ドラマ

『8月の家族たち』

のべつ毒舌を吐く煮ても焼いても食えない母親を演じるメルリ・ストリープと、母親を何とか従わせようとするこれまた強烈な性格の長女を演じるジュリア・ロバーツのやり取りが凄まじい。
ピューリツァー賞を受賞した戯曲を映画化したもの。母娘喧嘩は『バージニア・ウルフなんか怖くない』の夫婦間の壮絶な言い争いを彷彿とさせる。アカデミー賞主演女優賞にメルリ・ストリープが、助演女優賞にジュリア・ロバーツがノミネートされた。

8月の家族たち ブルーレイ&DVD セット (初回限定生産/2枚組) [Blu-ray]
8月の家族たち
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監督:ジョン・ウェルズ
脚本:トレイシー・レッツ
原作:トレイシー・レッツ
音楽:カーター・バーウェル
アメリカ 2013年 121分 ★★★★★

灼熱の日が続く8月、オクラホマ州の田舎町に暮らす老夫婦の妻バイオレット(メルリ・ストリープ)は口腔癌を患い、医者から処方された薬で依存症になっている。夫のビバリー(サム・シェパード)はアルコール中毒で、二人の仲は最悪の状況にある。
ビバリーは妻の面倒をみるネイティブ・アメリカンのジョナを住み込み家政婦をして雇う。何もかもが気に入らないバイオレットは、ジョナをインディアンと呼んで侮蔑するが、ジョナはいたって冷静である。
ジョア役は『フローズン・リバー』でシングルマザーを好演したミスティ・アップハム。

何の前触れもなくビバリーが行方不明となり、知らせを聞いて夫婦の3人の娘が訪ねてくる。
長女バーバラ(ジュリア・ロバーツ)は夫と別居中で、14歳の娘の反抗に手を焼いている。次女は独り身でなにやら訳ありの恋愛をしている。三女は胡散臭い婚約者を連れ現れる。

そしてビバリーが水死体で発見される。
葬式の夜、バイオレットの妹も加え家族一同が顔を合わせる晩餐が始まるが、詮索好きのバイオレットによって、それぞれが抱える問題が明るみに出されていく。

何も解決されず、娘たちはほころびを抱えたまま、母親を残して実家を去っていく。最後まで、冷静さを失わないのはネイティヴ・アメリカンのジョナだけである。

灼熱の8月という設定が、崩壊されつつある家族たちの解決されない苦悩をことさら煽っている。→ブログランキングへ

『大統領の料理人』

ミッテラン大統領の女性料理人ダニエル・デルプエシュの実話をもとに作られた。南極基地のシーンとエリゼ宮でのシーンが交互に映し出される。大統領の料理人に抜擢された主人公は、そのあと南極観測基地の料理人になり、さらに新天地に向かう。

大統領の料理人 [DVD]
大統領の料理人 [DVD]
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Les saveurs du Palais
監督:クリスチャン・ヴァンサン
原案:ダニエル・マゼ=デルプシュ
脚本:クリスチャン・ヴァンサン/エチエンヌ・コマール
音楽:ガブリエル・ヤーレ
フランス  2012年 95分 ★★★★

フランスの田舎町でレストランを経営するオルタンス(カトリーヌ・フロ)は、大統領のプライベート料理人としてエリゼ宮へ招聘される。なぜ自分が選ばれたかを訊ねると、ジュエル・ロブションの紹介があったと告げられる。オルタンスは「そういえば、何かの会で名刺を交換したことがあったわ」とつぶやく。

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オルタンスを待ち受けていたのは、宮殿の料理のすべてを担当してきた厨房の男社会。彼女は働きすぎで足が疲労骨折となりながらも、優秀な助手ニコラの献身的な働きに支えられ、大統領の信頼を得ていくのだが、なにかと料理長一派とぶつかる。

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一方、フランスの南極基地では、エリゼ宮を去ったあとのオルタンスが大統領の元料理人として、マスコミに追いかけられる。ともかく、彼女の作る料理が抜群に旨くて、隊員たちは食事のたびに目をキラキラ輝かせている。
マスコミ記者もオルタンスの料理に舌鼓を打つのだった。

