インターネット

『著作権法がソーシャルメディアを殺す』城所岩生

日本はネットビジネスの植民地と化しているという。
その原因は既得権をもつ諸団体の力が強く、せっかく生まれた日本発の画期的なアイディアが育たないことによる。日本が足踏みしている間に、同じようなアイディアが外国でビッグビジネスに育っていく。ネット業界は勝者総取りであるゆえ、日本を草刈り場にしてしまう。これは、日本にとって大きな損失であると著者は訴える。

そうしたことが起こる背景には、審議会の委員構成に問題があるという。既得権益を守る団体をバックに持つ委員の占める比率が高い。つまり役所が操作しているということだ。はじめに結論ありきの審議会運営が行われるという。

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日本版フェアユースが実現されるまでに4年もかかり、さらに、その法律は見るも無残な骨抜きの形になってしまったという。
日本のデジタル経済に向きあう姿勢が問われている。規制をゆるめないと世界で戦えないことは、素人にも理解できる。イギリスのように、まずデジタル経済で世界をリードするという戦略を打ち出して、そのためにどうするかを議論するのが正しいアプローチでだという。

フェアユースとは、「公正な利用」であれば、著作権者の許諾がなくても著作物を利用できる制度。
アメリカのフェアユースでは、1)利用の目的性質、2)利用された著作物の性質、3)利用された著作物の量や実質性、4)利用行為が著作物の市場や価値に与える影響、の4つの条件を総合的の考慮し、その利用が公正な利用であったかどうかを判断する。

かつて、日本で国産検索エンジンがアメリカと同時に誕生していたが、著作権法の壁に阻まれ、アメリカに日本は負けた。日本にはフェアユースという迂回路がなく、個別の権利制限規定を追加するという対応に遅れをとった。そしてアメリカ勢の草刈り場となってしまった。こうした惨状を招いた立法、行政、司法の責任は大きいという。

アメリカは、公共の福祉が優先されどんな事業であっても国民の大半がその恩恵を受けるなら認めるというフェアユースの社会である。これに対し日本ははじめから規制がかかるオブトイン方式である。この差は大きい。
著作権法をなんとかしななければ、日本はネットビジネスの植民地化してしまう。→人気ブログランキング

正しいコピペのすすめ/宮武久佳/岩波ジュニア新書/2017年
著作権法がソーシャルメディアを殺す/城所岩生/PHP新書/2013年
デジタル時代の著作権/中野祐子/ちくま新書/2010年

『デジタル時代の著作権』中野祐子

急速に変化し続けるデジタル技術に著作権法が追いつかなくなっている。著作権法は追加された規則により継ぎ接ぎだらけで、専門家ですら把握できていないくらい複雑になっている。著作権に多様な状況が存在することを認め、それぞれに適応した特例措置を設けることが、これからの著作権のあり方であると説く。著作権について網羅されていて、テキストブックとして使える内容である。

デジタル時代の著作権 (ちくま新書)
野口 祐子
ちくま新書  2010年

デジタルネットワークがもたらした問題点(変化)として次を挙げている。
1)そもそもネットを閲覧するという行為はコピーをすることで成り立っている。複製や頒布を推し進めるデジタル技術とこれを禁止する著作権は、矛盾している。
2)著作権のルールを厳格に運用したならどうなるか。専門の権利処理チームを雇える金持ちや企業だけが、安全な表現活動ができることになり、資力のない一般の人たちは、それができなくなってしまう。
3)「アイディアは保護せず、表現だけを保護する」という著作権の大原則を、文章表現に当てはめるのは比較的容易であるが、音楽や写真などではうまく機能していない。
4)著作権が大衆にまで影響を及ぼすようになった。ブログを公表したりやツイッターでつぶやくことも著作権法の対象である。
5)ベルヌ条約(著作権の国際条約)は、登録などの特定の手続きを取らなくとも、海外では著作物が自動的に保護される「無方式主義」を採用している。このことにより権利者を登録しているデータベースがどこにもなく、権利者を探すのが困難である。

科学に世界では、公的資金で行われた実験のデータは共有できるという発想のもと、データを共有する動きが活発になっている。最先端の解析機で行った結果を共有することで、少ない研究資金でもデモデータを解析できるようになる。
データを共有するときはライセンス(利用条件)を標準化したものを用いる。ところが、データを開示するときにライセンスを厳しくしがちである。

フェア・ユースとは、「公正な利用」であれば、著作権者の許諾がなくても著作物を利用できる制度である。
アメリカのフェア・ユースでは、1)利用の目的・性質、2)利用された著作物の性質、3)利用された著作物の量や実質性、4)利用行為が著作物の市場や価値に与える影響、の4つの条件を総合的の考慮し、その利用が公正な利用であったかどうかを判断する。
フェア・ユースのデメリットは予測性が低いこと、事後にアウトとなることもある。

