ファンタジー

2022年10月29日 (土)

風と行く者 守り人外伝 上橋菜穂子

バルサは旅芸人の一団サダン・タラム(風の楽人)の用心棒(護衛士)を引き受けた。
いま、サダン・タラムを率いているのはエオナである。かつてはエオナの母親サリが率いていた。20年前、バルサが16歳のときに、バルサは養父ジグロとともにサリが率いるサダン・タラムの用心棒を引き受けたことがあった。ジグロに用心棒家業のすべてを仕込まれている頃のことだ。 その頃のことは、短篇「十五の我には」(『炎路を行く者: 守り人作品集』/新潮文庫/2017年に収録)にも、書かれている。
Photo_20221029182701風と行く者 守り人外伝
上橋菜穂子
新潮文庫
2022年8月 467頁

ロタ王国のラクル地方にはターサ氏族のアール家とロタ氏族のマグア家の間で、古来、争いが絶えなかった。そんな、反目する氏族がともに女神に感謝する「ハンマの星祭り」では、両氏族の若者に一夜限りの恋が許された。そして「ハンマの星祭り」で、両氏族の間にできた子どもは〈楽しみの子〉と呼ばれ、それがサダン・タラムの祖先である。サダン・タラムは両氏族間の抗争で命を落とした人々のもとを訪れ、鎮魂の歌や舞を披露することを生業としてきた。

数百年前、氏族間の争いを終結させようとマグア領にひとりで乗り込んだアール家の当主ラガロは、マグア領内で謎の死を遂げた。しかし、その後は表だった争いは影を潜めていた。

ロタでは祭儀場の建て替えに高価なマハラン材を使うという。ターサ氏族の名門アール家がマハランの木が生えている森林地帯を所有している。アール家は貧しいが気位が高く、ターサ氏族の育てた神聖な木をロタ氏族に使わせるなどとんでもないという態度だった。ところがアール家の長男がロタのマグア家の娘オリアに恋をして結婚にこぎつけたことで、祭儀場の建て替えが行われたのである。

第2章では、20年前、ジグロとバルサがサダン・タラムの護衛士として雇われたときの話が回顧される。サダン・タラムの頭サリの命が狙われるが、その理由はわからない。バルサが斥候に出て、襲われそうな場所を特定した。ジグロが囮になってバルサが3人の射手を弓で狙うということになった。その作戦は見事に成功し、サダン・タラム一行はアール家にたどり着いた。斥候の情報集めの正確さ、射手を向かえうつバルサの身の置き方の絶妙さをジグロは褒める。そして、護衛士の役目が終わると、ジグロは情を交わす関係になったサリと、縁を切って姿を消した。

現在、バルサが護衛するサダム・タラムは病に臥すサリの代わりに、娘のエオナが率いている。サダム・タラムはアール領にあるエウロカ・ターン(森の王の谷間)に向かっている。エウロカ・ターンにはサダム・タラムの頭と領主しか足を踏み入れることがない禁域である。そこには、何か重要な秘密が隠されているに違いない。またしてもサダム・タラムの頭エオナの命が狙われるのである。

アール家の若き女当主ルミナの母親オリアは何かを隠したまま、最近、夫とともに事故で亡くなった。20年前に、バルサはオリアやサリやジグロとともに、エウロカ・ターンに入ってオリアたちの行動の一部を目撃していたのである。

もう少しでアール家に着くというときに2人の射手に襲われた。バルサは相手の血飛沫を浴びながら2人を殺した。ジグロの教えはバルサの身に染み込んでいるのだ。
そして数百年来の謎の全貌が明らかにされる。
本書は二世代に渡る物語である。人が年老いて死ぬ。そして次の世代に引き継がれていく。それは連綿と繋がっていくことだ。そうした時代の移り変わりのなかに物語が描かれている。→人気ブログランキング
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2020年4月 9日 (木)