エリゼ宮でのオルタンスの仕事が軌道に乗り始めたころ、彼女の作る料理が大統領の持病である糖尿病を悪化させたと、医者や栄養士がケチをつけ始める。さらに、トリュフの仕入れに使った交通費が個人的なものとされ、食材の値段が高すぎるとか、オルタンスの締め出し包囲網が狭められていく。そうして、ついにオルタンスは「やってられないわ」とエリゼ宮を出て行くのである。

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オルタンスの立場を理解している大統領は、厨房に行き言葉をかける。孤軍奮闘する女料理人と常に孤独で決断を迫られる大統領には相通じるものがあった。

南極基地では、オルタンスの任期が終わりに近づき、惜しまれながらのさよならパーティが開かれる。そしてオルタンスは、極上のトリュフを求めて新天地に旅立っていく。→ブログランキングへ

【食に関する映画】(サイト内リンク)
大統領の料理人』(12年)
シェフ! ~三つ星レストランの舞台裏にようこそ~』(12年)
二郎は鮨の夢を見る』(11年)
洋菓子店 コアンドル』(11年)
エル・ブリの秘密  世界一予約の取れないレストラン』(11年)
トースト~幸せになるためのレシピ~』(10年)
再会の食卓』(10年)
食堂かたつむり』(10年)
ラーメンガール』(09年)
女と銃と荒野の麺屋』(09年)
ジュリー&ジュリア』(09年)
ミラノ、愛に生きる』(09年)
幸せのレシピ』(07年)
UDON』(06年)
サイドウェイ』(04年)
フライド・グリーン・トマト』(91年)
料理長(シェフ)殿、ご用心』(78年)

『ゼロ・グラビティ』

劇場で迫力を実感しながら堪能する作品である。いまさら嘆いても遅いが、この作品をDVDで観てもありがたみがない、あのとき観にいけばよかったと反省した。
あらすじは、主人公たちが宇宙の船外作業中に、宇宙ゴミに襲われて地上との連絡が途絶える。宇宙ステーションもスペースシャトルも破壊された極限の状況で、主人公がいかにして地球に帰還するかを描く。英米のロシアと中国への批判となっているところも見逃せない。
出演者は実質ふたりである。

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宇宙空間での船外作業を行っているライアン(サンドラ・ブロック)、マット(ジョージ・クルーニー) 、シャリフに、ヒューストンから「膨大な量の宇宙ごみが流れてくるので至急船内に戻れ」との緊急指示が出る。しかし間に合わずシャリフは即死、ライアンとマットはなんとか助かり、宇宙船に戻ろうとする。

ゼロ・グラビティ ブルーレイ&DVDセット(初回限定生産)2枚組 [Blu-ray]
ゼロ・グラビティ
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Gravity
監督:アルフォンソ・キュアロン
脚本:アルフォンソ・キュアロン/ホナス・キュアロン
音楽:スティーヴン・プライス
アメリカ イギリス 2013年 91分 ★★★★

事の元凶はロシア。ロシアが自国の衛星を破壊したところ他の衛星も破壊され、膨大な量の宇宙ゴミが発生し、高速で拡散してしまったのだ。

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ヒューストンとの連絡が取れなくなり、再び宇宙ゴミに襲われふたりは自らの体をコントロールできなくなる。唯一残された道はふたりを結ぶ命綱を切ること。躊躇するライアンに構わずマットは自ら命綱を外して、ジョークを言いながら宇宙の闇に消えていく。

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ひとりぼっちになったライアンは、ISS(国際宇宙ステーション)に何とかたどり着くが、それもつかの間、ISSは火災に見舞われれ、さらに再び宇宙ゴミが高速で接近してISSを大破させてしまう。
なんとかロシアのソユーズに乗り込んだライアンは発進させようとするが、燃料切れでエンジンが作動しない。もはやこれまでと諦めたかけた、その時マットが現れて船内に入り、着陸時の逆噴射装置を利用して中国の宇宙船までの推進力とするよう助言する。

