ドラマ

2023年10月14日 (土)

その昔,ハリウッドで クエンティン・タランティーノ/田口俊樹 

1969年、ハリウッドの黄金時代が終わりを迎えようとしていた頃、落ち目の俳優リック・ダルトンと彼のスタントマン兼付き人のクリフ・ブースが、再び輝きを放とうと奮闘する姿を描いた作品。なお同名の映画『ワンス・アポナタイム・イン・ハリウッド』では、リックをレオナルド・デカプリオが、クリフをブラッド・ピットが演じている。
Img_0307 その昔、ハリウッドで
クエンティン・タランティーノ/田口俊樹 
文藝春秋 
2023年5月 464頁 

膨大な数の映画のタイトルがそこらじゅうで挙げられ、それらを片っ端から歯に衣着せぬ厳しい評価をくだす。偏執狂の視点がタランティーノのタランティーノたらしめるところなのだ。
戦争に勝利したアメリカのハリウッドの映画はお気楽なものだった。一方、戦争で敗れた欧州や日本の映画はその内容に含意があったし、最後まで見ないと意味がわからないものもあった。と映画を評価している。

リックはイタリア映画に出演することになるが、それが、落ち目になる曲がり角だと思っている。その思いをクリフが払拭させる。リックはかつてテレビの西部劇で人気を博した俳優だが、時代の変化に伴い出演のオファーは激減。現在は、ドラマの悪役やゲスト出演などの単発の仕事で食いつなぐような状態である。

そしてある日、リックの隣にロマン・ポランスキーと女優のシャロン・テート夫妻が越してきた。紛れもなくポランスキーは若手のポーランド人監督として、もっとも成功しているひとりだ。そしてアイラ・レヴィン作の『ローズマリーの赤ちゃん』の監督を任せられる。
リックは、シャロンに興味を持ち、彼女に近づこうとする。
 
一方、ハリウッドはヒッピーのカルト団体「マンソン・ファミリー」の影響を受けつつあり、1969年8月9日に実際に起きたシャロン・テート殺人事件へと導線が敷かれていく。→人気ブログランキング
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2015年5月29日 (金)

グロリアの青春

中年の女性が申し分なさそうな結婚相手を見つけるが、煮え切らない相手に、乱暴な離別劇を仕掛ける。
Image_20210101082501グロリアの青春
Gloria
監督:セバスティアン・レリオ
脚本:セバスティアン・レリオ
2013年  スペイン チリ  109分 
チリの首都サンチェゴで暮らす58歳のキャリアウーマンのグロリア(パウリナ・ガルシア)は、10年前に離婚した。ときにダンス・パーティに出かけ、孤独を紛らわしてきた。

ある日、パーティで知り合ったロドルフォと意気投合する。
ロドルフォは海軍を除隊したあと、遊園地経営などの事業に成功した初老の男。
1年前に病気の妻と離婚したが、今も妻と娘に経済的な援助をしている。
デートを重ね交際は順調に進んでいったが、しょっ中、娘から電話がかかってくることが、グロリアは気に入らなかった。当たり前だ。

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グロリアの息子が自らの誕生日に、別れた家族が集まるように手配した。
グロリアは家族にロドルフォを紹介した。家族はロドルフォをおおむね好意的に受け入れたようだった。
ところが、ロドルフォは気分が悪くなって嘔吐していたのに、グロリアに無視されたと、勝手に帰宅してしまった。

呆れたグロリアは、ロドルフォからの電話を無視していた。
グロリアは車のトランクに入っていた遊園地で使うペイント銃を返却しようとするが、ロドルフォは受け取らなかった。そして、止めとけばいいものを、寄りを戻してしまう。
グロリアは勝手気ままに暮らしているように見えて、実は孤独なのだ。

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ロドルフォの提案で、ふたりは1週間の旅行に出ることになった。
旅行を満喫している矢先に、娘からの電話でロドルフォは旅行先のホテルからいなくなってしまった。
堪忍袋の緒が切れたグロリアは、いかなる手段で離別を通告してやろうかと考えをめぐらして、強烈な実力行使に打って出るのである。→人気ブログランキング

2015年2月 9日 (月)