暇なんかないわ 大切なことを考えるのに忙しくて ル=グウィン

双方向性というブログの機能に抵抗があってそれまでブログを書くことを敬遠してきたが、ジョゼ・サラマーゴ(ポルトガルのノーベル賞作家)のブログを読んで、81歳のときにブログをやってみようという気になったという。本書はそのブログを書籍化したもの。年齢を感じさせない分析力、さらに年齢を重ねたからこそ導き出せる説得力のある言葉がつづらている。
本書のタイトルは、母校のハーバード大学から卒業生に送られてきたアンケート用紙の質問のひとつ「余暇には何をしているか?」に答えたもの。筆者はファンタジー作品『ゲド戦記』や『所有せざる人々』『闇の左手』といったSF作品のほか、思慮深い考察に基づいた評論やエッセイを数多く書いている。
Photo_20200409162601 暇なんかないわ 大切なことを考えるのに忙しくて
アーシュラ・K・ル=グウィン/谷垣暁美
河出書房新社
2020年

本書は四部に分かれている。
第一部のタイトルは「80歳を過ぎること」
この章は、年寄りになった人(著者によれば70代80代の人、生きているだけで上等な人びと)あるいはその予備軍の人びとに、共感できる内容になっている。
アメリカでとても栄えているポジティブ・シンキングを信用しないという。年寄りになったら、若者にはできない年寄りをやらなくてはならないという。
オスの愛猫パードとの生活について多くのページが割かれていて、著者の目と猫の目線から人間と猫の関係を語る。

第二部「文学の問題」では、アメリカ人は「シット」や「ファック」という言葉を使わずに生活できないものかということを、「ウッジュー・プリーズ・ファッキング・ストップ?」で触れる。「ファッキング」「シット」の罵り言葉が子供の頃に比べ、徐々に活字になり頻回に使われるようになってきた。そしてそれらを頻回に使うあまり、その2語がなければ話すことも書くこともできなくなってきていることは不思議なことだ。「シット」は言葉の響きに頻回に使う秘密がありそうだが、「ファック」という言葉には支配、虐待、軽蔑、憎悪の響きが強くあるという。アメリカ人はなぜこうも汚い言葉を日常的に使うのだろうと、つねづね思っていたが原因解明にはいたってない。
「TGANとTWON」は、タイトルに言葉遊びの感があるが、ザ・クレート・アメリカン・ノベル(TGAN)は何かといえば、『ハックルベリー・フィンの冒険』であり、『怒りの葡萄(TGOW)』を挙げる。

第三部 のタイトルは「世の中を理解しようとすること」
反抗的なはみ出し者が主人公(ヒーロー)になっている児童書は枚挙にいとまがないという。子どもであるヒーローは、周囲の偏狭で威圧的な社会と愚かで鈍感で意地悪な大人たちに対して反抗的である。ホールデン・コーンフィールドがその例であり、ピーター・パンは彼の直系の先祖にあたる。トム・ソーヤには子どもと共通する要素がある。ハックルベリー・フィンもそうだという。
さらに「怒りについて」では、フェミニズムについて論じる。ヘミングウェイ、フィリップ・ロス、ジェームス・ジョイスが嫌いで、褒める記事を見ると怒りを感じるという。一方、好みの作家を褒める記事をみるとその日一日が幸せだという。

第四部 のタイトルは「報酬」
「卵抜き」では、ゆで卵をイギリス・ヨーロッパ式に卵立てにおいて食べるとき、卵の大きい端っこ上にするか小さい方を上にするかで論争があるという。『ガリヴァー旅行記』ではこの論争で戦争になったほどだ。ちなみに著者は「大きい端っこ」派。卵の殻をうまく壊す注意が完璧であるほど、卵がよく味わえるという。こんなささいなことでも突き詰めれば、それなりの理由があるもの。

「報酬」は、何を意味するのか。著者が生み出したファンタジーやSFを筆頭に文学、広くは芸術について述べている。サンタクロースがいると信じることで、心が豊かになるということだろう。→人気ブログランキング

2019年9月 7日 (土)

水底の橋 鹿の王 上橋菜穂子

尊厳死につながる議論が展開され、医療の本質に迫ろうとする大胆な試みを貫くファンタジー。
大国・東乎瑠(ツオル)の次期宮廷祭司医長の座をめぐる争いに、オタワル医療の運命がかかっている。進歩派はオタワル医術を受け入れるが、守旧派はオタワル医術の排除を目論んでいる。
オタワルは、国をもたない民である。250年前、黒狼病で王国が滅びたあと、山々に囲まれた地で、土木、建築、ガラス、機械工芸など技術力を伝えてきた。東乎瑠国の妃の難病をオタワルの医術師が完治させたことで、オタワルの医術の優秀さは東乎瑠の貴族たちに頼りにされている。