しかしマットはライアンの幻覚だった。
宇宙空間でひとりとなったライアンが幻覚を見たとしてもおかしくない。
観ている者は、マットが助けにきてくれると願っているところに、実際にマットが現れてほっと一息ついたところで、幻想と明かされて、やっぱりそんなこと宇宙ではあり得ないよなと思うのだ。
あとは、ただただライアンが無事で地球に帰還することを願う心理状態になっている。

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ライアンはマットの指示通りに中国の宇宙船に乗り込み、「ソユーズと同じ設計だ」とマットの言ったことを思い出し、スイッチ類を操作する。そうしてともかく地球にたどり着こうとするのだ。

本作には、ロシアの不手際が元凶となり宇宙船も宇宙基地も破壊され、アメリカ人が死亡し、ロシアのコピーの中国製宇宙船に乗って帰還するという、宇宙開発は国同士が協力して行わなければならないという平和的な意味が込められいるようでもあり、がさつなロシアとなんでもコピーしてしまう中国への揶揄も込められている。→ブログランキングへ

『マリー・アントワネットに別れをつげて』

マリー・アントワネットに別れをつげて [Blu-ray]
Les adieux à la reine
監督:ブノワ・ジャコ
脚本:ブノワ・ジャコ
原作:シャンタル・トマ
音楽:ブリュノ・クレ
仏・スペイン  2012年  100分 ★★★

原作はフランスで最も権威あるフェミナ賞に輝いた、シャンタル・トマのベストセラー小説『王妃に別れをつげて (白水Uブックス) 』。フェミナ賞を、古くはロマン・ローランが『ジャン・クリフトフ』(1905年)で受賞している。

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1789年7月、フランス革命下のヴェルサイユ宮殿。
マリー・アントワネット王妃(ダイアン・クルーガー)の朗読係シドニー(レア・セドゥー)は王妃に心酔しており、王妃もシドニーに目をかけていた。王妃はポリニャック夫人(ヴィルジニー・ルドワイヤン)にぞっこん。ポリニャック夫人は、王妃の寵愛を受け特権と膨大な富を得ていた。シドニーから見ると同性愛的な三角関係にあった。

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民衆はバスチューユを陥落させ、出回ったギロチンリストには、筆頭に王妃、三番目にはポリニャック夫人の名があった。
その日、王妃は精神的に不安定な状態にあった。深夜になって、王妃の呼出しに応じないポリニャック夫人を再度説得する役目を買って出たシドニーは、夫人の侍女の制止を振り切って、寝室に強引に入る。そこで、シドニーは睡眠薬を服用して熟睡するポリニャック夫人の全裸の姿を目にするのだった。
うろたえながら逃亡の準備をする王妃を見守るシドニーに、王妃は「あなたを見捨てない」と告げる。

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翌日、王はヴェルサイユ宮殿にとどまるとの決意を王族たちに告げた。それは王族たちの運命が新政府の判断に委ねられることを意味する。絶望のあまり立ちすくむ王妃に、緑のドレスを纏ったポリニャック夫人が近づき、王族たちが見守るなか王妃と抱き合い、別の部屋へと消えて行く。

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王妃がポロニャック夫人に宮殿からの逃亡を勧めると、夫人はいとも簡単に応じる。王妃は自分を置いて逃げ出す夫人に複雑な思いを抱くが、夫人の影武者をシドニーを命じるのだった。捕まれば断頭台に上がるのはシドニーである。

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シドニーはポリニャック夫人の緑のドレスを身につけさせられ、ポリニャック夫人は召使の服装で馬車に乗り込む。やけくそ気味のシドニーは、夫人の制止を聞かず、すれ違う沿道の民衆に窓から手を振るのだった。→ブログランキングへ

『新約聖書  ~イエスと二人のマリア~』

新約聖書 ~イエスと二人のマリア~[DVD]
Maria Di Nazard
監督:ジャコモ・カンピオッティ
脚本:フランチェスコ・アルランチ
音楽:ガイ・ファーレイ
2012年  独・伊  204分  ★★★*☆

