史劇

『マリー・アントワネットに別れをつげて』

マリー・アントワネットに別れをつげて [Blu-ray]
Les adieux à la reine
監督:ブノワ・ジャコ
脚本:ブノワ・ジャコ
原作:シャンタル・トマ
音楽:ブリュノ・クレ
仏・スペイン  2012年  100分 ★★★

原作はフランスで最も権威あるフェミナ賞に輝いた、シャンタル・トマのベストセラー小説『王妃に別れをつげて (白水Uブックス) 』。フェミナ賞を、古くはロマン・ローランが『ジャン・クリフトフ』(1905年)で受賞している。

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1789年7月、フランス革命下のヴェルサイユ宮殿。
マリー・アントワネット王妃(ダイアン・クルーガー)の朗読係シドニー(レア・セドゥー)は王妃に心酔しており、王妃もシドニーに目をかけていた。王妃はポリニャック夫人(ヴィルジニー・ルドワイヤン)にぞっこん。ポリニャック夫人は、王妃の寵愛を受け特権と膨大な富を得ていた。シドニーから見ると同性愛的な三角関係にあった。

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民衆はバスチューユを陥落させ、出回ったギロチンリストには、筆頭に王妃、三番目にはポリニャック夫人の名があった。
その日、王妃は精神的に不安定な状態にあった。深夜になって、王妃の呼出しに応じないポリニャック夫人を再度説得する役目を買って出たシドニーは、夫人の侍女の制止を振り切って、寝室に強引に入る。そこで、シドニーは睡眠薬を服用して熟睡するポリニャック夫人の全裸の姿を目にするのだった。
うろたえながら逃亡の準備をする王妃を見守るシドニーに、王妃は「あなたを見捨てない」と告げる。

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翌日、王はヴェルサイユ宮殿にとどまるとの決意を王族たちに告げた。それは王族たちの運命が新政府の判断に委ねられることを意味する。絶望のあまり立ちすくむ王妃に、緑のドレスを纏ったポリニャック夫人が近づき、王族たちが見守るなか王妃と抱き合い、別の部屋へと消えて行く。

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王妃がポロニャック夫人に宮殿からの逃亡を勧めると、夫人はいとも簡単に応じる。王妃は自分を置いて逃げ出す夫人に複雑な思いを抱くが、夫人の影武者をシドニーを命じるのだった。捕まれば断頭台に上がるのはシドニーである。

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シドニーはポリニャック夫人の緑のドレスを身につけさせられ、ポリニャック夫人は召使の服装で馬車に乗り込む。やけくそ気味のシドニーは、夫人の制止を聞かず、すれ違う沿道の民衆に窓から手を振るのだった。→ブログランキングへ

『新約聖書  ~イエスと二人のマリア~』

新約聖書 ~イエスと二人のマリア~[DVD]
Maria Di Nazard
監督:ジャコモ・カンピオッティ
脚本:フランチェスコ・アルランチ
音楽:ガイ・ファーレイ
2012年  独・伊  204分  ★★★*☆

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策略をめぐらし権力の中枢にいる邪悪なヘロディア、その手先となり堕ちていきやがて改悛するマグダラのマリア、そして聖母マリアの3人の女性との関わりから描いたイエス・キリストの物語である。本作では、マグダラのマリアが娼婦となったのち改悛したという説教用に作られた話を採用している。途中で小休止があるが204分と長い。

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ヘロディア(アントニア・リスコヴァ)が率いる兵が、獰猛な犬を何匹も引き連れてナザレの村で幼いマリアを探し回るが、犬が隠れているマリアに近づくと急におとなしくなる。マリアには不思議な力が備わっていた。

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マグダラのマリア(パス・ベガ)の母親が姦通を夫に知られ、石打ちの刑で殺される。母を許さなかった父に反発するマグダラのマリアは、ヘロディアの誘いを受けていいなずけと別れ、エルサレムのへロデ大王の宮殿で暮らすことにする。マリア(アリッサ・ユング)も誘われるがヨセフとの結婚を控えていると断る。ふたりのマリアは仲がよかった。宮殿は酒池肉林の宴が毎夜開かれる伏魔殿のような所である。

大工のヨセフはマリアを一目見て気に入り求婚しマリアもあっさり承諾する。ところが、結婚をする前にマリアは天使から受胎を告知され、事はこんがらがる。ヨセフはマリアを疑うが、天使が現れ自らの手のケガがまたたく間に治ったこともあり、マリアを信じるのだった。

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一方、ヘロディアは前の夫と別れ、ヘデロ大王の次男アンティパスと再婚していた。ヘロディアはマグダラのマリアに大王の長男を誘惑させ、大王暗殺の嫌疑がかかるよう画策する。罠は見事に成功して、へロディアの思い通り長男は死罪になる。こうしてヘロディアの夫が世継ぎとなった。
マグダラのマリアは大王の家臣ヨアザルと結婚する。

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マリアの下腹部が大きくなり、近所の人々が白い目で見るなか、マリアとヨセフの婚姻の宴が開かれる。初めはためらっていたものの、まず子供たちが新婚夫婦の踊りに加わり、やがて大人たちも踊り出すのだった。

人口調査が行われるためヨセフは生まれ故郷のユダまで行くことになり、臨月が間近なマリアも旅に同行することになった。旅の途中、ベツレヘムの町でどこの宿も満杯なため仕方なく洞窟の厩で夜を過ごすことになり、そこでマリアはイエスを産み落とすのだった。

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東方で星を見てイエスの誕生を知った博士たちが、生まれたばかりのイエスに会いにくる。そのことを知ったヘロデ大王は、ユダヤの王は自分であると、イエスを捕らえる兵を出すのだった。
身の危険を察知したマリアたちはイエスを連れて、間一髪でベツレヘムをあとにしてエジプトに身を隠す。