Image_20201202143601 鹿の王 水底の橋
上橋 菜穂子
角川書店
2019年

しかし、治療に役立つことならなんでも取り入れるオタワル医療と、治療は神聖なものであるべきとする東乎瑠の医療とは、相容れないものがある。
東乎瑠の医療は、例えば、薬は動物由来のものは「穢れ」を理由に忌み嫌う。したがって、オタワル医療で最先端の技術である、輸血や馬の血清を用いる血清療法は、清心教の医療では禁忌である。
清心教の信徒たちは、獣由来の薬を使うことで多少は命が伸びるかもしれないが、穢れた身で生きるよりは、心安らいで草木の薬でいきたいと願う。清心教の司祭医・真那の姪が重い病気にかかっていて、真那の手に負えないのでホッサルに診てほしいとミラルを通じて依頼があった。
ホッサルは、オタワル王国の聖王の末裔で天才的な医術師、ミラルは、ホッサルの恋人で医師でもある。
もし、ホッサルがなにか失態を演ずれば、それを口実にオタワル医師の粛清が推し進められるだろう。あえて火中の栗を拾うべく、ホッサルとミラルは真那の姪の診察に向かった。

ホッサルは、真那から清心教医術の源流とされる秘境・花部に行くように勧められる。
花部への道中、山津波に飲み込まれそうになったとき、ミラルをかばったホッサルは骨折し、奇しくも花部流医術を受けることになる。

ついには、次期宮廷祭司医長の有力候補に毒が盛られる事件が起こり、ストーリーは佳境に入る。→人気ブログランキング
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2019年6月17日 (月)

尼子姫十勇士 諸田玲子

毛利氏に敗れ石見銀山を抱える出雲国を追われた尼子氏の勇士たちが集結し、出雲国の奪還をかけて毛利軍と戦う歴史ファンタジー。古事記の逸話を絡めたり、忍者が跋扈する山田風太郎の世界を彷彿とさせたり、大いに楽しませてくれる。
応仁の乱(1467〜1477年)の頃、出雲国の主権を手中にした尼子氏であったが、1566年、毛利軍に滅亡させられる。
その2年後、尼子氏の遺臣である山中鹿介や立原源太兵衛らは、京都興福寺で僧侶となっていた尼子勝久を還俗させ尼子再興軍を募り、毛利氏に立ち向かおうとする。一時はいくつかの城を奪還するが、1578年、上月城を毛利軍に陥落させられ劣勢を強いられる。そして勝久は自害し鹿介は誅殺され、尼子氏は完全に滅亡する。
以上が史実であるが、本書の結末はどうなのか。

それぞれの事情を抱える十勇士たちは、尼子勝久を総大将に仰ぎ、大将・山中鹿介と勝久の生みの親・スセリビメのもとに集結し、尼子再建に奮闘することを誓う。
Image_20201116105401尼子姫十勇士
諸田玲子
毎日新聞社
2019年

勇士はさることながら、強烈な個性をもつ女性たちの活躍も見逃せない。
スセリは並みの人物ではなく尼子再興のため黄泉の国から遣わされた女神と思われている。3本脚の八咫烏を守護神とし強烈なカリスマ性が備わってる。その乳姉妹のイナタはスセリの身の回りの世話をする。
鼠の介と夫婦である大柄な猫女は忍びでもあり占いを司る。
女介は勇士として男勝りの活躍をする
毛利の間者・世木忍者のナギは尼子軍を窮地に陥れようとスセリ・勝久の母子に近づく。ナギはスセリの体に入り込み、ナギとスセリが入れ替わるに至り、状況はこんがらがる。
さらに、十勇士のひとりの妹という触れ込みで尼子軍の裏方に紛れこんだ遊女・黄揚羽は、場所をわきまえずに春をひさぐというあっけらかん振りである。はじめは非難の目で見ていたまわりの者は、黄揚羽の天衣無縫さに圧倒されてしまう。やがて黄揚羽の義を貫く筋の通った言動が、まわりの者の共感を得ていく。皆から信頼され賞賛を得る娼婦を登場させたことは大成功だ。