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策略をめぐらし権力の中枢にいる邪悪なヘロディア、その手先となり堕ちていきやがて改悛するマグダラのマリア、そして聖母マリアの3人の女性との関わりから描いたイエス・キリストの物語である。本作では、マグダラのマリアが娼婦となったのち改悛したという説教用に作られた話を採用している。途中で小休止があるが204分と長い。

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ヘロディア(アントニア・リスコヴァ)が率いる兵が、獰猛な犬を何匹も引き連れてナザレの村で幼いマリアを探し回るが、犬が隠れているマリアに近づくと急におとなしくなる。マリアには不思議な力が備わっていた。

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マグダラのマリア(パス・ベガ)の母親が姦通を夫に知られ、石打ちの刑で殺される。母を許さなかった父に反発するマグダラのマリアは、ヘロディアの誘いを受けていいなずけと別れ、エルサレムのへロデ大王の宮殿で暮らすことにする。マリア(アリッサ・ユング)も誘われるがヨセフとの結婚を控えていると断る。ふたりのマリアは仲がよかった。宮殿は酒池肉林の宴が毎夜開かれる伏魔殿のような所である。

大工のヨセフはマリアを一目見て気に入り求婚しマリアもあっさり承諾する。ところが、結婚をする前にマリアは天使から受胎を告知され、事はこんがらがる。ヨセフはマリアを疑うが、天使が現れ自らの手のケガがまたたく間に治ったこともあり、マリアを信じるのだった。

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一方、ヘロディアは前の夫と別れ、ヘデロ大王の次男アンティパスと再婚していた。ヘロディアはマグダラのマリアに大王の長男を誘惑させ、大王暗殺の嫌疑がかかるよう画策する。罠は見事に成功して、へロディアの思い通り長男は死罪になる。こうしてヘロディアの夫が世継ぎとなった。
マグダラのマリアは大王の家臣ヨアザルと結婚する。

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マリアの下腹部が大きくなり、近所の人々が白い目で見るなか、マリアとヨセフの婚姻の宴が開かれる。初めはためらっていたものの、まず子供たちが新婚夫婦の踊りに加わり、やがて大人たちも踊り出すのだった。

人口調査が行われるためヨセフは生まれ故郷のユダまで行くことになり、臨月が間近なマリアも旅に同行することになった。旅の途中、ベツレヘムの町でどこの宿も満杯なため仕方なく洞窟の厩で夜を過ごすことになり、そこでマリアはイエスを産み落とすのだった。

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東方で星を見てイエスの誕生を知った博士たちが、生まれたばかりのイエスに会いにくる。そのことを知ったヘロデ大王は、ユダヤの王は自分であると、イエスを捕らえる兵を出すのだった。
身の危険を察知したマリアたちはイエスを連れて、間一髪でベツレヘムをあとにしてエジプトに身を隠す。

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その後、成長したイエス(アンドレーアス・ピーチュマン)はユダヤの各地を遊歴して弟子を得ていった。カナンの地では、婚姻の最中にワインが足りなくなり、イエスが水をワインに変える奇跡を起こす。

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宮殿ではヘロディアの娘サロメの淫靡な踊りに対し、義父のアンティパスは「好きなものを求めよ」と褒美を与える。サロメは母の命を受け求めたのは、なんと「洗礼者(バプテスマ)ヨハネの斬首」であった。まさにこの親にしてこの娘ありである。マグダラのマリアが、ヨハネの罪をでっち上げたのは自分であると申出るが、聞き入れられずヨハネは斬首される。ヨハネは再婚したヘロディアを姦淫の罪を犯したと訴えていたのだった。ヘロディアは自らに不都合な人物を殺害していく悪女だ。

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王アンティパスに異を唱えたことでマグダラのマリアは宮殿を出ざるを得なくなり、たどり着いた娼窟で男と一夜を共にする。宮殿からの兵に居所を突き止められ、母と同じ姦淫の罪で石打ちの刑が行われようとするが、石が投げられるまさにそのとき、イエスが現れ「今まで罪を犯したことがない者が最初の石を投げなさい」というと、誰も石を投げずに去って行った。助けられた彼女はイエスの前に膝まづいて足を髪でぬぐうのだった。
この後マグダラのマリアはイエスの信奉者となる。

