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『ルポ ネットリンチで人生を壊された人たち』 ジョン・ロンソン

著者はネットリンチにあった人物やネットリンチを仕掛けた人物に直接会って話を聞いている。
過去には、犯罪者に手かせ足かせをして晒し者にする、という公開羞恥刑が各国に存在したが、およそ180年前に廃止された。ところが、最近SNSの普及で公開羞恥刑が復活しているという。著者は、ネットリンチを公開羞恥刑というキーワードで解明しようとする。

まず著者は自らの経験を披露する。
著者はツイッターの成りすましに悩まされた。犯人の3人と面会し、そのやりとりをYouTubeにアップロードしたところ、犯人たちに対する非難が寄せられ、成りすましが止んだという。3人の職業はネットに関する研究者だった。著者はこのエピソードで、ソーシャルメディアは攻撃される武器にもなるし、身を守る武器にもなることを知ったという。

ルポ ネットリンチで人生を壊された人たち (光文社新書)
ジョン・ロンソン/ 夏目大 訳
光文社新書  2017年2月

著名なノンフィクション作家のベストセラー本に、出典がはっきりしないボブ・ディランの言葉がいくつかあると指摘された 。けっきょく捏造だった。そのほか他人のブログからの盗用もあった。
捏造の暴露記事が発表されるや、ジャーナリストはネットで徹底的に叩かれ、雑誌『ニューヨーカー』のスタッフライターの職を辞さざるをえなくなった。そして、彼はキャリアも地位もすべてを失った。

ネット企業の広報部長である白人女性が、イギリスからアフリカに向かうトランジェントで、人種差別的なツイートを流した。「アフリカに向かう。エイズにならないことを願う。冗談です。言ってみただけ。なるわけない。私、白人だから!」
ファーストクラスに乗っていると書いたことも反感を買ったのかもしれないが、彼女はネットリンチにあい、職を失い社会的に抹殺された。
攻撃する者にとって、 彼女が本当に特権階級であるかどうかはどうでもいい。実際、彼女は特権階級でもなければ、人種差別主義者でもなかった。ただ、そう見さえすれば十分なのだ。

公開羞恥刑を受けた後に、立ち直る機会を得た人もいる。
ナチスの制服を着た複数の女性とのSM乱交プレーを、新聞に暴露された国際自動車連盟の会長の例がある。
彼は反論する。セックスの時は誰もが多かれ少なかれ妙なことをするものではないだろうかと。
「どれほど恥ずかしいことがあっても、堂々としていれば大丈夫」ということを証明したお手本のような人物である。
男性が合意の上でセックスしている限り、セックススキャンダルは攻撃されないことは、次の事例でも示される。かつてアメリカのメイン州で69名の売春の顧客リストが公開され、裁判で罰金刑が課せられたが、公開羞恥刑にさらされた人物はいなかった。

著者はネットリンチの実態を次のように解説している。
今どういう行為が恥とみなされ攻撃を受けるかは、ツイッターなどSNSのユーザーたちの考えに大きく左右される。SNSのユーザーの多くがこれは許せないとみなし、排除に動けば、標的になった人間は破滅してしまう。何を許せないとするかには一定のコンセンサスがあるが、司法の判断やマスメディアの主張はそれにはほとんど影響を与えない。だからこそ非常に恐ろしいとも言える。

ネットリンチの怖いところは、一定のコンセンサスがあるといっても不確定であり、一旦起こったら歯止めがきかないということだ。
著者はネットリンチを防ぐ方法を模索したが、解決策はなさそうだという結論に達する。→人気ブログランキング