尼子再興軍の戦略は、毛利が九州の大友との合戦の準備に余念がない間に、出雲を手中にしようというものである。
当初は再興軍が毛利の城を陥落させていったものの、本命の月山富田城の奪還には至らなかった。一時は、毛利元就の病が重くなり兵が撤退したが、やがて毛利の圧倒的な兵力に押され、再興軍は奪還した城を奪われていく。そんな劣勢を挽回しようと、スセリは神々のご加護を得んがために、黄泉国に通じる洞穴に入っていく。→人気ブログランキング

2019年5月23日 (木)

雲上雲下 朝井まかて

中央公論文芸賞を受賞作。
民話を題材としたファンタジー、話の山がいくつもある、大傑作だ。
主人公の草どんは森の奥にある原っぱにいる大きな草だ。草どんの葉にはとんがったギザギザがあるが先端は耳たぶのように丸みを帯びて柔らかい。その草どんに尻尾のちょんぎれた子狐が甘えて昔話をねだる。草どんは、どういうわけか子狐の巧みな誘導に応えてしまう。
草どんと子狐に、山姥が加わって話は進む。
Image_20201206090801雲上雲下(うんじょううんげ)
朝井まかて
徳間書店
2018年

草どんはおなじみの昔話を話す。
爺さんと婆さんが、餅作りをしていて団子が転がって鼠の穴に落ちた。その穴に入ると、伽藍があって天井裏で鬼たちが宴会を開いている。鬼たちがおいていった小判を、眩しいから持っていけと地蔵がいう。
婆さんは隣の意地悪爺婆に顛末を話した。ふたりは小判を手に入れようと団子を作って鼠穴に落とす。

子狐がまたもや果てしな話を催促する。
娘に開けるなといわれた箪笥の引き出しを若い衆が開けてしまう話。田螺の「粒」の出世話。竜宮の乙姫が病気になった話。貧乏寺が隆盛する話。小太郎の話は悲恋だ。
ずば抜けた身体能力をもつ小太郎の親が誰かわからない。小太郎の脇腹には光る鱗があり、水の中を自在に泳ぐことができる。旅籠に売られた初恋の相手を自由の身にして、理不尽な世間を見返してやろうとする。

山姥も子狐も身の上話をはじめるが、途中から草どんがふたりに代わって続きを語る。
山姥は喧嘩で負傷した子狐を助けたのだ。山姥らしからぬ過去が明らかになる。巻末では草どんの出自が明かされる。

母親からあるいは祖母から子どもに昔話が語られる古きよき習慣の衰退を嘆くというのが本書のテーマである。→人気ブログランキング

雲上雲下/朝井まかて/徳間書房/2018年
落陽/朝井まかて/祥伝社文庫/2019年
阿蘭陀西鶴/講談社文庫/2016年
胘(くらら)/新潮社/2016年
恋歌/朝井まかて/講談社文庫/2015年
すかたん/朝井まかて/講談社文庫/2014年

2018年10月 9日 (火)

リンカーンとさまよえる霊魂たち ジョージ・ソーンダーズ

南北戦争中に愛する息子ウィリーを病気で失ったリンカーン大統領は、頻繁に納骨堂を訪れ長時間を過ごしたという。著者はこの逸話から霊魂たちが跋扈する奇想なファンタジーを思いついた。
原題は『Lincoln in the Bardo』。「Bardo」はチベット仏教の言葉で、前世の死の瞬間から来世にいくまでのあいだの霊魂が住む世界をさす。
現世に戻りたいがままならず、来世に行くまでの時間を引き延ばしたい。そんな霊魂たちの思いが、遺体を病体、棺桶を病箱、墓地を病庭と呼ばせている。
涙と笑いの人情物ゴーストストリーである。
2017年、ブッカー賞受賞作。
Photo_20201130082001リンカーンとさまよえる霊魂たち
ジョージ・ソーンダーズ/上岡伸雄
河出書房新社
2018年

初夜のベッドで、中年のヴォルマンは若い妻に何もしないで友達でいようと提案し、その通りの清らかな関係でいた。それが功を奏したのか妻から誘いがあったのだが、仕事場の梁がヴォルマンに落ちてきて、思いを遂げずに勃起したまま霊魂になった。
ゲイの恋人にふられて手首を切って自殺したベヴィンズは早まったと後悔し、人生の楽しみを味わいたいという思いから、たくさんの目や鼻や手があるようになった。
この2人のほかに多数の霊魂たちが発する声と、虚実取り混ぜたと思われる文書や文献の列記によって、物語は進んでいくというユニークな形をとっている。

