連作短篇

オリーヴ・キタリッジ、ふたたび エリザベス・ストラウト 

前作『オリーヴ・キタリッジの生活』では、オリーヴの40歳代から70歳代半ばまでを描いている。オリーヴはアメリカ・メイン州の架空の町クロズビーで、数学の教師として働いていた。大柄な女性で不愛想なところも高飛車なところもあり、おまけにちょっとした癇癪もちだが、驚くほどの正直者。前作ではニューヨークに住む足医の息子との関係が気まずくなった。
そのオリーヴが帰ってきた。本作ではオリーヴの74歳から86歳までを描いている。夫を亡くしたオリーヴは、かつて大学教授だったジャックとつきあうようになりやがて結婚する。
本書は13編の連作短編の形で、オリーヴが中心だったり、ジャックが主人公だったり、あるいはオリーヴやジャックがちらりと顔を出してたりしてストーリーは進む。老いることの悲しさや辛さ、そして喜びが描かれている。
65913f7803184a71ad50959c74a82505オリーヴ・キタリッジ、ふたたび
エリザベス・ストラウト/小川高義
早川書房
2020年 436頁

「逮捕」
74歳のジャックは妻を亡くして6年になる。レスビアンの娘に電話した。バーで1杯やってから帰る途中にスピード違反で警察に捕まった。ちょっとしたことで知り合いになったオリーヴからメールがきた。メールのやりとりで、不倫をしたことまで書いてしまった。

「産みの苦しみ」
オリーヴは、訳のわからないことを口にするジャック・ケニソンと仲良くなった。
オリーヴが、ジャックに電話をかけると家に来ないかという。ジャックは襲わないから泊まっていってくれという。オリーヴは承諾した。眠れなかった。

「母のない子」
息子夫婦が、ニューヨークから3人の子どもを連れて2泊3日で泊まりに来た。
嫁は傍若無人で、子どもたちは上の2人は連れ子で愛想がない。1番下の2歳のヘンリーはオリーヴの亡き夫の名前がつけられて愛想があった。手編みの帽子をプレゼントした。
なんとか2日間が終わり一家が帰る段になって、結婚することになったと息子に言うと、息子は不機嫌になった。ジャックはスポーツカーでやってきた。ジャックが挨拶するが、息子のクリストファーのよそよそしさといったらなかった。一家が帰ったあと帽子が外に捨てられていた。いやはや、難儀な話だ。

「ペディキュア」
ジャック79歳、オリーヴ78歳、11月、1時間ほどのドライヴに出かけた。
取り止めのない話をして、ペディキュアをしたことを話した。オリーヴは体が大きいので、自分で爪を切れなくなったことを悲しんでいた。
オリーヴはよく喋る。それをジャックは聴いている。オリーヴ自身は、相手が興味を持てそうにない取り止めのない話をしていることがわかっている。ジャックは、オリーヴの話を受け入れている。「うひゃあ」とジャックは言って、ジャックの話にオリーヴは「あらら」と相槌を打った。
帰り道にジャックはオリーブと軽い口喧嘩になって。浮気の相手が悪いということで攻撃しあった。家に帰って、一人でウイスキーを飲みながら死んだ妻を思い出した。寝ぼけて、オリーヴにここは自分の家だと諭された。

「詩人」
84歳になったオリーヴは、街のあちこちに顔を出す。ダイナーで朝食を食べていると、郷里出身の女詩人アンドレアを見かけた。オリーヴは席を移って話し込む。詩人は月並みな話には興味を示さない。息子について話すと乗ってきた。
理容室に髪に切りに行くと、アンドレアが交通事故に遭い命に別状はないが重篤だという。翌日雑誌に掲載されたアンドレアの詩を読んだ。そこには、オリーブの言ったことがそのまま書かれていた。
オリーヴはアンドレアのフェイスブックに、「死ななくて良かったね」と書き込んだ。

「心臓」
オリーブは心臓発作を起こして意識がなくなり救急病院のICUにいる。意識を取り戻し、息子が見舞いにきた。息子は優しく接してくれた。
ICUから出て歩行練習が始まって便が出なかった。ガスが出て、ベッドの上で大便を漏らしてしまった。看護師も、主治医も全く驚かない。抗生物質のせいだということになった。
退院すると、4人の介護人が次々と来た。4月のある日の午後、オリーブはポーチに出て腰をかがめタバコの吸い殻を拾おうとして前のめりになって転んだ。冷たい雨が降った。自分にオリーヴ起きなと言ったが、だめだった。
介護人のベティが吸ったタバコの吸い殻を見つめていてそうなったのだ。ベティがやってきたので怒鳴りつけてやろうと思ったけれど 、3人の子を抱えて奮闘している話を聞いて、よく頑張っていると励ました。