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イエスが十字架にかけられた経緯は次のようである。
ローマ帝国に近い立場の議会派(サドカイ派)の人々は、イエスに従う人々の反乱を恐れていた。また、イエスに従う人々の中にもイエスがローマからユダヤを解放してくれないことに不満を募らせる者がいた。そしてイエスが捕らえられる。
ユダヤの総督ピラトがイエスは嫌疑不十分であるとして無罪としたものの、ユダヤ教を批判するイエスに対しユダヤの人々は死刑を要求した。
反乱になることを恐れたピラトは、人々に極悪な殺人犯とイエスのどちらかを死刑にし他方を解放しようと取引をもちかけたのだった。「どちらを解放するか?」とのピラトの問いに、人々は「イエスを十字架に」と叫び、イエスは十字架に架けられることになった。

磔刑によりイエスが息を引き取るとき、宮殿のへロディアはヘビの大群に襲われる。

そして3日後、復活したイエスに最初に接したのはマグダラのマリアであった。そのときに、イエスが「私にすがりついてはなりません」と言ったかどうかは、本作では描かれていない。

エンディングのテロップで「全ての母に捧げる」とあるように、本作は聖母マリアの母性愛に焦点をあてて描かれている。→ブログランキングへ

→『不思議なキリスト教』 (講談社現代新書)11年
→『マグダラのマリア ―エロスとアガペーの聖女』(中公新書)05年

『パッチギ! Love & Peace』

パッチギ!LOVE&PEACE スタンダード・エディション [DVD]
監督:井筒和幸
脚本:羽原大介/井筒和幸
音楽:加藤和彦
日本  2007年  127分  ★★★☆☆

前作『パッチギ!』 (05年)の1969年から5年後、田中角栄の『列島改造論』が出版され(72年)、モハメド・アリがヘビー級王座を奪還し(74年)、佐藤栄作がノーベル平和賞を受賞し(74年)、ベトナム戦争が終結を向かえる(75年)頃の話。差別のなかで家族愛で結ばれる在日朝鮮人の生き様がテーマ。

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在日2世のアンソン(井坂俊哉)は息子チャンスの病気の治療のため、一家で京都から江東区枝川に引っ越してくる。アンソンは駅のフォームで京都時代の宿敵近藤が率いる大学応援団と朝鮮高校の乱闘にいあわせ、それに加わって大暴れする。電車の運転手・佐藤(藤井隆)の仲裁で乱闘は収まるが、そのことが原因で佐藤は国鉄をクビになってしまう。

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これをきっかけに佐藤はアンソン一家と親しくなり、アンソンの妹キョンジャ(中村ゆり)に思いを寄せるようになる。


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一方、キョンジャはアルバイトのホルモン焼き屋で弱小芸能プロダクションのスカウトを受け、芸能界に入ることを決意する。
芸能界のしきたりに馴染めず苦悩するキョンジャに淡々と接する先輩俳優の野村(西島秀俊)に次第に心を許していくが、そんな野村さえも朝鮮人に対する差別意識があることを知って、キョンジャは愕然とする。

戦争中、済州島で日本軍に徴兵されヤップ島に送られたアンソンの父親の回想シーンが、所々に差し挟まれている。これは結末への伏線である。

医師からアメリカでの治療しかチャンスを助けることができないとないと告げられたアンソンは、金を工面するために、佐藤を誘って韓国のヤクザに金塊を売る仕事に手を出すのだった。

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キョンジャは芸能界での実績を重ね、特攻隊の映画のオーデションを受けることになる。彼女はプロデューサー(ラサール石井)に気に入られるが、国籍がネックになってしまう。しかし彼女は覚悟を決めてプロデューサーが逗留しているホテルの部屋を訪れ、ヒロイン役を手にする。

映画のプレミアム試写会で、家族が見守るなか、キョンジャは映画と自らの父親の戦争体験とを重ね合わせ、自らが在日であることをカミングアウトする。会場は罵声が飛び交い騒然となり、2階に陣取っていた近藤率いる応援団とアリソンたちの大乱闘が始まるのだった。