悲惨な思いをした黒人たち、高貴そうな夫人、あばずれ女や母親たち、経営者や小売人、女に手を出す男、下ネタばかりを口にする男、強盗、牧師など多種多様な霊魂たちが登場する。

リンカーンに対し、霊魂たちは、息子のウィリーの誕生日に仔馬をプレゼントしたことをやりすぎだと突っつき、雨の中をコートを着せないで乗馬をさせた非を論い、ウィリーが重篤にもかかわらず自宅でどんちゃん騒ぎのパーティを開いたことを非難し、あるいは大統領の無能さを嘆いたりするのだった。おりしも、南北戦争が泥沼化し戦死者が何万人にも達するような状況にあった。

深夜、病院地に現れウィリーの遺体を抱きしめ落ち込む大統領に、ヴォルマンとベヴィンズをはじめとする霊魂たちは同情し、ふたりに関わってなんとかしようと大統領の体の中に入ったりした。しかし、大人の霊魂と違って、年端がゆかないウィリーはいつまでもとどまるわけにいかないのだ。霊魂たちはウィリーを手遅れにならないうちに、あちらに旅立たせようと必死の思いで駆けずり回るのだった。→人気ブログランキング

2017年2月15日 (水)

ダークタワー Ⅱ 運命の3人 下 スティーヴン・キング

上巻は、「〈暗黒の塔〉を探していたローランドとエディの行く手に、〈影の女〉と書かれたドアが現れた。」という場面で終わった。
1959年8月、オデッタは地下鉄駅で何者かに後ろから押されて電車に轢かれ両大腿を切断した。事故のあと車椅子の生活となったが、おおかたの場合は、心優しいオデッタが人格を支配していた。しかし、邪悪なデッタがしだいに意識の前面に浮上するようになっていった。デッタの趣味は万引きだった。
Image_20201115085401ダークタワー II 運命の三人
スティーヴン・キング/風間賢二 訳
角川文庫
2017年1月

ローランドが〈影の女〉のドアを開けると、黒人女性の中にインプラントした。その女は、デッタとオデッタの性格が混在する2重人格者であった。
デッタはデパートで万引きをして追いかけられ、車椅子で試着室に逃げ込んだ。そしてデッタは砂浜に現れた。

オデッタは風呂からあがって、ローブを着て居間へ行き、ヴェトナムに駐留してるアメリカ軍についてのニュースをテレビで見ていたときに浜辺に来た、という。

ロブスターの毒にやられ衰弱したローランドが生き延びるためには、薬を調達しなければならならなかった。
〈第3のドア〉を探し求めて、エディとローランドはデッタを車椅子に乗せて浜辺をさまよった。
そしてついに、〈第3のドア)を見つけた。ローランドはエディとデッタを海岸に置いて、〈押し屋〉と書かれたドアを開けた。

ローランドは、よりにもよって、無差別殺人の愛好者、公認会計士のジャック・モートの体にインプラントしたのだった。
モートは5歳のオデッタの頭にレンガ塊を命中させ死線を彷徨わせ、成人したオデッタを地下鉄の線路に突き落とした鬼畜だった。
そんなことは構っていられない。ローランドことモートは銃砲店に入り銃弾を調達し、駆けつけた警官から銃をホルスターごと奪い、ドラッグ・ストアに入って抗生物質のケフレックス200錠を手に入れた。
パトカーを運転して地下鉄に行き、オデッタが突き落とされたフォームの線路に降り、電車に轢かれ、薄汚い公認会計士を葬り、1977年のニューヨークで仕事を終えたローランドは浜辺に戻った。

デッタの罠にはまり海岸に縛りつけられたエディは、今まさに怪物ロブスターに襲われるところだった。間一髪、ローランドが銃をぶっ放した。
オデッタとデッタが激しく罵りあった結果、ふたりの人格は消え、第3の女、かつてローランドが心を寄せたスザンナとして蘇った。

ローランドはドラッグ・ストアで手に入れたケフレックスのおかげで、体力を回復した。そして、ローランドとエディとスーザンの3人は、〈暗黒の塔〉を探して果てしない旅を続ける、という手に汗を握る内容。→人気ブログランキング

