連作短篇

『オリーブ・キタリッジの生活』エリザベス・ストラウト

数学教師のオリーヴ・キタリッジ先生は不愛想で高飛車でおまけに癇癪もちである。そんなオリーヴに薬局を経営する夫のヘンリーや周りはどうつき合うのか。体が大きいオリーヴはどんな波乱を巻き起こすのか。しっぺ返しに対してどのように振舞うのか。

オリーヴ・キタリッジの生活 (ハヤカワepi文庫)
エリザベス・ストラウト/小川高義
ハヤカワepi文庫
2012年 ✳︎✳︎✳︎✳︎✳︎ 売り上げランキング: 38,866

メイン州の海辺のクロズビーという架空の街で暮らす人びとの生活を描いた13の連作短篇。オリーヴの40歳代から70代の半ばまでが描かれる。短篇の一つ一つに、情報がふんだんに詰まっているので、まるでそれぞれが長編を読んだような重厚さである。上から目線の女性を描く力量に賛辞を送りたい。

オリーヴは、反抗する息子のクリスをかかえて、子育てがうまくいっていないと感じている。人がいい温厚なヘンリーも堪忍袋の緒が切れることもある。教師から解放されたあとも、教師という目を通して物事を見てしまう。
やがて足の医者になった息子が猛獣みたいな女医と結婚する。夫とともに強盗事件の巻添えをくう。夫は脳溢血で介護施設に入り、やがて夫を看取る。音信がなかった息子がいつの間にか離婚し、子持ちの女と再婚している。息子から妊娠中の妻の手伝いを頼まれ、NYに出ていく。狭くて古いアパートに長くはいられない。
60代になって新しい出会いがあるが、なにしろ一筋縄ではいかない性格なのだ。それでも、70歳代半ばになったオリーヴは相変わらずドーナッツ好きで、当然のことながら瞬発力がなくなっている。小躍りして歓喜の声をあげるような楽しいことはなかったけれど、いくつかの困難をなんとか乗り越えてきた。

愛すべきキタリッジ先生を40代から見守ってきた読者にとって、ひと安心というところにたどりつく。
キタリッジ先生と似たような性格の女性はそう珍しくはない。→人気ブログランキング

『小暮荘物語』三浦しをん

小田急線の世田谷代田駅から徒歩5分、木造2階建のオンボロアパート小暮荘に関わる人びとを描いた短編連作集。なにかが終わりなにかが始まる、登場人物たちのそれぞれの人生の一コマが、凝縮されて描かれていて、厚い長編の読後感がある。
性が隠れたテーマだ。

木暮荘物語 (祥伝社文庫)
木暮荘物語
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三浦 しをん
祥伝社文庫
2014年10月

小暮荘の大家は、70歳過ぎにもかかわらずセックスをしたいという強い願望で悶々としている。
同棲中の繭は花屋に勤めている。3年前に姿を消したカメラマンの並木が突然現れて、小菅荘の繭の部屋に居候する奇妙な状況になる。
サラリーマンの神崎は、屋根裏から複数の男が出入りする女子大生の部屋を覗き見することが日課となった。神崎には、だらしないバカ女子大生としか思えない光子は、神崎が覗いていることを知っている。
以上の4名が小暮荘に住んでいる。
その光子のもとに、同級生が生んだばかりの乳飲み子を預けていった。小暮荘の住人はその赤ん坊に振り回される。

トリマーの美彌は、小暮荘の前を通るたびに、庭を走り回る犬にシャンプーをしたいと思っていた。駅の柱に水色のキノコのような突起物が見える者同士の、美彌とヤクザの男は、ヤクザの愛犬を通して交流する。
最近、夫の入れるコーヒーは泥の味がすると、繭は花屋の妻から打ち明けられた。繭と妻は深夜に家を抜け出す夫の後をつけた。
並木は、繭が勤める花屋をストーカーと疑われない程度にチェックしていた。謎の金持ちのニジコは並木に声をかけ、並木はニジコのマンションで寝泊まりするようになる。ふたりは繭の小暮荘からの引越しを遠巻きに見届けて、並木は繭のことが吹っ切れる。

小暮荘物語
舟を編む
舟を編む』(DVD)