場面が変わって、一家団欒で過ごすアリソンやキョンジャたちは、ベトナム戦争終結ののニュースを耳にして、「次はわれわれの番だ」というのだった。

在日への日本人社会の差別を強調しすぎていて白けてしまう。→ブログランキングへ

『存在の耐えられない軽さ』

存在の耐えられない軽さ [DVD]
The Unbearable Lightness of Being
監督:フィリップ・カウフマン
脚本:ジャン=クロード・カリエール/フィリップ・カウフマン
原作:ミラン・クンデラ
音楽:レオシュ・ヤナーチェク
アメリカ  1988年  171分 ★★★★☆

1968年のチェコ事件を背景に、ミラン・クンデナが書いた同名の世界的ベストセラー小説の映画化。 激動の時代に翻弄された若い男女が描かれている。「チェコ事件」は、チェコスロバキアの民主化、自由主義化運動「プラハの春」に対して、ソ連が指揮するワルシャワ条約機構軍がプラハに侵攻して、やがてチェコ全土を占領し民主化が制圧された事件である。

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腕のいい脳外科医のトマシュ(ダニエル・デイ=ルイス)は、女にすぐ手を出すプレーボーイである。画家のザビーナと深い関係にある。
そのトマシュは郊外の病院へ出張に出かけたときに、ウェートレスのテレーザ(ジュリエット・ビノシュ)に話しかける。それがきっかで、トマシュとテレーザは結婚する。原作では、トマシュがテレーザに一目惚れしたことになっている。

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ふたりは犬を飼い、テレーザが読んでいた『アンナ・カレーニナ』にちなんで、犬にはカレーニンと名付けた。

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やがてワルシャワ条約機構軍がプラハに侵攻してくる。
チェコ語でカヴァーされたビートルズの『ヘイ・ジュード』が流れる中、戦車が人々の抵抗を抑え込んでいく場面が描かれる。当時チェコでは『ヘイ・ジュード』が自由主義化運動のシンボリックな曲として歌われていた。

テレーザは、侵攻の様子を写真に撮りネガを外国人に手渡し、世界に知らせようする。人々の抵抗にもかかわらず、ソ連の締めつけは厳しくなり反対する者は弾圧された。
そんな状況にたまりかねたサビーニはジュネーブに逃れ、やがてトマシュとテレーザも続いた。

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「存在の耐えられない軽さ」というフレーズは、疎開先のジュネーブでも変わらず女を追いかけ回し、刹那的に生きるトマシュに対して、テレーザがぶつけたフレーズである。そうした軽い夫に、テレーザは将来が不安だといって、疎開先のスイスからソ連監視下のプラハにカレーニンを連れて舞い戻ってしまう。
それを追いかけてトマシュもプラハに戻るが、かつてオイディプスの神話にひっかけて書いた共産主義批判の論文がソ連当局の目に留まり、内容を撤回するよう圧力がかかる。しかし、腹をくくったトマシュは拒否する。トマシュは重い選択をしたのだった。このことで、脳外科医としての仕事が奪われてしまう。
ふたりは田舎に引っ越して自然の中でゆったりとした農家の暮らしをする。

一方、ザビーナは妻と離縁して彼女に求愛する大学教授を振り払って、アメリカに渡った。人とのしがらみを避けて、軽い生き方を選択したわけである。ある日、カリフォルニアで芸術活動を続けるザビーナのもとに、プラハから悲報が届く。トマシュとテレーザが事故死したと書かれてあった。→ブログランキングへ

存在の耐えられない軽さ (集英社文庫)
ミラン・クンデラ
集英社
売り上げランキング: 6,381

『SAYURI』

SAYURI [DVD]
SAYURI [DVD]
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Memoirs of a Geisha
監督:ロブ・マーシャル
脚本:ロビン・スウィコード(英語版)/ダグ・ライト
原作:アーサー・ゴールデン『さゆり』
音楽:ジョン・ウィリアムズ
アメリカ 日本  中国  2005年 146分  ★★★*