ダークタワー Ⅱ 運命の3人 下
ダークタワー Ⅱ 運命の3人 上
ダークタワーⅠガンスリンガー
神々のワード・プロセッサ
ミスター・メルセデス
ジョイランド
11/22/63
書くことについて
幸運の25セント硬貨
1922
ビッグ・ドライバー
スタンド・バイ・ミー』(DVD)

2017年2月13日 (月)

ダークタワー Ⅱ 運命の3人 上 スティーヴン・キング

『ダークタワー Ⅰ』では、話が複雑で焦点が定まらない感があるが、本書はキングらしさ(ウィットに富んで、饒舌で猥雑、プロットは緻密)が全開で、引き込まれること必至。

目覚めると、ローランド(ガンスリンガー)は海岸の波打ち際に倒れていた。
ロブスターの化け物が襲ってきて、右手の人差し指と中指と右足の親指を食いちぎられた。このあとローランドは右手がうまく使えなり、ロブスターの毒により敗血症に苛まれることになる。
ふたりは毒ロブスターで食いつなぐのだ。

Image_20201115091901ダークタワー II 運命の三人

スティーヴン・キング/風間賢二 訳
角川文庫  2017年

海岸にはドアがあり、開けると馬不要の車が走る異世界(1980年代のアメリカ)につながっていた。ローランドは、バハマからニューヨークに麻薬を運ぶエディの体の中に入り、ニューヨーク行きの飛行機の客となっていた。エディはヘロイン中毒である。

ローランドはロブスターの毒を消すために、薬を手に入れなければならない。エディが税関で捕まれば、薬を手に入れることができない。
麻薬の運び屋と疑われたエディは、副操縦士の制止を効かずにトイレに駆けこんだ。
エディはドアを通って海岸に行き、コカインの袋を体からはがしトイレに戻った。
税関で2時間、質問攻めにあい証拠不十分で釈放されるが、そのあと尾行をつけられた。
ローランドは、エディが空港の売店で買ったアスピリンを服用し、ペプシコーラを貪るように飲んで、ホットドッグをかじった。やがて体の震えが止まり、熱が下がり、痛みが消えていくのを感じた。

ニューヨーク麻薬界の大物の前に連れて行かれたエディは、またもやトイレに駆けこみ、海岸に行きヘロインを半分の5キロを持って、トイレに戻った。そこで、壮絶な銃撃戦が始まった。
生き残ったのはローランドとエディだけ。

警察がかけつけ、大物の館に踏み込もうとしたとき、ふたりは再び海岸に戻った。
〈暗黒の塔〉を探し求めて歩き出したふたりの行く手に、〈影の女〉と書かれたドアが現れた。
そして、下巻では3人目の運命の人物が登場する。この女が厄介なのだ。→人気ブログランキング

ダークタワー Ⅱ 運命の3人 下
ダークタワー Ⅱ 運命の3人 上
ダークタワーⅠガンスリンガー
神々のワード・プロセッサ
ミスター・メルセデス
ジョイランド
11/22/63
書くことについて
幸運の25セント硬貨
1922
ビッグ・ドライバー
スタンド・バイ・ミー』(DVD)

2017年2月 6日 (月)

ダークタワーI ガンスリンガー

主人公は、腰に2丁拳銃をぶら下げたガンスリンガー(拳銃使い)のローランド。
宿敵の〈黒衣の男〉追い続けている。

ローランドは〈タル〉の町に入る。〈タル〉は西部劇でおなじみの、よそ者に極端に排他的な町である。ローランドは、酒場の女アリスと懇ろになったものの、イカサマ女説教師の怒りを買い、ついには〈タル〉の住民すべてを敵に回すことになる。
ローランドが町を出ようとしたときに、住民がローランドの命を奪おうと襲ってきて、満身創痍になりながらも、〈タル〉の住民を皆殺しにした。
負傷したローランドは〈中間駅〉にたどり着いたが、砂漠の暑さで日射病にやられ倒れてしまう。別世界(現代)からやってきた少年ジェイクが介抱する。ジェイクは登校時に車にはねられ、〈中間世界〉にやってきたのだ。
時空が歪んだ〈中間世界〉は、開拓時代を思わせる世界であり、核戦争で荒廃した未来世界でもある。