私の、息子

ルーマニア映画。第63回ベルリン国際映画賞(2013年)で金熊賞(最優秀作品賞)を受賞している。
母親は過保護すぎるくらい息子の面倒をみる親バカ。息子はそれに甘え反発し逆ギレすらしてしまうマザコン男である。
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監督:カリン・ピーター・ネッツァー
脚本:ラズヴァン・ラドゥレスク
ルーマニア  2013年  113分

ルーマニアのブカレストで暮らすコルネリア(ルミニツァ・ゲオルギウ)は、自立していない一人息子のバルブが気がかりでしかたがない。妹に「息子は女の言いなりになっている」と愚痴をこぼす。女とは息子と同棲しているシングルマザーのカルメンのこと。

名士を集めたコルネリアの盛大な誕生パーティに息子は顔を出さない。
ちなみに、コルネリアは著名な建築家、夫は検死医、コルネリアの妹は医者である。セレブな一族らしい。
登場人物が揃いも揃って立て続けにタバコを吸う。

高速道路で前の車を追い越そうとして、バルブは道路を横切ろうとした少年を轢いて死なせてしまう。
ここから話は急展開する。
コルネリアは息子の罪を軽くしようと奔走する。
担当の警察官、事故車の鑑定人、息子が追い越そうとした車の運転手に接触し、便宜をはかったり金を払ったりして、証言や証拠を変えさせようとする。
ところが、バルブは頼んだ覚えはないと母親に反発し、完全に拒絶してしまう。
権威とコネとでごり押しし、金での力でなんとかしようとするコルネリアには、嫌悪感を抱いてしまう。

コルネリアは疎ましく思っていたカルメンと共闘を組んでバルブを懐柔しようとするがうまくいかない。
バルブに少年の両親に謝罪するように促すが、もちろん応じるはずもない。
コルネリアは札を封筒に入れ、嫌がるバルブ、カルメンを連れて、被害者の家にむかう。両親を前にしてコルネリアは弔意を伝え、謝罪し、息子がいかに善良であるか、コルネリア自身の息子への思いを切々と訴えるのである。
さて、コルネリアの誠意というか策略は通じるのか?→人気ブログランキング

2014年11月25日 (火)

ブルージャスミン

夫ハル(アレック・ボールドウィン)が詐欺罪で逮捕され、それまでニューヨークで派手に暮らしていたジャスミン(ケイト・ブランシェット)は、破産に追い込まれた。
住む所がなくなり、妹ジンジャー(サリー・ホーキンス)の家に転がり込む。姉妹といっても、それぞれが養子で血のつながりはない。
ジャスミンはひとり言をブツブツいい、ウォッカで気を紛らわし、うつだがパニック障害だかで薬を手放せない状態である。
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Blue Jasmine
監督:ウディ・アレン
脚本:ウディ・アレン
アメリカ  2013年  98分

スーパーのレジ係として生計をたてている妹は、ふたりの男の子を育てているシングルマザー。ジンジャーの恋人は、ジンジャーの家に引っ越して同棲を始めようとしていた矢先だった。恋人は邪険な態度をとるセレブ根性の抜けないジャスミンが気に食わない。だから何かとジャスミンと衝突する。

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あるパーティで、ジャスミンは政界を目指す金持ちの男と知り合いになり、一方ジンジャーは音響関係の技術者といい仲になる。しかし、ジャスミンは嘘で固めた過去がばれて、ジンジャーは相手に騙されていて、ふたりの淡い夢は儚くも消えてなくなる。
ジンジャーは元の恋人とよりを戻し丸く収まるのだが、ジャスミンは行く宛てもなく妹の家を出ることになるのである。

アカデミー賞主演女優賞を獲ったケイト・ブランシェットの存在感はもちろん、ジャスミンによれば、がさつで頭が悪いジンジャーを演じたサリー・ホーキンスの演技も冴えていて、助演女優賞にノミネートされた。脚本賞にもノミネートされている。