クリエイティブ・コモンズとは、作品が人の目に触れてからユーザーが権利処理する、という後追いの権利処理ではなく、作品を公表する段階で、権利者が自発的に、事前の許諾を与えておく仕組みを作ろうというライセンス運動のことである。
ライセンスはシンプルで洗練されたものが理想である。さらにライセンス間の互換性を進めることが重要である。

大胆な解決策として、「すべての著作権をなくして、使った分から税金のように金をとる。著作物を登録制にする」と提案している。→人気ブログランキング

正しいコピペのすすめ/宮武久佳/岩波ジュニア新書/2017年
著作権法がソーシャルメディアを殺す/城所岩生/PHP新書/2013年
デジタル時代の著作権/中野祐子/ちくま新書/2010年

『正しいコピペのすすめ』宮武久佳

著作権法は時代遅れとなり、新しいルール作りが必要となった。その際、金持ちや政治家などの都合のいい内容にならないように、「みんなの著作権」という意識を持つことが大切だと説く。ネットやSNSの発達により、著作権と向き合って生活せざるをえなくなった一般の人びと、特に大学生向けに書かれている。

著作権(copyright)とは、「無断で私の作品を利用するな」と言える権利であり、コピーする権利である。
極端なことをいうと、レストランで自分のスマホで店員に集合写真を撮ってもらうと、写真の著作権は店員にある。写真を公開するには店員の許可が必要である。

正しいコピペのすすめ――模倣、創造、著作権と私たち (岩波ジュニア新書)
宮武 久佳
岩波ジュニア新書  2017年3月

ではどのようなものに著作権が認められないのか。
自動車の車体や服装のファッションなどは、工業デザインや応用美術に含まれるひとつの形態とみなされ、著作権の対象ではない。ナイフやフォーク、ボールペンと同じ。
料理はアイデアであり著作権はない。
「国境の長いトンネルを抜けると雪国であった」は、議論はあるが、著作権はないとされる。だれが書いても同じような文章になってしまうからだ。

著作権法の例外規定として、個人が使用する目的でコピーする場合のほか、公共性・公益性が高い、学校教育の現場、図書館サービス、福祉の現場、報道目的などでの使用がある。
たとえ個人使用であっても、映画のDVDのようにコピープロテクトがかけられていたり、パスワードが設定されたりするソフトについては、プロテクトを外したりすることは違反行為である。

著作権は著作者の死後60年、映画70年。因みに特許権20年、商標権10年。欧米の著作権は現在70年。日本に延長が迫られている。著作権が切れると、パブリックドメイン(公共財)となる。

大学教員の著者は、学生のレポートのコピペに否定的な理由として次を挙げる。
学生が考えることなく他人の考えを鵜呑みにしてしまう、どこからが他人の意見で、どこからが自分の意見か不明瞭になりがちである。他人の作品にフリーライドする違法行為である。
いま多くの大学がコピペ答案を見破る「コピペ監視ソフト」を導入しているという。学生間のペーパーで似たものを探し出す機能もある。抑止力を期待して、課題を出すときに「コピペ監視ソフト」を使うと宣言しているという。

上手なレポートを書く秘訣は、課題の意図を見極め、知らないことを知ろうとする好奇心にあるとする。よくわからない課題が出たら好奇心を高めることが大事。知らないものは書けないのだから、知る努力が必須である。

正しいコピペの仕方は、〈①自分のコンテンツとの脈絡において必要性があること、②自分のコンテンツにパーツとして取り込むこと、③自分の作った部分と引用部分がカギカッコなどによって明確に区別されていること、④自分の作った部分と引用部分のメインとサブの関係が明確であること、そして、⑤一字一句正確にコピペし、引用部分の出所を明示すること。〉→人気ブログランキング

正しいコピペのすすめ/宮武久佳/岩波ジュニア新書/2017年
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デジタル時代の著作権/中野祐子/ちくま新書/2010年

『人工知能の「最適解」と人間の選択』NHKスペシャル取材班

本書は、TV番組NHKスペシャル『人工知能 天使か悪魔か2017』(2017年6月放送)の取材が元となっている。その内容は、将棋の名人と人工知能との対戦「電王戦」を紹介しながら、人間を超える能力を社会のいたるところで発揮する人工知能の現状を追っている。

まずは将棋。2017年4月1日、名人とポナンザの電王戦が行われた。
これまで見たこともない手を指してくる存在に対しては、人間であれ、コンピュータであれ感動を覚えると、名人は言う。
ポナンザは今までに700万局をこなしている。人間が1年に3000局打つとしても、700万局はおよそ2000年かかる計算である。2連敗を喫した名人はポナンザは将棋における神に近い存在だという。

人工知能の「最適解」と人間の選択 (NHK出版新書)
NHKスペシャル取材班
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2017年2月、AIタクシーという「乗車需要予測システム」が公開された。
地域を500m四方の区画に分け、エアリアごとに向う30分間の客数の予測を数字で示す。NTTドコモが、富士通、富士通テンなどとともに開発した。東京23区での予測精度は92.9%である。
本システムを使うと、新米ドライバーで20%の売り上げ増となったという。

