漫画

文豪春秋 ドリヤス工場

日本の文豪たちのエピソードを、4ページの漫画にコンパクトに描いている。エピソードの多くはそれぞれ有名な話であり、文豪たちの愚行や蛮行や奇行あるいは犯行といっていい話である。
著者のドリヤス工場は『有名すぎる文学作品をだいたい10ページくらいの漫画で読む。』(リイド社 2015年)で注目を集めた漫画家。
水木しげると酷似した画風で描く。
作風を真似るやり方として、オマージュ、パスティーシュ、インスパイヤー、コラージュ、パロディ、二次創作・リメイク、盗作・パクリという言葉があり、褒め称えられる行為から逆に訴えられる行為まで微妙に推移している。作者の作品はどれに当てはまるのか。これだけ堂々と真似ていると、尊敬して真似をする「オマージュ」だろう。
Image_20201212145901文豪春秋
ドリヤス工場
文藝春秋
2020年6月

話は文藝春秋社の女性記者と菊池寛の会話によって進められる。
菊池は銅像や額に納められた肖像画として亡霊のように登場する。ジャーナリストであり小説家であった菊池は、文藝春秋社を創設した実業家であり、小説家たちから人望があった。芥川龍之介や直木三十五と深い友情で結ばれていた菊池は、芥川賞と直木賞を創設した人物でもある。文壇の裏話に精通しているから、本作の狂言回しとしては最適の人物だ。

太宰治が自分がいかに芥川賞を獲るにふさわしいかを、延々と綴った4メートルもの手紙を佐藤春夫に送った有名なエピソードを描いている。太宰の章のタイトルは「走れ芥川賞」である。
佐藤春夫との女性をめぐる三角関係にあった中原中也は「三角形の歌」、借金まみれだった石川啄木は「一握の寸借」、文壇、人づきあい、賞が大嫌いだった山本周五郎は「心意気は残った」、孤独を愛した江戸川乱歩は「押入れを旅する男」、イタリアと日本の文化の橋渡しに尽力した須賀敦子の章は「イタリアの旅人たち」である。
作家の生き様をパロディ化したタイトルに、ついニンマリしてしまう。→人気ブログランキング

エミール ルソー/伊佐義勇

 買うのをためらうくらいエロ漫画仕様の表紙だ。システィーナ礼拝堂の天井画のようにミケランジェロ的いびつな描写である。例えば右上肢が長く、左下腿は太く長く、足趾には異様なボリュームがある。
最後まで読めば表紙の意図がわかるかもしれない。
『エミール』は、「自然に帰れ」というキャッチフレーズの自然と触れ合うことを尊ぶ教育論を、ジャン・ジャック・ルソーが小説仕立てにした。教育に携わる人は読むべきだとされている本である。
Image_20201229100701エミール
伊佐 義勇
講談社まんが学術文庫
2019年

教育者レオの苦悩と挫折と希望の物語。
時代はフランス革命(1789年〜99年)の前後。
エミールの祖父は哲学者のジャン・ジャック・ルソー。
ルソーは5人の実の子どもを捨てた、ろくでなしということになっている。エミールはルソーの息子レオの子ども。レオはルソーの理論に従いエミールを教育しようとする。
エミールはライバルのアンペールとは切磋琢磨し、エギヨンとは丁々発止の争いを繰り広げ成長していく。
ついにはエミールがパリの市長になる。
紆余曲折はあったものの、レオは子育てに成功したということだろう。
表紙の女性は慈善事業団長のソフィー、エミールの妻となる女性である。固い内容だからせめて表紙だけは羽目をはずさせてくれという意図だった。→人気ブログランキング

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