ハンチバック 市川沙央
2023年上半期、第169回芥川賞受賞作。
主人公の井沢釈華は先天性の筋肉疾患をかかえる40代の重度身障者である。
14歳のときに気管切開を受け、それ以来人工呼吸器の世話になっている。
こだわりのある身障者の性が描写される。
極度に湾曲したS字の背骨はだから、ベッドは左側からしか降りられない。右を見ようとしても首が動かない。冷蔵庫の上段にも下段にも手を伸ばせない。右足はつま先だけが床につくから、跛行にも程がある歩き方になる。
ハンチバックとは背骨が曲がった「せむし」という意味。
ハンチバック 市川沙央 文藝春秋 2023年6月 96頁 |
住まいはグループホームの10畳の自室で、両親はグループホームのほか数棟のマンションと多額の資産を残してくれた。したがって経済的には至って裕福である。
食事は食堂で他の身障者と一緒に摂る。日常生活は介護人の世話が必要である。
釈華はコタツ記事ライターで、週に何本かの記事を納入している。
コタツ記事とは、取材せずに、ほとんどネット上の情報のつぎはぎで粗製濫造された記事。1記事3000円で、稼いだ金は全額寄付している。
生まれ変わったら高級娼婦になりたいと呟くアカウントには誰からも「いいね」がつかない。学歴は中卒だが通信大学は2校目に在籍しているから、40歳過ぎても大学生だ。
紙の本を1冊読むと、本の重さと姿勢の関係で体に著しく負担がかかる。
背骨は曲がり肺を潰し頭をぶつけて体は生きるために壊れてきた。生きていれば生きるほど体はいびつに壊れていく。
そんな釈華の望みは妊娠してそして堕胎すること。出産は体が持たないし育てることができないからだという。
そして望みをかなえようと行動に出る。→人気ブログランキング
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