ウディ・アレンは、かつて韓国人の養女スン=イン・プレヴァンと関係を持ったとのことで世間の顰蹙を買い、その頃親しい関係にあったミア・ファローとの関係がぐしゃぐしゃになった前科がある。その後、スンと結婚し現在に至っている。
ジャスミンの夫ハルは、女とみれば手を出し挙げ句の果てにフランス人の若い留学生と結婚することになったから、ジャスミンに別れてくれと話す。なんだかアレンとダブって見える。自虐ネタで脚本を作る、転んでもただでは起きないアレンの監督魂には恐れ入る。→ブログランキングへ

ジャスミンがハルに初めて出会ったときに流れていた曲は『ブルームーン』で、ところどころで流れる。→人気ブログランキング

2014年10月16日 (木)

8月の家族たち

のべつ毒舌を吐く煮ても焼いても食えない母親を演じるメルリ・ストリープと、母親を何とか従わせようとするこれまた強烈な性格の長女を演じるジュリア・ロバーツのやり取りが凄まじい。
ピューリツァー賞を受賞した戯曲を映画化したもの。母娘喧嘩は『バージニア・ウルフなんか怖くない』の夫婦間の壮絶な言い争いを彷彿とさせる。アカデミー賞主演女優賞にメルリ・ストリープが、助演女優賞にジュリア・ロバーツがノミネートされた。
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監督:ジョン・ウェルズ
脚本:トレイシー・レッツ
原作:トレイシー・レッツ
音楽:カーター・バーウェル
アメリカ 2013年 121分

灼熱の日が続く8月、オクラホマ州の田舎町に暮らす老夫婦の妻バイオレット(メルリ・ストリープ)は口腔癌を患い、医者から処方された薬で依存症になっている。夫のビバリー(サム・シェパード)はアルコール中毒で、二人の仲は最悪の状況にある。
ビバリーは妻の面倒をみるネイティブ・アメリカンのジョナを住み込み家政婦をして雇う。何もかもが気に入らないバイオレットは、ジョナをインディアンと呼んで侮蔑するが、ジョナはいたって冷静である。
ジョア役は『フローズン・リバー』でシングルマザーを好演したミスティ・アップハム。

何の前触れもなくビバリーが行方不明となり、知らせを聞いて夫婦の3人の娘が訪ねてくる。
長女バーバラ(ジュリア・ロバーツ)は夫と別居中で、14歳の娘の反抗に手を焼いている。次女は独り身でなにやら訳ありの恋愛をしている。三女は胡散臭い婚約者を連れ現れる。

そしてビバリーが水死体で発見される。
葬式の夜、バイオレットの妹も加え家族一同が顔を合わせる晩餐が始まるが、詮索好きのバイオレットによって、それぞれが抱える問題が明るみに出されていく。

何も解決されず、娘たちはほころびを抱えたまま、母親を残して実家を去っていく。最後まで、冷静さを失わないのはネイティヴ・アメリカンのジョナだけである。

灼熱の8月という設定が、崩壊されつつある家族たちの解決されない苦悩をことさら煽っている。→人気ブログランキング

2014年10月 8日 (水)

飛べ!ダコタ

映画の撮影が始まるまで、ダコタ不時着の史実を多くの佐渡島民が知らなかったという。それを日本中に知らしめたことだけでも、この映画が作られた意義は大きいと思う。
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監督:油谷誠至
脚本:安井国穂/友松直之/油谷誠至
音楽:宇崎竜童
主題歌:石井里佳 「ホームシック・ララバイ」
日本 2013年 109分

今年9月に佐渡へ行った。佐渡出身の友人が手配してくれたワゴンタクシーに乗り、運転手の男性の薀蓄たっぷりのガイドで島を巡ったが、佐渡には優良観光スポットがたくさんあって、1日ではとても回り切れないことがわかった。佐渡は歴史エピソードだらけの島だ。現在、佐渡金銀山の世界遺産登録を実現させようと関係者が懸命に準備をしている。トキが舞う島は登録されれば大勢の観光客で賑わうだろう。ただし、トキには島民もそうそう遭遇できないとのこと。

 太平洋戦争が終わって5カ月経った1946年1月、イギリスの飛行機ダコタが佐渡の高地村の海岸に不時着する。上海の領事と秘書たちを乗せて東京へ向かう途中エンジントラブルを起したもので、幸い乗組員5人は無事、飛行機の破損も致命的ではなかった。

