に当選したので景品を届けにきたと男が訪ねてきた。男は家に強引に入ってきて、バッグを開けその景品を組み立て始めた。なんのかんのと言いながら、帰った方がいいのではないかという忠告を無視して、出来上がったのは真空掃除機。そして、吸塵の性能を証明するかのように、掃除を始める。カーペットに液体を撒き散らし吸引する。
1ドルも払えない、金がないと男に伝えた頃には、掃除機をバッグの中にしまいこんでいた。男は、この掃除機は要りませんかという。
「出かけるって女たちに言ってくるよ」(Tell the Women We're Going『愛について語るときに我々の語ること』より)
ビルとジェリーは子供の頃からの無二の親友だった。ジェリーは高校を中退してスーパーマーケットに勤めた。ビルは卒業後、工場に勤め州軍に入った。ビルは22歳の時に結婚した。ビルとジェリーは
休日になるとホッとドッグを焼き、子供達を簡易プールで遊ばせビールを飲んだ。ジェリーは「出かけると女たちにいってくるよ」と言って玉突きに二人で出た。娯楽センターにつき、ビールを飲んで玉突きをした。
帰りに自転車に乗っている二人の娘を見かけ、ジェリーは声をかける。はじめは相手にされないがそのうちに名前を聞き出す。自転車を降りて小山を登り始めた。ジェリーとビルは追いかけるように娘に近づく。
ジェリーの姿が消え、石で片をつけた。
「レモネード」(Lemonade)
散文のような詩。
ジム・シアーズは本棚を作るために壁のサイズを測りにきた。半年ばかり経って本棚が届けられ、設置されたあとで、ジムの代役で父親のハワードがうちのペンキを塗りにきた。ジムは息子を川で亡くし、そのことで自分を責めていて、立ち直れないでいる。レモネードを入れた魔法瓶を車まで取りに行かせなければよかったと、何百回となく何千回となく口にした。息子の死体はヘリコプターに吊り上げられ、だらんと両手を広げて水滴を周りに飛び散らせていた。子供は父親の前に運ばれ、優しくそっと置かれた。→人気ブログランキング
→ にほんブログ村
象/レイモンド・カーヴァー/中央公論新社/2008年
大聖堂/レイモンド・カーヴァー/中央公論新社 2007年
頼むから静かにしてくれ〈1〉/レイモンド カーヴァー/中央公論新社/2006年
短編小説のアメリカ 52講 こんなにおもしろいアメリカン・ショート・ストーリーズ秘史/青山 南/平凡社ライブラリー/2006年