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その後、成長したイエス(アンドレーアス・ピーチュマン)はユダヤの各地を遊歴して弟子を得ていった。カナンの地では、婚姻の最中にワインが足りなくなり、イエスが水をワインに変える奇跡を起こす。

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宮殿ではヘロディアの娘サロメの淫靡な踊りに対し、義父のアンティパスは「好きなものを求めよ」と褒美を与える。サロメは母の命を受け求めたのは、なんと「洗礼者(バプテスマ)ヨハネの斬首」であった。まさにこの親にしてこの娘ありである。マグダラのマリアが、ヨハネの罪をでっち上げたのは自分であると申出るが、聞き入れられずヨハネは斬首される。ヨハネは再婚したヘロディアを姦淫の罪を犯したと訴えていたのだった。ヘロディアは自らに不都合な人物を殺害していく悪女だ。

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王アンティパスに異を唱えたことでマグダラのマリアは宮殿を出ざるを得なくなり、たどり着いた娼窟で男と一夜を共にする。宮殿からの兵に居所を突き止められ、母と同じ姦淫の罪で石打ちの刑が行われようとするが、石が投げられるまさにそのとき、イエスが現れ「今まで罪を犯したことがない者が最初の石を投げなさい」というと、誰も石を投げずに去って行った。助けられた彼女はイエスの前に膝まづいて足を髪でぬぐうのだった。
この後マグダラのマリアはイエスの信奉者となる。

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イエスが十字架にかけられた経緯は次のようである。
ローマ帝国に近い立場の議会派(サドカイ派)の人々は、イエスに従う人々の反乱を恐れていた。また、イエスに従う人々の中にもイエスがローマからユダヤを解放してくれないことに不満を募らせる者がいた。そしてイエスが捕らえられる。
ユダヤの総督ピラトがイエスは嫌疑不十分であるとして無罪としたものの、ユダヤ教を批判するイエスに対しユダヤの人々は死刑を要求した。
反乱になることを恐れたピラトは、人々に極悪な殺人犯とイエスのどちらかを死刑にし他方を解放しようと取引をもちかけたのだった。「どちらを解放するか?」とのピラトの問いに、人々は「イエスを十字架に」と叫び、イエスは十字架に架けられることになった。

磔刑によりイエスが息を引き取るとき、宮殿のへロディアはヘビの大群に襲われる。

そして3日後、復活したイエスに最初に接したのはマグダラのマリアであった。そのときに、イエスが「私にすがりついてはなりません」と言ったかどうかは、本作では描かれていない。

エンディングのテロップで「全ての母に捧げる」とあるように、本作は聖母マリアの母性愛に焦点をあてて描かれている。→ブログランキングへ

→『不思議なキリスト教』 (講談社現代新書)11年
→『マグダラのマリア ―エロスとアガペーの聖女』(中公新書)05年

『アレクサンドリア』

エジプト、アレクサンドリア、紀元391年。
エジプトはローマ帝国の属国であった。
台頭してきたキリスト教徒とユダヤ教徒その他の異教徒が共存して暮らしている。
図書館館長の娘、哲学者であり天文学者のヒュパティア(レイチェル・ワイズ)は天動説に疑問を抱き、地動説を裏づける証拠を見つけようと学問に打ち込んでいた。

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アレクサンドリア [Blu-ray]
原題:Ágora
監督:アレハンドロ・アメナーバル
脚本:アレハンドロ・アメナーバル/マテオ・ヒル
製作:フェルナンド・ボバイラ/アルバロ・アウグスティン
製作総指揮:シモン・デ・サンティアゴ/ハイメ・オルティス・デ・アルティニャーノ
音楽:ダリオ・マリアネッリ
製作国:スペイン  2009年  127分

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そんなヒュパティアは、否が応でも目立つ存在である。弟子のオレステスに求愛されるが、弟子たちの前で経血のついたハンカチを投げつけ拒絶するのだった(なんという大胆な拒絶の仕方)。当然この話は町中に広まる。奴隷のダオスからの屈折した愛慕も拒み続ける。

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やがて、数の上で劣勢を強いられ追い詰められたユダヤ教徒が、キリスト教徒を襲撃したことで、両者は激しく対立しはじめる。
キリストってユダヤ人だろう。仲間じゃないか、なぜいがみ合わなければならないのだ」とユダヤ人たちは言う。
キリスト教徒は新しい信徒を獲得して勢力を拡大しようと、集会を繰り返すのだった。
キリスト教徒であるローマ皇帝が下した裁定は、当然キリスト教徒に有利なものだった。

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勢いづいたキリスト教徒はたちは、ヒュパティアたちユダヤ教徒を追い出す。彼らは図書館を破壊し、ヒュパティアが守ってきた貴重な蔵書を持ち出し焚書する。ここがこの映画の見所のひとつ。ヒュパティアにとっては命にも変え難い貴重な書籍であるが、キリスト教徒にとっては、それこそ悪魔の書である。図書館は破壊し尽くされるのだった。
ユダヤ教徒たちには改宗か出国しか道は残されていない。そうした逆境のなか、地動説を研究し弟子たちに学問を教え続けるヒュパティアは、キリスト教徒から魔女と烙印を押されてしまう。

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前半のストーリーが散漫でダレてしまう。後半に盛り上がると思いきや、さっぱり。 キリスト教徒の傲慢で排他的な面が容赦なく描かれている点は、史実に忠実そうで評価できる。
スケールが大きくセットが豪華で荘厳、金がかかっていそうだが、訴えかけるものが希薄だ。


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