村長(柄本明)は、自らが経営する旅館にイギリス人を宿泊させようと提案するが、反対意見が出る。
とは言え、イギリスは占領軍の一員だから、助けなければ報復されるかもしれないという意見も出た。高地村の人間なら困っている人の面倒を見るのが当たり前、という意見に落ち着いた。

イギリス人に積極的に近づこうとしたのは、村長の娘・千代子(比嘉愛未)をはじめ若い女性たちであった。なにしろ彼女たちは、刺激の少ない村の生活に飽き飽きしていたのだ。
イギリス人たちが村に滞在していることで、村人たちの生活に様々な変化をもたらすのである。

ダコタを島から東京に向けて飛び立たせなければならない。そのためには500mの滑走路が必要である。村の老若男女が力を合わせて、海岸をならし石を敷き詰め、滑走路は出来上がっていく。

そして、送別の会で、子供たちが原曲がスコットランド民謡の『蛍の光』を歌い出すと、イギリス人たちも歌い、出席者全員の大合唱となるのである。

戦争が終わり、日本は軍国主義から民主主義の国になったものの、古い考え方がは根強く残っていた。その変化を懸命に受け入れようとする者と、頑なに受け入れようとしない者との確執が生まれた。その確執がダコタ不時着事件をよって、少しずつ氷解していく過程がうまく描かれている。→人気ブログランキング

2014年9月 9日 (火)

少女は自転車に乗って

サウジアラビア初の女性映画監督の作品。
圧倒的な男性優位のイスラム社会で、女性の社会進出や人権回復が進むだろう未来を期待させる、女性監督でなければ撮れない作品に思える。
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監督:アイファ・アル=マンスール
脚本:アイファ・アル=マンスール
音楽:マックス・リヒター
サウジアラビア ドイツ 
2012年 98分

10歳のお転婆娘ワシダ(ワアダ・ムハンマド)は、仲良しの少年アブダラ(アブドゥラフマン・アル=ゴハニ)と自転車で競争することを夢見ている。そのためにミサンガを売ったりして小金を貯めているが、自転車の代金800リアルには到底届きそうにない。
ワシダの母親(リーブ・アヴドラ)は、外泊がちの夫が彼女を第一夫人に選ぶか、あるいは付き合っている女性を選ぶか、微妙な立場にある。
一夫多妻制のイスラム圏ならではの悲劇だ。

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ワシダが通う女子校は校則が厳しい。
校則を破る何人かの女生徒がいて、一匹狼のワシダは彼女たちの仲間ではないが、女性の校長から目を付けられている。

そんなおり、学校で「コーラン暗唱コンテスト」が行われ優勝者に1000リアルが贈られることを知ったワシダは、コーラン問題のDVDを買ってきて猛勉強する。
そしてワシダは優勝するのだが、賞金の目録が渡される段になって、校長に賞金の寄付を強要されて、泣く泣く校長に従うのだった。
家に帰ると第一夫人になれなかった失意の母が、優勝のご褒美に自転車をプレゼントしてくれたのだ。

ワシダはアブダラと自転車で風を切って走り回る。大きくなったら結婚して欲しいとアブダラがワシダにいうと、彼女はにこりと微笑むだけ。
この微笑みが、ワシダが大人になる頃には、女性たちにとって少し明るい社会になっているかもしれないことを予感させるのである。→人気ブログランキング
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2014年8月10日 (日)

早熟のアイオワ

世界にひとつのプレイブック』(2012年)で、第85回アカデミー賞主演女優賞を受賞するジェニファー・ロレンス。この作品の後、『キック・アス』(2010年)で大ブレークする、この時9歳のクロエ・グレース・モレッツの魅力あふれる演技が見もの。
プリティー・リーグ』(1992年)で、ジーナ・デイビスの妹キット役を演じたロリ・ペティ自らが、少女時代の体験を元に脚本を書き、メガホンをとった作品である。
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The Poker House
監督:ロリ・ペティ
原案:ロリ・ペティ/デヴィッド・アラン・グリア
脚本:ロリ・ペティ/デヴィッド・アラン・グリア
音楽:マイク・ポスト
アメリカ 2008年 93分 