日本の芸者の物語であるにもかかわらず、主人公の芸者を中国系に割り当てたところが、WAPS(White Anglo-Saxon Protestant)の発想だと思う。中国系女優が演じる芸者はジャポニズムを摩訶不思議なものにして、それがかえって、彼女らの魅力を引き出しているのかもしれない。日本的過ぎないことが、かえって受け入れられたと思う。
本作は第78回アカデミー賞で、撮影賞、美術賞、衣装デザイン賞、作曲賞、録音賞、音響編集賞という「裏方部門の賞」を多く獲得している。

貧しい漁村に生まれた千代(大後寿々花)は、9歳の時に借金の形に置屋に売り飛ばされた。世界恐慌の頃である。
置屋はおかあさん(桃井かおり)と呼ばれる強欲なお女将が仕切っていて、千代は苛酷な下働きに明け暮れる。
千代は、先輩芸者の初桃(コン・リー)からいじめられれる日々を送っていた。それは初桃が幼い千代の芸者としての才能を見抜きそれに嫉妬していたからだ。

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ある日、彼女は街で会長(渡辺謙)と呼ばれる紳士に優しく声をかけられ、かき氷を食べさせてもらいハンカチをもらった。そのことが忘れられず、千代は会長にもう一度会うために、芸者になりたいと思うようになる。

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そして千代が15歳のときに、芸者の中の芸者と称えられる豆葉(ミシェル・ヨー)が、彼女を一流の芸者に育てたいと、お母さんに申し出る。豆葉は、流し目だけで旦那集をその気にさせる術を千代に伝授するのだった。豆葉の見込み通り、千代は芸者さゆり(チャン・ツーイー)として一流の芸者となり、数多くの男たちを虜にしていった。
やがてさゆりは、客として現われた会長と再会する。だが会長の親友である延(役所広司)がさゆりに魅了され、さゆりの思いとは裏腹に、水揚げは延が落札する。

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そして、日本は太平洋戦争に巻き込まれる。
世の中は芸者遊びどころではなくなった。さゆりは芸者を引退し、田舎に疎開することになった。そして日本は敗戦する。
さゆりは他の芸妓より上に行こうと思っていただろうし、ゆくゆくはおかあさんの置屋を継いで、安泰な生活を送りたいと思っていただろう。
敗戦で何もかもがめちゃくちゃになった。

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終戦後、延がさゆりを迎えにくる。延は、さゆりと豆葉を芸者として復活させ、アメリカ人を接待させ、商売を有利に運ぼうと考えていた。延の考え通り商売は順調に運ぶ。しかし、いざ彼がさゆりへの思いをぶつけると、彼女はそれを頑なに拒否した。
やがて、さゆりのもとへ会長が現れる。ふたりはお互いに抱いていた長年の恋心を、そこで初めて打ち明けるのだった。

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男は妻帯者、芸者はあくまで夜の女としての立場。これが純愛の物語となのだから、昭和は寛容な時代だった。
メインの芸者を演ずるチャン・ツーイーコン・リーは中国人女優、ミシェル・ヨーはマレーシア人であるが、中国系である。本作が封切られた頃、中国国内では中国人に芸者を演じさせるとは何事だとの騒動が起こった。芸者が売春婦であると誤解していたらしい。
もうひとつ、脇役には桃井かおり、工藤夕貴と日本人女優を当てている。それはいいとして、「メインの芸者にひとり日本人を起用すると、微妙な化学変化が起こり、もっといいものになったのではないか」というのは私の意見。→ブログランキングへ

『64(ロクヨン)』横山秀夫

64(ロクヨン)
64(ロクヨン)
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横山 秀夫
文藝春秋
売り上げランキング: 1,048
2012年10月 ★★★★*

D県警で繰り広げられる組織内闘争、無能なキャリアと表向きは従順に振る舞うが裏で反発する地元組との確執、マスコミ記者と広報課との情報開示をめぐる攻防、さらに未解決の幼児誘拐殺人事件、そこに主人公自らの娘の失踪事件がからみ、スケールの大きな重みにあるストーリーがうねるように展開していく。全編を通じて息が詰まりそうな緊迫感が続く圧巻の警察小説。

