ベストセラー

『言ってはいけない 残酷すぎる真実』 橘 玲

ベールをかぶされてうやむやにされていること、誤解されて認識されていること、有名な学説が間違いであったこと、宗教などによってねじ曲げられていること。
これらについて、遺伝進化学、進化心理学、認知心理学、犯罪心理学、統計学、脳科学などの分野の論文や著作を紹介し、タブーを表沙汰にしたのが本書である。
扱っているテーマは広範囲わたり、データに対する解説が明快でわかりやすい。

言ってはいけない 残酷すぎる真実 (新潮新書)
橘 玲
新潮文庫  2016年4月
売り上げランキング: 386

知能や容姿、犯罪者としての素因や病気(精神病も含む)、性格(こころ)までもが、遺伝子で決まるという、身も蓋もない現実を見せられる。
この現実を突きつけられて動揺するのは、教育関係者とフェミニストと子育て中の親たちだろう。

解説されたテーマを列挙すると、
・3歳児を対象とした調査で、刺激により脈拍数が増加しない子どもは反社会的な素因がある。
・同じく発汗しない子どもは良心を学習しない。
・黒人は平均より1SDくらいIQが低い。
・アシュケナージ系ユダヤ人(ドイツあたりに住んでいた)は知能が高い。
・繰り返し性犯罪を犯す人物や遺伝的に犯罪者の素因を持つ人物が特定できる。
・顔の横幅が広い人は面長の人より攻撃的である。(→『サイコパス』)
・美人はブスに比べ生涯3600万円多く稼ぐ。ブスは平均的な女性に比べ1200万円損をする (『美貌格差』ダニエル・S.ハマーメッシュ 東洋経済新報社 2015年)
・ボーヴォワールは「人は女に生まれるのではない。女になるのだ」と書いたが、この仮説は社会実験によって否定されている。
・フロイトのエディプス・コンプレックスはデタラメ。
・旧石器時代の人類は集団内の女を男たちで共有する乱婚だった。彼らは別の部族と出会うと女を交換し、新しく集団に迎い入れた女は乱行によって歓迎される。
・男性が、短時間で射精するのは、女性が大きな声を上げる性交が危険だからだ。
女は大きな声をあげることで他の男たちを興奮させ呼び寄せる。女は一度に複数の男と効率的に性交し多数の精子を膣内で競争させることができた。その為には、よがり声だけでなく、連続的なオルガスムが進化の適応になる。
・別の家庭で育てられた一卵性双生児の類似性から、心における遺伝の影響は極めて大きい。
・別々の家庭で育った一卵性双生児はなぜ同じ家庭で育ったと同様によく似ているのか、子育ては子どもの人格形成にほとんど影響を与えない。子どもたちは、友だちのなかでグループの掟に従いながら遺伝的要素を土台として自分のキャラを決めていく→人気ブログランキング

『夫のちんぽが入らない』 こだま

テレビで、今やベストセラーとなった本書のタイトルが「あり」か「なし」かという討論をやっていた。出版に際しこのタイトルでは売れないという出版社内部の意見があったが、あえて踏み切ったという。本書は、著者が同人誌に書いた同名のエッセイを私小説にしたもので、タイトルをそのままにした賭けは大正解となった。番組での小説自体の評価はいたって好評だった。
早速、本屋で探したが見当たらない。店員に声をかけるのは憚れられたので、アマゾンに注文したら翌日に届いた。
本書を読んでいるときに「なに読んでいるの?」と不意に訊かれても、タイトルがたやすくバレない気配りがされた装丁になっている。この堂々としていないところが、小説の内容とマッチしていていい。

主人公は、大学時代から同棲していた1学年上の男性と結婚した。
夫は高校の教師、主人公は小学校の教諭になった。夫とのセックスは、はじめからうまくいかなかった。何度試みても入らない。この「夫のちんぽが入らない」問題をずっと引きずっていく。

夫のちんぽが入らない
こだま
扶桑社 2017年1月
売り上げランキング: 36

夫は風俗に通い家ではポルノビデオを観ていたが、自分に負い目を感じている主人公は見て見ぬふりをし、結婚4年までは平穏だった。

受け持ったクラスが学級崩壊し、精神的に追い詰められた頃から、歯車が狂いだした。
主人公は崩壊したクラスを立て直すことができず、精神的に限界に達し退職した。
日記サイト(実は出会い系サイトだった)で知り合った男たちとつきあい、不思議なことに、その男たちとのセックスはうまくいった。
身体の節々が痛くなり、自己免疫疾患と診断され、薬物治療がはじまった。
子どもの頃からの母親との確執は解決されず、自殺を考えるような心境に追い込まれてしまう。
やがて、夫がパニック障害となり「やる気の出る薬」を飲みはじめた。
夫との間に性的な関係はまったくなくなった。

夫との出会いから20年経った今、大学生の時に周りから言われたように「兄妹のような関係」で、暮らしていくことになったところで終わる。
子どもを産もうと医療機関を訪れたにもかかわらず、「ちんぽが入らない」ことを医師に相談しなかったのは納得がいかないが、筆の力でねじ伏せられてしまう。 →人気ブログランキング

本書は、学資保険を勧める保険外交員と母親に言いたいことで、締めくくられている。〈私は目の前の人がさんざん考え、悩み抜いた末に出した決断を、そう生きようとした決意を、それは違うよなんて軽々しく言いたくはないのです。人に見せていない部分の、育ちや背景全部ひっくるめて、その人が現在あるのだから。それがわかっただけでも、私は生きてきた意味があったと思うのです。〉
普通でない夫婦の奮闘記である。