Photo_20210402083801ダークタワー I ガンスリンガー
スティーヴン・キング/風間賢二 訳
角川文庫
2017年

世界の根幹に存在する暗黒の塔(ダークタワー)が、何者かによって破壊され不具合が生じているのだ。ローランドが〈黒衣の男〉を追いかけるている理由は、ダークタワーについて聞き出すことである。
いよいよ〈黒衣の男〉に出会い、男はダークタワーの話を始めるのだが、その詳細をローランドは聞いていないか理解できないか、宙ぶらりんのまま第1作は終わる。

解説によれば、本シリーズはキングが大学生の22歳の時に書きはじめた7巻から成る大作で、キングのライフワークともいうべき作品だという。キングが、まだ作家として海のものとも山のものともつかない頃に、書きはじめたものだから、キングらしい饒舌さは発揮されているが、荒削りである。
本シリーズは、第2巻以降で第1巻でなにを意味するのか不明な事柄が徐々に明らかにされていくという。例えば、「神の意図するところすべて〈カ〉のなせる技」と書かれているが、これがなにを意味するのかは不明である。
また、本シリーズはキングの他の作品と関連をもっているという。→人気ブログランキング

キャリー   キャリーDVD
ミザリー
ファインダー・キーパーズ
ミスター・メルセデス
ジョイランド
11/22/63
アンダー・ザ・ドーム1~4/文春文庫
セル 上下 新潮文庫
ダークタワー IV1/2 鍵穴を吹き抜ける風
ダークタワー IV 魔道師と水晶球 下
ダークタワー IV 魔道師と水晶球 上
ダークタワー III 荒地 下
ダークタワー III 荒地 上
ダークタワー Ⅱ 運命の3人 下
ダークタワー Ⅱ 運命の3人 上
ダークタワーⅠガンスリンガー
幸運の25セント硬貨
ビッグ・ドライバー
1922
第四解剖室
神々のワード・プロセッサ
夕暮れを過ぎて
いかしたバンドのいる街で
スタンド・バイ・ミー(DVD)
ジェラルドのゲーム
ドランのキャデラック
深夜勤務(ナイトシフト1)はしがき
深夜勤務(ナイトシフト1)

書くことについて
死の舞踏 /ちくま文庫/2017年

2017年1月 3日 (火)

炎路を行く者 上橋菜穂子

ヒュウゴはいかにしてタルシュ帝国の密偵になったのか?バルサの女用心棒としての出発点は?
「文庫あとがき」では、著者が最近作品を発表できない理由について述べている。
F1830e364b1840e0a05350d7569c69e9炎路を行く者: 守り人作品集
上橋 菜穂子
新潮文庫
2017年

 

「炎路の旅人」
南のタルシュ帝国がヨゴ皇国に攻め上がる。ヨゴ皇国の近衛兵〈帝の盾〉を父に持つヒュウゴは、追っ手から逃れようと炎の中をくぐり抜け、気を失ったところで助けられた。ヨゴ皇国はタルシュ帝国の枝国となった。
マール酒場で下働きの仕事についたヒュウゴの真面目な仕事ぶりが、料理人や仕事仲間の少年たちに認められていく。
マール酒場の最年少のライにノルアン酒場の連中が暴行したことの仕返しに、ヒュウゴはノルアン酒場の連中を叩きのめした。こうして、ヒュウゴはならず者の頭になった。
謎の男がヒュウゴの前に現れ、〈帝の盾〉の息子であることが見破られる。
男はタルシュ帝国の内情をヒュウゴに語り、タルシュ軍に入っての帝国を内側から見てみないかとヒュウゴを誘った。ヒュウゴは、国も民も幸せにするために生きていると思える仕事に就きたいと願っていたのだ。
そして、ヒュウゴはタルシュ帝国の密偵となった。

「十五の我には」
商隊の警護についた父・ジグロと15歳になったバルサは、盗賊に襲われた。
ふたりは盗賊が多すぎて、勝ち目がないことを悟った。誰かが内通していたのだ。
矢がバルサの腿を貫き、やがて気を失ったが、ジグロに助られた。
バルサは内通者を突き止め、ひとりで闘いを挑むが、返り討ちにあい命を落としそうになる。
ジグロは、詩の一節を口ずさんだ。
「・・・十五の我には 見えざりし、弓のゆがみと 矢のゆがみ、二十の我の この目には、なんなく見える ふしぎさよ・・・」と。→人気ブログランキング
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