D県警では、14年前の昭和64年に起きた「翔子ちゃん誘拐事件」を「64」という符丁で呼んでいる。D県警の管轄内で起きたはじめての誘拐事件である。2000万円を奪われ7歳の少女は無残にも殺され、時効まで1年と少しと迫っている。

46歳の主人公三上義信は捜査二課で刑事としての実績を積んできた自負があった。ところが、畑違いの警務部広報官に異動を命じられる。主な仕事はマスコミ対応である。再び刑事の仕事に戻ることを願望している。広報改革に取り組んだ三上の努力が実を結びそうな矢先、交通事故を起こした女性が妊婦という理由で匿名とすることに、記者たちが猛反発した。

「64」事件の父親宅を警察庁長官が訪問するという。凶悪事件を何がなんでも解決する姿勢を世間に示すためだという。しかし父親は三上に長官の訪問を拒否する意向を伝える。一方、匿名騒動で頑なになったマスコミ各社は長官訪問の取材を拒否する姿勢を示す。三上はこのふたつの難問を解決しなければならない。

マスコミを抑えられない警務部、その陣頭指揮に立っているのは三上だ。一方、警務部は凶悪犯を逮捕できない刑事部の力量を暗に批判している。三上は刑事部と警務部に翻弄されどちらからも信用されず、またマスコミからも責められる苦しい立場に立たされている。

そんな中、「64」事件にまつわる隠蔽された警察の不祥事が書かれた「幸田メモ」の存在が見え隠れしてくる。
自身の出世と保身しか頭にないキャリアの理不尽に堪えながら、三上はマスコミとの妥協点を模索する。父親が面会拒否する理由とはなんなのか。三上は先輩や同僚、後輩に会い、情報を得ることで、事態を収集し解決する糸口をみいだしていく。→ブログランキングへ

『震える牛』 相葉英雄

震える牛 (小学館文庫)
相場 英雄
2013年5月
売り上げランキング: 5,271
★★★★☆

食品偽装、BSE問題、大企業の独禁法抵触などを扱った社会派サスペンス小説。
主人公の警部補が進める捜査過程を中心に描き、それと並行して女性ジャーナリストが巨大企業のスキャンダルを追いかけ、終盤で両者が出会い犯罪の全貌が明らかにされていく。

田川警部補は高卒の叩き上げ、迷宮入りしそうな未解決事件ばかりが回ってくる警視庁捜査一課継続捜査班に所属する。田川は、現場周辺を丹念に聞き込む「地取り」、事件関係者のつながりを徹底的に洗う「鑑取り」の捜査手法を得意とする。この手法で得られた情報を蛇腹の分厚い手帳に書き込み、メモ魔の異名がある。
田川家では、事件の捜査を始める前と事件が解決したときに、同僚の池本警部補を呼んで、すき焼きパーティが開かれる。
作者は、こんなところにも本作のテーマである「牛」を登場させている。

田川は発生から2年が経ち未解決となっている「中野駅前居酒屋強盗殺人事件」の捜査を命じられる。黒づくめの目出し帽をかぶった男が「マニー、マニー」がと叫びながら店長に切りつけ売上金を奪い、刃物で客ふたりの首を刺し殺害した。初動捜査では犯人を「物盗りの外国人」に絞っていた。

一方、インターネット・ビズ・トゥディの女性記者鶴田真純は、大企業オックスマートの独禁法への抵触疑惑を調査している。
2000年に大店法が施行され、地方都市の郊外に大型ショッピングセンターが建設され、商店街は破壊されていった。
鶴田がオックスマートにこだわる理由は、妹が同社が展開するショッピングセンターの建設にからんで、不幸な亡くなり方をしたからである。

田川たちは地道な捜査を積み重ねていく中で、実は計画的な殺人事件であると断定した。殺害されたのはやくざの顔を持つ産廃業者、仙台に住む獣医師である。ふたりのつながりを探ろうと、田川たちは新潟へ仙台へと捜査の手を広げる。
一方、鶴田は食品偽装とオックスマートとの関連を調べていく。

食品偽装が浮かび上がり、オックスマート社の抱える闇、さらにBSE問題、警視庁や政界と企業の癒着の問題も絡んで、大きなスケールでストーリーは展開していく。ブログランキングへ