1976年、アイオワ州の小さな町でのこと。

14歳のアグネス(ジェニファー・ロレンス)が、売春婦の母親(セルマ・ブレア)と、妹ビー(ソフィア・ベアりー)とキャミー(クロエ・グレース・モレッツ)と暮らす家は、ポーカー・ハウスと呼ばれる、夜になるとドラッグの売買や賭博や売春が行われる不法居住者が暮らすところ。牧師である夫の暴力に耐え兼ねて、サラが子どもたちを連れて家を飛び出したどりついたのがここだった。

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次女のビーは新聞配達と瓶の回収で小銭を稼いでいて、福祉相談所に里親を探してもらっていると、同じように廃品回収をしている飲んだくれのオヤジたちに話す。

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三女キャミーは友人の家で寝泊まりして、友人の父親に「パパだったらいいな」と甘えたりする。バーに連れてこられたキャミーはカウンターに陣取り、三姉妹の窮状を知っている女主人は、ポテトチップスだのジュースだのを振舞うのである。

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アグネスには地方紙に作品を載せるくらい詩のセンスがあり、さらに、学校のバスケットボール選手で州のセミファイナルの試合を控えている。
しっかり者の長女と、のんびり屋の次女、甘えん坊の三女、それぞれの性格の特徴がうまく演じられている。

母親は酔っ払っているかラリっていて、勉強するアグネスに買春を強要するとんでもない女になってしまったのである。
そして、起こるべくしてレイプ事件が起こった。

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この事件のあと、アグネスはバスケットの試合に向かい、彼女の八面六臂の活躍で相手校に勝ち、チームは決勝に進むことになった。
悲惨なスト―リーであるが、妹たちの屈託のなさとアグネスの精神的かつ肉体的なタフさに救われるのである。→人気ブログランキング

2014年6月12日 (木)

大統領の料理人

ミッテラン大統領の女性料理人ダニエル・デルプエシュの実話をもとに作られた。南極基地のシーンとエリゼ宮でのシーンが交互に映し出される。大統領の料理人に抜擢された主人公は、そのあと南極観測基地の料理人になり、さらに新天地に向かう。
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Les saveurs du Palais
監督:クリスチャン・ヴァンサン
原案:ダニエル・マゼ=デルプシュ
脚本:クリスチャン・ヴァンサン/エチエンヌ・コマール
フランス  2012年 95分

フランスの田舎町でレストランを経営するオルタンス(カトリーヌ・フロ)は、大統領のプライベート料理人としてエリゼ宮へ招聘される。なぜ自分が選ばれたかを訊ねると、ジュエル・ロブションの紹介があったと告げられる。オルタンスは「そういえば、何かの会で名刺を交換したことがあったわ」とつぶやく。

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オルタンスを待ち受けていたのは、宮殿の料理のすべてを担当してきた厨房の男社会。彼女は働きすぎで足が疲労骨折となりながらも、優秀な助手ニコラの献身的な働きに支えられ、大統領の信頼を得ていくのだが、なにかと料理長一派とぶつかる。

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一方、フランスの南極基地では、エリゼ宮を去ったあとのオルタンスが大統領の元料理人として、マスコミに追いかけられる。ともかく、彼女の作る料理が抜群に旨くて、隊員たちは食事のたびに目をキラキラ輝かせている。
マスコミ記者もオルタンスの料理に舌鼓を打つのだった。

エリゼ宮でのオルタンスの仕事が軌道に乗り始めたころ、彼女の作る料理が大統領の持病である糖尿病を悪化させたと、医者や栄養士がケチをつけ始める。さらに、トリュフの仕入れに使った交通費が個人的なものとされ、食材の値段が高すぎるとか、オルタンスの締め出し包囲網が狭められていく。そうして、ついにオルタンスは「やってられないわ」とエリゼ宮を出て行くのである。

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オルタンスの立場を理解している大統領は、厨房に行き言葉をかける。孤軍奮闘する女料理人と常に孤独で決断を迫られる大統領には相通じるものがあった。

南極基地では、オルタンスの任期が終わりに近づき、惜しまれながらのさよならパーティが開かれる。そしてオルタンスは、極上のトリュフを求めて新天地に旅立っていく。→人気ブログランキング

