対談

『語りあかそう』ナンシー関

対談集『無差別級』『超弩級』『超高校級』(いずれも河出書房から出版されたペーパーブック)に収録されたものから、9つの対談がピックアップされている。
どのような形であれ、ナンシー関連本がときどき出版されるのは、ファンとしては、彼女の爽やかな天才的毒舌にあらためて触れることができて 嬉しい。

9編のなかでも、with 林真理子『吉川十和子の婚約騒動では膝抜けるほど打っちゃった』は、両者がっぷり四つの丁々発止ぶりが抜群に面白い。

語りあかそう (河出文庫)
語りあかそう
posted with amazlet at 14.05.11
ナンシー関
河出書房文庫
2014年5月 ⭐5つ

消しゴム版画、キレのある文章、ナンシー関という人をなめたペンネーム、ナンシーに関する三つの秘密について、次のように書かれている。

棟方志功の出身地というお国柄(?)もあって、ナンシーが通う高校の授業には、版画が取り入れられていた。そんな風土だから、クラスで消しゴムスタンプが流行ったことがあって、ナンシーは断然うまかったという。

ナンシーの書く文章は、本人の分析によれば、テープに録音してなども聞き直した、オールナイトニッポンのビートたけしのしゃべりが、影響しているという。

ナンシー関というペンネームは、本名の関直美から、いとうせいこうがつけたもの。消しゴム版画家って変なのに、ナンシーという名前で、もっと変にしたいと思ったからつけたとのこと。

このあたりのことは、『評伝 ナンシー関』(横田増生著  朝日新聞出版 2012年)に、詳しく書かれている。→ブログランキングへ

『六つの星星 川上未映子対話集』川上未映子

対談は聞き手が相手の話を引き出すというパターン、つまり「インタビュー型」と、対談者がおよそ同等の立場で話すことによって話が広がったり横にそれたり、あるいは予期せぬ展開になったりする「化学反応型」があると思う。
本書は対談ではなく対話集だから、はじめから化学反応を狙っている。

六つの星星 川上未映子対話集 (文春文庫)
川上未映子(Kawakami Mieko
文春文庫
2012年9月 ★★★★

斉藤環(精神科医)とは、斎藤が自説を展開し川上を精神分析の俎上にのせようとするものだから、それはちょっと困ると川上が躊躇する。話がかみ合っていない印象がある。

福岡伸一(分子生物学者)とは、先生と生徒の関係。福岡には散文的な抱擁力あるから質問に臨機応変に応じている。生命も言葉も破壊を必要とする。新しい生命を生み出すために古いものは死滅するし、新しい文体を生むには、文章をまずバラバラにしてみるというあたりで話が一致する。

松浦理英子(作家)とは、松浦の現代語訳『たけくらべ』の話題からジェンダーの問題になり、話は化学変化を起こす。

穂村弘(歌人)とは、種村の「ワンダーとシンパシー」という尺度で話が進む。「川上さんはわりといつも同じようにしゃべるでしょう。相手が詩人でも、たぶんホステス時代のお客でも」という、川上のフラットで壁を作らない話し方を指摘する。

多和田葉子(作家)とは、ことばについて語り合う。ことばや漢字の持つ不思議なイメージをそれぞれが披露。他人の書いた文章は読みにくいのは当たり前、「読みにくかったとか読みやすかったと評するのは的が外れている」というのは納得できる。

永井均(哲学者)とは、前半では永井の哲学と倫理学についての話が進み、後半は川上の小説『ヘブン』について分析する。川上の意図するところと相手の理解が異なる点を掘り下げているところが面白い。→ブログランキングへ
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【川上未映子の作品】
〈小説〉
『愛の夢とか』(2013年 講談社)
『すべて真夜中の恋人たち』(2011年 講談社)
『ヘヴン』(2009年 講談社)→講談社文庫 
乳と卵』(2008年 文藝春秋)→文春文庫
わたくし率 イン 歯ー、または世界』(2007年 講談社)→講談社文庫
〈随筆・対談集〉
『安心毛布』(2013年 中央公論新社)
『人生が用意するもの』(2012年 新潮社)
『魔法飛行』(2012年 中央公論新社)
『ぜんぶの後に残るもの』(2011年 新潮社)
『発光地帯』(2011年 中央公論新社)→中公文庫
『夏の入り口、模様の出口』(2010年 新潮社)→『オモロマンティック、ボム!』と改題(新潮社文庫)
六つの星星 対話集』(2010年 文藝春秋)→文春文庫
『世界クッキー』(2009年 文藝春秋)→文春文庫 
『そら頭はでかいです、世界がすこんと入ります』(2006年 ヒヨコ舎)→講談社文庫 
〈詩集〉
『水瓶』(2012年 青土社)
『先端で、さすわ さされるわ そらええわ』 (2008年 青土社)

【斉藤環】
関係する女 所有する男』(2009年 講談社現代新書)
母は娘の人生を支配する―なぜ「母殺し」は難しいのか』(2008年 NHK出版)

【福岡伸一】
深読みフェルメール』朽木ゆり子×福岡伸一(2012年 朝日新書)
フェルメール 光の王国 (翼の王国books)』(2011年 木楽舎)
できそこないの男たち』(2008年 光文社新書)
生物と無生物のあいだ』(2007年 講談社現代新書)

【永井均】
なぜ人を殺してはいけないのか?』永井均×小泉義之(2010年1月 河出文庫)