「友人」
オリーヴは老人ホームに入った。バーバラが話しかけてきた。食堂に行くとバーバラが手を振った。そのバーバラが死んだ。
イザベルと友達になった。オリーヴは、ときにオムツをするようになって恥ずかしかったが、イザベルのバスルームの棚にも紙おむつが置いてあった。そしてイザベルも死んだ。→人気ブログランキング
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オリーヴ・キタリッジ、ふたたび/エリザベス・ストラウト/小川高義/早川書房/2020年
オリーヴ・キタリッジの生活/エリザベス・ストラウト/小川高義/ハヤカワepi文庫/2012年

オリーブ・キタリッジの生活 エリザベス・ストラウト

数学教師のオリーヴ・キタリッジ先生は不愛想で高飛車でおまけに癇癪もちである。そんなオリーヴに薬局を経営する夫のヘンリーや周りの人たちはどうつき合うのか。体が大きいオリーヴはどんな波乱を巻き起こすのか。しっぺ返しに対してどのように振舞うのか。
Photo_20201117083001オリーヴ・キタリッジの生活
エリザベス・ストラウト/小川高義
ハヤカワepi文庫
2012年

メイン州の海辺のクロズビーという架空の街で暮らす人びとの生活を描いた13の連作短篇。オリーヴの40歳代から70代の半ばまでが描かれる。短篇の一つ一つに、情報がふんだんに詰まっているので、まるでそれぞれが長編を読んだような重厚さである。上から目線の女性を描く力量に賛辞を送りたい。

オリーヴは、反抗する息子のクリスをかかえて、子育てがうまくいっていないと感じている。人がいい温厚なヘンリーも堪忍袋の緒が切れることもある。教師から解放されたあとも、教師という目を通して物事を見てしまう。
やがて足の医者になった息子が猛獣みたいな女医と結婚する。夫とともに強盗事件の巻添えをくう。夫は脳溢血で介護施設に入り、やがて夫を看取る。音信がなかった息子がいつの間にか離婚し、子持ちの女と再婚している。息子から妊娠中の妻の手伝いを頼まれ、NYに出ていく。狭くて古いアパートに長くはいられない。
60代になって新しい出会いがあるが、なにしろ一筋縄ではいかない性格なのだ。それでも、70歳代半ばになったオリーヴは相変わらずドーナッツ好きで、当然のことながら瞬発力がなくなっている。小躍りして歓喜の声をあげるような楽しいことはなかったけれど、いくつかの困難をなんとか乗り越えてきた。

愛すべきキタリッジ先生を40代から見守ってきた読者にとって、ひと安心というところにたどりつく。
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オリーヴ・キタリッジ、ふたたび/エリザベス・ストラウト/小川高義/早川書房/2020年
オリーヴ・キタリッジの生活/エリザベス・ストラウト/小川高義/ハヤカワepi文庫/2012年

小暮荘物語 三浦しをん

小田急線の世田谷代田駅から徒歩5分、木造2階建のオンボロアパート小暮荘に関わる人びとを描いた短編連作集。なにかが終わりなにかが始まる、登場人物たちのそれぞれの人生の一コマが、凝縮されて描かれていて、厚い長編の読後感がある。
性が隠れたテーマだ。
Photo_20201202084101木暮荘物語
三浦 しをん
祥伝社文庫
2014年

小暮荘の大家は、70歳過ぎにもかかわらずセックスをしたいという強い願望で悶々としている。
同棲中の繭は花屋に勤めている。3年前に姿を消したカメラマンの並木が突然現れて、小菅荘の繭の部屋に居候する奇妙な状況になる。
サラリーマンの神崎は、屋根裏から複数の男が出入りする女子大生の部屋を覗き見することが日課となった。神崎には、だらしないバカ女子大生としか思えない光子は、神崎が覗いていることを知っている。
以上の4名が小暮荘に住んでいる。
その光子のもとに、同級生が生んだばかりの乳飲み子を預けていった。小暮荘の住人はその赤ん坊に振り回される。

トリマーの美彌は、小暮荘の前を通るたびに、庭を走り回る犬にシャンプーをしたいと思っていた。駅の柱に水色のキノコのような突起物が見える者同士の、美彌とヤクザの男は、ヤクザの愛犬を通して交流する。
最近、夫の入れるコーヒーは泥の味がすると、繭は花屋の妻から打ち明けられた。繭と妻は深夜に家を抜け出す夫の後をつけた。
並木は、繭が勤める花屋をストーカーと疑われない程度にチェックしていた。謎の金持ちのニジコは並木に声をかけ、並木はニジコのマンションで寝泊まりするようになる。ふたりは繭の小暮荘からの引越しを遠巻きに見届けて、並木は繭のことが吹っ切れる。→人気ブログランキング

小暮荘物語
舟を編む
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