アメリカでは18歳以上の人口のうち1/3が犯罪者だという。刑務所に収容されているのは200万人。犯罪を起こす可能性のある人物を見出す方法はないか、あるいは再犯リスクの高い犯罪者を判別できないかは切実な問題なのだ。これらの予測を人工知能が行っている。
犯罪者は人工知能に人生を左右されることに納得がいかないという感想を述べている。

将棋やタクシーなどの限定された機能に特化した「弱い人工知能」は、社会の様々なところでその力を発揮し始めている。一方、「強い人工知能」と呼ばれる汎用性人工知能はまだ「夢のプロジェクト」であり、ひとたび実現すれば社会をとてつもない規模で変革する原動力になると期待されている。

歴代の大統領が軒並み汚職で逮捕されている韓国では、国家運営にAI政治家を導入しようとする計画が持ち上がっているという。
人工知能はどんな人間より完璧でなおかつ慈悲深くなれる。
行き詰まった民主主義を変えるのは人工知能しかないとまで言い切る研究者もいる。

人工知能が登場する業界は瞬く間に変貌し後戻りはできないということを、理解しなければならない。
人工知能がスマートに最適解を導き出せるようになればなるほど、人間の曖昧で非効率的な解を尊いものとする可能性が強まってくるのではないかという。→人気ブログランキング

人工知能の「最適解」と人間の選択/NHKスペシャル取材班/NHK出版新書/2017年
人工知能と経済の未来 2030年雇用大崩壊/井上智洋/文春新書/2016年

『ルポ ネットリンチで人生を壊された人たち』 ジョン・ロンソン

著者はネットリンチにあった人物やネットリンチを仕掛けた人物に直接会って話を聞いている。
過去には、犯罪者に手かせ足かせをして晒し者にする、という公開羞恥刑が各国に存在したが、およそ180年前に廃止された。ところが、最近SNSの普及で公開羞恥刑が復活しているという。著者は、ネットリンチを公開羞恥刑というキーワードで解明しようとする。

まず著者は自らの経験を披露する。
著者はツイッターの成りすましに悩まされた。犯人の3人と面会し、そのやりとりをYouTubeにアップロードしたところ、犯人たちに対する非難が寄せられ、成りすましが止んだという。3人の職業はネットに関する研究者だった。著者はこのエピソードで、ソーシャルメディアは攻撃される武器にもなるし、身を守る武器にもなることを知ったという。

ルポ ネットリンチで人生を壊された人たち (光文社新書)
ジョン・ロンソン/ 夏目大 訳
光文社新書  2017年2月

著名なノンフィクション作家のベストセラー本に、出典がはっきりしないボブ・ディランの言葉がいくつかあると指摘された 。けっきょく捏造だった。そのほか他人のブログからの盗用もあった。
捏造の暴露記事が発表されるや、ジャーナリストはネットで徹底的に叩かれ、雑誌『ニューヨーカー』のスタッフライターの職を辞さざるをえなくなった。そして、彼はキャリアも地位もすべてを失った。

ネット企業の広報部長である白人女性が、イギリスからアフリカに向かうトランジェントで、人種差別的なツイートを流した。「アフリカに向かう。エイズにならないことを願う。冗談です。言ってみただけ。なるわけない。私、白人だから!」
ファーストクラスに乗っていると書いたことも反感を買ったのかもしれないが、彼女はネットリンチにあい、職を失い社会的に抹殺された。
攻撃する者にとって、 彼女が本当に特権階級であるかどうかはどうでもいい。実際、彼女は特権階級でもなければ、人種差別主義者でもなかった。ただ、そう見さえすれば十分なのだ。

公開羞恥刑を受けた後に、立ち直る機会を得た人もいる。
ナチスの制服を着た複数の女性とのSM乱交プレーを、新聞に暴露された国際自動車連盟の会長の例がある。
彼は反論する。セックスの時は誰もが多かれ少なかれ妙なことをするものではないだろうかと。
「どれほど恥ずかしいことがあっても、堂々としていれば大丈夫」ということを証明したお手本のような人物である。
男性が合意の上でセックスしている限り、セックススキャンダルは攻撃されないことは、次の事例でも示される。かつてアメリカのメイン州で69名の売春の顧客リストが公開され、裁判で罰金刑が課せられたが、公開羞恥刑にさらされた人物はいなかった。

著者はネットリンチの実態を次のように解説している。
今どういう行為が恥とみなされ攻撃を受けるかは、ツイッターなどSNSのユーザーたちの考えに大きく左右される。SNSのユーザーの多くがこれは許せないとみなし、排除に動けば、標的になった人間は破滅してしまう。何を許せないとするかには一定のコンセンサスがあるが、司法の判断やマスメディアの主張はそれにはほとんど影響を与えない。だからこそ非常に恐ろしいとも言える。

ネットリンチの怖いところは、一定のコンセンサスがあるといっても不確定であり、一旦起こったら歯止めがきかないということだ。
著者はネットリンチを防ぐ方法を模索したが、解決策はなさそうだという結論に達する。→人気ブログランキング