【食に関する映画】(サイト内リンク)
大統領の料理人』(12年)
シェフ! ~三つ星レストランの舞台裏にようこそ~』(12年)
二郎は鮨の夢を見る』(11年)
洋菓子店 コアンドル』(11年)
エル・ブリの秘密  世界一予約の取れないレストラン』(11年)
トースト~幸せになるためのレシピ~』(10年)
再会の食卓』(10年)
食堂かたつむり』(10年)
ラーメンガール』(09年)
女と銃と荒野の麺屋』(09年)
ジュリー&ジュリア』(09年)
ミラノ、愛に生きる』(09年)
幸せのレシピ』(07年)
UDON』(06年)
サイドウェイ』(04年)
フライド・グリーン・トマト』(91年)
料理長(シェフ)殿、ご用心』(78年)

2014年6月 6日 (金)

ゼロ・グラビティ

劇場で迫力を実感しながら堪能する作品である。いまさら嘆いても遅いが、この作品をDVDで観てもありがたみがない、あのとき観にいけばよかったと反省した。
あらすじは、主人公たちが宇宙の船外作業中に、宇宙ゴミに襲われて地上との連絡が途絶える。宇宙ステーションもスペースシャトルも破壊された極限の状況で、主人公がいかにして地球に帰還するかを描く。英米のロシアと中国への批判となっているところも見逃せない。
出演者は実質ふたりである。

1

宇宙空間での船外作業を行っているライアン(サンドラ・ブロック)、マット(ジョージ・クルーニー) 、シャリフに、ヒューストンから「膨大な量の宇宙ごみが流れてくるので至急船内に戻れ」との緊急指示が出る。しかし間に合わずシャリフは即死、ライアンとマットはなんとか助かり、宇宙船に戻ろうとする。

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Gravity
監督:アルフォンソ・キュアロン
脚本:アルフォンソ・キュアロン/ホナス・キュアロン
音楽:スティーヴン・プライス
アメリカ イギリス 2013年 91分

事の元凶はロシア。ロシアが自国の衛星を破壊したところ他の衛星も破壊され、膨大な量の宇宙ゴミが発生し、高速で拡散してしまったのだ。

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ヒューストンとの連絡が取れなくなり、再び宇宙ゴミに襲われふたりは自らの体をコントロールできなくなる。唯一残された道はふたりを結ぶ命綱を切ること。躊躇するライアンに構わずマットは自ら命綱を外して、ジョークを言いながら宇宙の闇に消えていく。

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ひとりぼっちになったライアンは、ISS(国際宇宙ステーション)に何とかたどり着くが、それもつかの間、ISSは火災に見舞われれ、さらに再び宇宙ゴミが高速で接近してISSを大破させてしまう。
なんとかロシアのソユーズに乗り込んだライアンは発進させようとするが、燃料切れでエンジンが作動しない。もはやこれまでと諦めたかけた、その時マットが現れて船内に入り、着陸時の逆噴射装置を利用して中国の宇宙船までの推進力とするよう助言する。

しかしマットはライアンの幻覚だった。
宇宙空間でひとりとなったライアンが幻覚を見たとしてもおかしくない。
観ている者は、マットが助けにきてくれると願っているところに、実際にマットが現れてほっと一息ついたところで、幻想と明かされて、やっぱりそんなこと宇宙ではあり得ないよなと思うのだ。
あとは、ただただライアンが無事で地球に帰還することを願う心理状態になっている。

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ライアンはマットの指示通りに中国の宇宙船に乗り込み、「ソユーズと同じ設計だ」とマットの言ったことを思い出し、スイッチ類を操作する。そうしてともかく地球にたどり着こうとするのだ。

本作には、ロシアの不手際が元凶となり宇宙船も宇宙基地も破壊され、アメリカ人が死亡し、ロシアのコピーの中国製宇宙船に乗って帰還するという、宇宙開発は国同士が協力して行わなければならないという平和的な意味が込められいるようでもあり、がさつなロシアとなんでもコピーしてしまう中国への揶揄も込められている。→人気ブログランキング
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